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9話だよ、手痛い
第九話「どら焼きマン参上」
――人里へ続く道。
蓮、玲音、真紅の三人は歩いていた。
目的は一つ。
「お兄ちゃん連盟」を探すこと。
因果律の枠。
謎の異変。
そして、まだ見えない黒幕。
最終決戦へ向けて、三人は旅を続けていた。
玲音「……しかし、手がかりが少なすぎるな」
蓮「噂しかないからな」
真紅「それでも探すしかない」
玲音「そうだな」
その瞬間――。
空から何かが飛んできた。
蓮「……なんだ?」
玲音「上だ!」
――ヒュンッ!!
何かが三人の頭上を通過する。
そして少し先の地面へ――。
ドォン!!
砂煙が舞い上がった。
???「――そこまでだ!」
砂煙の中から、一人の男が現れた。
妙に堂々としたポーズ。
胸には大きなどら焼きの絵が描かれている。
そして両手には、本物のどら焼き。
???「幻想郷の平和を守る!」
???「正義のヒーロー――」
???「どら焼きマン、参上!!」
沈黙。
蓮「…………」
玲音「…………」
真紅「…………」
???「……もう少し反応してくれてもいいんじゃないか?」
玲音「いや、急に何なんだよ」
???「そこからか!」
男は胸を張った。
???「土楽 焼奇(どら やき)!幻想郷でヒーローをやってる者だ!」
蓮「ヒーロー……?」
焼奇「そう!」
玲音「仕事なのか?」
焼奇「趣味だ!」
玲音「趣味かよ」
焼奇「大事なことだから二回言うぞ。趣味だ!」
真紅「……暇なのか?」
焼奇「失礼だな!」
焼奇「俺は忙しいぞ!ヒーロー活動でな!」
蓮「趣味なのに?」
焼奇「そこは気にするな!」
焼奇はどら焼きを一つ掲げた。
焼奇「そして俺の能力は――」
焼奇「至高などら焼きを作る程度の能力!」
また沈黙。
玲音「……戦えるのか?」
焼奇「もちろん!」
焼奇が手を広げる。
空中にどら焼きが次々と現れる。
焼奇「甘さは自由!」
普通の甘さ。
焼奇「控えめ!」
甘さ控えめ。
焼奇「そして――」
巨大などら焼きが現れる。
焼奇「超特大!!」
玲音「それは甘さじゃないだろ」
焼奇「細かいことは気にするな!」
焼奇が腕を振る。
巨大などら焼きが勢いよく飛んでいく。
――ドゴォン!!
遠くの岩に直撃した。
蓮「……攻撃に使えるんだな」
焼奇「当然!」
焼奇「味も自由だぞ!」
抹茶。
チョコ。
苺。
カスタード。
様々などら焼きが浮かぶ。
真紅「……種類が多いな」
焼奇「まだまだあるぞ!」
玲音「能力の使い方が独特すぎる……」
焼奇「どら焼きの可能性は無限大なんだ!」
焼奇は胸を張る。
そして突然、蓮たちを見る。
焼奇「……ところで」
蓮「なんだ?」
焼奇「俺、今のところ『どら焼きを作って飛ばす人』にしか見えなくないか?」
玲音「実際そうだろ」
焼奇「ひどい!」
真紅「自分で気づいていたのか」
焼奇「まあ……読者もそう思ってそうだし」
蓮「読者?」
焼奇「……何でもない!」
玲音「また変なこと言ってるぞ」
焼奇「俺はこういうキャラなんだ!」
そのとき――。
???「助けてー!」
人里の方から声が聞こえた。
焼奇の顔が変わる。
焼奇「……事件だ!」
蓮「行くのか?」
焼奇「もちろん!」
焼奇は巨大などら焼きを足場にする。
焼奇「どら焼きマン、出動!」
そのまま空へ飛び上がる。
玲音「……あいつ本当にヒーローなんだな」
真紅「ああ」
蓮「俺たちも行こう」
三人も後を追う。
人里の外れでは、一体の妖怪が暴れていた。
妖怪「邪魔をするな!」
焼奇「そこまでだ!」
妖怪「何者だ!」
焼奇「幻想郷の平和を守る――」
