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本校舎の奪還に向け動き始めた一同は着々と準備を整えていた。
「ところであの子は?」
不意にまんじゅうがイッサへ尋ねる。
「あの子ってあなた達二人と一緒に来た Number 11 ?さんのこと?」
彼女なら保健室に寝ているはず、とのことだったのでまんじゅうはいぬいぬこも連れ保健室へ向かった。
「……?」
相変わらず眠ったままのようだが、結構な時間が立っているのに寝返り一つしていないようだ。
「まさか死んでないよな!?」
まんじゅうが Number 11 の手首を触れたその時、
ピピッ 生体反応ヲ確認、SAFE MODE START UP……
「うわっ何!?!?」
突如機械音とともに喋りだした Number 11 に驚いて思わず尻もちをついたまんじゅう。
「プロトコル起動中……セキュリティ解除完了。ユニット11、稼働準備に入ります。」
Number 11 の目がゆっくりと開かれる。だがその瞳はどこか無機質で、普通の人間とは違う冷たい光を放っていた。
「こ、こいつ……人間じゃないのか?」
いぬいぬこが訝しげに眉をひそめる。 11 はベッドの上でゆっくりと体を起こし、その動作は妙に機械的だった。
「ここは……どこ……?」
11 が呟いたその声は、彼女自身のものとわかるが、どこか電子的な響きが混じっている。
11 は一瞬、まんじゅうをじっと見つめた後、目を閉じて短く言葉を発する。
「……初期化プロセス、完了。記録データの断片を復元中……」
その瞬間、まんじゅうといぬいぬこの頭に再び激しい痛みが走る。今度は、記憶の断片がさらに鮮明になって流れ込んでくる。
「11……あのときの!」
いぬいぬこが叫ぶ。まんじゅうも記憶の中に微かな光景を見た。
戦場の真っ只中で、仲間たちを守るように立ちふさがる 11 の姿。彼女はただの仲間ではない――生体兵器として造られた、戦闘用ユニットだった。そして敵は、ザルバド軍。
「なんでお前がここにいるんだ!?」
いぬいぬこの問いに、11 は無表情のまま首を傾げる。
「私は命令を受けてここにいる……ただ、それ以上の記憶が壊れています。」
「命令……?」
緊張を振り払うように、まんじゅうが無理やり明るく言う。
「……とりあえず、無事でよかったな!」
だが、いぬいぬこの表情は晴れない。 11 の存在が、この崩壊した世界に隠された陰謀へと繋がっている予感がしてならなかったのだ。
「イッサさんに報告しよう。これ、俺たちだけで抱え込むのは無理だ。」
二人は立ち上がり、11 を連れて保健室を後にする。後ろを歩く 11 の無表情な横顔は、どこか哀しげにも見えた。
次回: 「 奪還 」
コメント
1件
おーなんか進んでる感じがする