萩原side
爆発物があるとの話を聞き、マンションの20階に来ていた。
「んー、タイマー止まってんねえ。ま、解体しますか」
解体をしようとした時、
「萩原さん!!触らないで!!!」
「ん?!」
1人の隊員が声を荒らげた。
「どした?」
「上からの指示で、管轄が変わるそうです。絶対に触らず担当が来るまで待機だそうです」
「そうなの?りょーかい」
そして来たのはセリちゃんだった。
「セリちゃん?!」
「萩原か。よお」
「なんで居るの?」
「あれ?聞いてない?」
「えっと、なんか管轄が変わって…あ!!せりちゃんのとこなの?!」
公安案件になったの?そんな案件には思えなかった。
「聞いてるね。じゃ爆処の皆さん避難してね」
セリちゃんの声でゾロゾロ避難していく。
「五条さん」
「報告ありがとう」
「はい!」
さっきの隊員はセリちゃんと知り合いだったらしい。
「セリちゃんは?」
「私この爆弾とやることあるから」
「え!危ないよ?!」
人のことは言えないが、セリちゃんは防護服を着ていない。それに公安の人間だ。
「萩原こそ、防護服無しで何やってんの?馬鹿なの?アホだね。死にたいの?」
「グッ…」
刺さる。とにかく刺さる。言葉の暴力だ。でもそれに関してはセリちゃんだって同じだ。そう言おうとしたらセリちゃんに遮られてしまった。
「ほら、他の人達は避難してんだから萩原も避難し、て」
止まっていたはずの爆弾のタイマーが動き始めた。
「セリちゃん!!」
俺はセリちゃんを引っ張って逃げようとした。間に合うかっ…
だがものすごい力で引っ張られた。セリちゃんに抱きしめられ爆発する。
「セ、リ、ちゃん?」
何が起きたのか。俺らは確かに爆発に巻き込まれた。のにも関わらず、俺らは無傷だった。だが周りは爆風で焼け焦げていた。
「萩原、怪我ないね」
「な、無いけど」
「じゃ、下行きな。松田待ってるから」
「ど、な、何が起きてるの?」
本当に何が起こったのだろうか。防護服も着ずにあの爆発から生き延びだ。しかも被害は俺らの居た所以外。
「生きててよかったね。ほら、行った行った」
セリちゃんはさもそれが当たり前のような態度だ。
「セリちゃん!」
「私やることあるから」
俺はセリちゃんに聞きたかった。何が起きたのか、何をしたのか。
「はあ…何?」
「え、いや、えっと」
改めて聞かれるとなかなか言葉が出てこない。何が起こったのか混乱しているんだ。
「とりあえず降りて。私今から仕事。それに松田も心配してるんじゃない?スマホ、さっきっからずっと鳴ってるよ」
「あ、ああ…あ、後で聞くからね!」
「はいはい。あ、あと、私の事はあまり口外しないでね」
「分かった」
そうして俺は階段を降りた。
俺は念の為病院に検査入院することになった。検査の結果異常なし。医者も隊のみんなも驚いていた。
コンコンコン
「はーい」
病室がノックされる。
「やっほ」
「セリちゃん!」
現れたのはセリちゃんだった。
「元気そうでなにより」
そうは言ってるが、当たり前だよねって顔をしている。
「“奇跡的に”爆発から帰還出来て良かったね」
「そう…その事なんだけど…セリちゃん、何したの?」
まずは聞かなければならない。無事生還できたのはセリちゃんも同じ。頭の整理がついたからすんなりと言葉は出た。
「何もしてないよ」
「嘘だあ。俺らが立っていたところだけ、まるで何も無かったかのように爆発の被害から免れた。爆発直前、セリちゃんは俺を抱きしめた。そうすればまるで助かるかのように。普通爆弾から距離をとるはずだ。でもせりちゃんはそうしなかった…ねえ、なんで?」
「…」
「…何したの?」
逃げ道は塞いだ。聞かせてもらおうか。
「防護服着ない悪い子には教えなーい」
「グッ…」
それはセリちゃんもなのにっ!
「現場行って防護服着ないなんて論外。馬鹿。阿呆。もうバカ。馬鹿。ほんとバカ。もういっそ1回死んだらどうなの?」
「そ、そんな言わないでよ…」
結構傷つくなあ。
「私が居なきゃ死んでたよ」
やっぱり何かしたんだ。
「…うん。セリちゃん」
「ん?」
これだけは言わなければ。
「ありがとう。なんかよくわかんないけど、守ってくれたんでしょ?」
「私は何もしてないよ。萩原の運が良かっただけ。じゃ、仕事抜けてきたから戻るね」
「うん。またみんなで集まろうね」
「そうだね…萩原」
「ん?」
「命は大事にしな」
その目は寂しそうにでも厳しげに光っていた。
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