焼奇「どら焼きマンだ!」
焼奇の周囲に大量のどら焼きが浮かぶ。
焼奇「いくぞ!」
焼奇「どら焼き弾幕!!」
無数のどら焼きが飛んでいく。
妖怪「なんだこの攻撃!?」
妖怪は慌てて逃げていった。
焼奇「よし!」
蓮「……倒してないけどな」
焼奇「逃げたなら平和になった!」
玲音「まあ……そうだな」
焼奇は満足そうに頷いた。
そして、蓮たちを見る。
焼奇「ところで、お前たちは何をしてるんだ?」
蓮「お兄ちゃん連盟を探してる」
焼奇「……ああ」
焼奇の表情が少しだけ真面目になる。
焼奇「その噂なら聞いたことがある」
玲音「本当か?」
焼奇「存在するらしい、って程度だけどな」
真紅「何か手がかりは?」
焼奇「残念ながらない!」
玲音「役に立たないな……」
焼奇「ヒーローに情報収集能力まで求めるな!」
蓮「まあ、そうだな」
焼奇「でも――」
焼奇は少し考える。
焼奇「兄たちが集まってるなら、たぶん何か理由がある」
真紅「……」
焼奇「ただ妹がいるから集まってる、なんて単純な話じゃない気がする」
蓮「俺もそう思う」
玲音「因果律の枠とも関係してるかもしれない」
焼奇「……因果律?」
蓮「ああ」
焼奇は少し黙る。
焼奇「なるほどな……」
そして、すぐに笑う。
焼奇「まあ、難しい話は任せた!」
玲音「おい」
焼奇「俺はヒーローとして、困ってる奴を助ける!」
蓮「一貫してるな」
焼奇「それが俺だからな!」
焼奇はどら焼きを三人へ投げる。
蓮「おっと」
玲音「ありがとう」
真紅「……貰っていいのか?」
焼奇「もちろん!」
焼奇「旅に甘いものは必要だろ?」
蓮はどら焼きを眺める。
蓮「……美味そうだな」
焼奇「絶対うまいぞ!」
玲音「自信満々だな」
焼奇「俺の能力だからな!」
四人は笑った。
ほんの少しだけ。
重かった旅の空気が軽くなる。
焼奇は空へ飛び上がる。
焼奇「じゃあな!」
蓮「また会おう」
焼奇「おう!」
そして焼奇は巨大などら焼きを足場にして飛んでいく。
玲音「……変な奴だったな」
真紅「だが、悪くない」
蓮「ああ」
その夜。
三人は森で休んでいた。
蓮が昼間にもらったどら焼きを取り出す。
しかし――。
蓮「……これ」
玲音「どうした?」
どら焼きの表面に、黒い線が入っていた。
まるで――。
空間そのものに亀裂が入ったような線。
真紅「……」
蓮「まただ」
玲音「因果律の枠……」
誰も触れなかった。
明るくふざけたどら焼きマンとの出会い。
その裏で――。
幻想郷では、確実に何かが動き始めていた。
そして、まだ誰も知らない。
お兄ちゃん連盟を探す旅の先で待っているものが何なのか。
ただ一つ分かっているのは――。
最終決戦の日が、少しずつ近づいているということだった。
第九話「どら焼きマン参上」――完
コメント
1件
読了しました!第9話「どら焼きマン参上」、めっちゃ楽しかったです! まず、どら焼きマンこと土楽焼奇さんのキャラがもう最高すぎますね(笑)「趣味だ!」の二度押しとか、自分で「どら焼きを作って飛ばす人にしか見えない」って自覚してるところとか、愛すべきバカキャラ感がたまらなかったです。でもちゃんとヒーローしてるし、話の空気を和らげつつ「お兄ちゃん連盟」の情報をくれたり、旅の重さをちょっと軽くしてくれる役割が絶妙でした。 そしてラストのどら焼きに現れた黒い線……あのギャップが怖い。ほのぼのした回だからこそ、余計に不気味さが際立ちます。最終決戦が近づいてる感じがちゃんと出てて、続きが気になります! つばささん、ギャグとシリアスのバランスが本当に上手いですね。次話も楽しみにしてます!
#ハイキュー
@睡眠薬
35
#痛快