テラーノベル
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家へ帰って玄関を閉めると
チキン南蛮の美味しくて懐かしい匂いがする
この匂いほんとに久々に嗅ぐなぁ、
鼻先から通るチキン南蛮の匂いで思い出が蘇る
そういえば…はやとくんに出会った日から
やけにチキン南蛮が出るようになった気がする
、まぁとりあえず手洗わないと
「あぁ、おかえり」
「ただいま」
「もう直ぐでできるからゆっくりしてて」
「あ、母さんお酒を出してくれんかい?」
「はいよ〜」
そうだった俺父さんとお酒一緒に飲む約束してたな
キッチンで母さんの隣にいる父さんに目をやると
ニコニコと嬉しそうにお酒を見つめていた
多分俺が帰って来た時
絶対一緒に飲むぞ!って意気込んでたんだろうな
こうやって昔に戻れたみたいな感じがすると
今が昔の背景に見えてくる
あそこのソファーにはいつも
俺がダンスで使ったタオルがかけられてて
いつも母さんに洗濯機に入れなさい!って怒られてた、
そこの少しほころびた茶色の木の棚にはデジタルカメラが置いてあった
昔から写真を撮るのが好きな父さんの子供だからか
俺も写真を撮るのが好きだった
昔は街に出掛けてはいつも何処かで写真を撮っていた
でもあのカメラはもう随分と前に無くしてしまった。
…それから俺は写真を撮らなくなったなぁ
写真を撮る以外に好きなことなんてなかったし、ただそこからは
お金を貯めてまたカメラを買おうと思ったけど
でもやっぱりやめた。
なんかやめた方がいい気がした
そんななんとなくで捨てていいものじゃないのは分かってるけど
なんだか嫌な予感がしたんだ
あの直感は間違ってないそう俺は思っている
そう考えているうちに料理が机の上に並んでいた
どれも美味しそうなものそして俺の好物ばかりだ
…母さん相当嬉しかったんだなぁ
「「「いただきます」」」
久々に豪華な客人が来たと大喜びの母さんに
泣きそうと言うか泣いている父さん
嬉しすぎて泣くなんて本当にどれだけ俺のこと愛してんだよ
…まぁそれが父さんの良さでもあり
好きなところでもある。
母さんも
ずっと昔から感情豊かで純粋な父さんに惹かれたって言ってたし
2人を見てればわかる
互いが互いを愛し合ってるということ
愛は目に見えないもののはずなのに
なんでわかるんだろう。
ぼーっと考えていると父さんから話しかけられた
「最近仕事はどうなんだ?」
「うーんまぁそこそこかな?」
「目の下のくまは?」
あんまり聞かれたくない質問を聞かれてしまった
ここで思いっきりど正直に
『ブラック企業に入ったせいで残業三昧だよ。おかげで睡眠不足だよ』
なんて毒をこの幸せな食卓で吐きたくない
でもはぐらかしたってバレる
親に嘘は通用しないのだ
でもシンプルな理由ならあんまり聞いてこないだろう、たぶん
「…最近寝れてなくて」
「大丈夫か?元気なさげだぞ」
お父さんの声に顔を上げると
心配そうに俺を見つめる2人と目があった
…、
「俺疲れてるのかもしれない」
初めて口に出した
人前でも、言葉にするのはなんやかんやで初めてだった
みんな同じ疲れてる、だから気のせいだ
そう自分に言い聞かせていた
けどもう限界なのかもしれない
それすらもあやふやなのだ
自分をとっくに見失っているんだろう
自分のことなのに何もわからない
どうしてだろう
なんか勝手に込み上がってくる思いと共に大粒の涙が机を濡らす
誰か泣いてる?
そう思って下を向いた時また落ちていく涙
あぁ、俺か泣いてるの
なんで泣いてるんだろう
「…お酒を飲むのは明日にしよう。今日は先に風呂入っといで」
「ほら、あなたがよく食べてたお菓子あるわよ、お父さんと一緒に食べなさい?」
「うん、食べる。ありがとう母さん」
また母さんは切なそうに
でもあの時より嬉しそうに笑った
父さんも笑った
俺も笑った
みんな笑った
それだけでよかった
泣いた理由もわかんないし疲れてるのかもわかんないけど
わかんなくていいのかもしれない
この先何があっても
きっとうまくやっていけるような
そんな気がする。
「さ、ほら早く食べちゃいなさい!」
「母さんのご飯はうまいからなぁ」
「なに父さん、自慢〜?」
「なっ、違う!って言ったら嘘になる…」
「「ほらやっぱり笑」」
「2人ともの分残さんぞ!」
…今日は、はやめに寝よう
snjnのランキング4位ありがとございます。
「好きの形はソレゾレ」がランクインしました
いつも通り小説を読もうとしたらなんか見覚えのある題名がランキングに入ってて、
確認したら自分の作品でびっくりしました。
初めてまだまだの初心者の作品なのに、
…嬉しいんですけどなんだか申し訳ない。
でもランクインしたのは本当に嬉しいです。
それとフォロワー様300↑人ありがとうございます。
本当に嬉しいです、モチベになります。
これからも呼んでくださると嬉しいです
それではまた。
コメント
1件
あじさい。さん、第6話読みました。 「『俺疲れてるのかもしれない』——初めて口に出した」 この一文が、ずしんと胸にきました。家族の温かい食卓で、自然と涙があふれ出る主人公の姿に、こちらまで息が詰まりそうになりましたね。 父さんがお酒を明日に延期して「今日は先に風呂入っといで」と促すところ、母さんが「あの時より嬉しそうに笑った」ところ——親の愛情の形が、余計な言葉じゃなくて行動で描かれているのがとても好きです。 ランキング4位、おめでとうございます。この章のような、静かだけど確かに心を揺さぶる描写が評価されたんだなあと納得しました。続きも楽しみにしていますね。
Rinka
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あじさい。
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