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オフの日。
祐希は人混みを避けて、郊外の静かな公園へ藍を連れ出した。
「……天気良いね〜」
「うん。風もちょうどいい」
並んで歩きながら、藍が急に立ち止まった。
「ねえ、祐希さん」
「ん?」
「今日は……いっぱい甘えてもいい?」
「いつもだろ」
「……もっと。今日は、オフだし、いっぱいわがまま言ってもいい日」
そう言いながら、藍は少し遠慮がちに手を伸ばす。
石川はためらいもなく、その手を握り返した。
「じゃあ、まず何がしたい?」
「アイス食べたい」
「いいよ。どこの?」
「祐希さんが“あーん”してくれるなら、どこでも」
「……わがまま」
「ふふ。俺、祐希さんの前だけ、こうなの」
アイスを食べるときも、ベンチに座るときも、
歩くたびに手を離さない藍が、どこか嬉しそうで。
「……楽しい?」
「うん。祐希さんといると、ずっと甘えたくなる」
「じゃあ、次はどんなわがまま?」
「……ぎゅーってして?」
「……はいはい」
誰もいない木陰で、そっと抱きしめる。
心地いい風と、腕のなかのぬくもり。
ふたりのオフは、甘さと愛しさで満たされていた。