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「……ん……さむ……」
その日、藍は朝から熱っぽかった。
顔も赤くて、身体もだるそう。
練習は大事を取って休み、ベッドに寝かされている。
「38.3℃か……うん、完全にアウト」
祐希は藍の頭の下にそっと氷枕を置いた後、額に手を置いた。
藍は微熱で朦朧としながらも、弱々しく笑う。
「……ごめん、俺、子どもみたいで……」
「そういうとこも、好きだけどな」
「ん……?」
「何でもない。ゆっくり寝て?」
「祐希さん……甘えて、いい……?」
「いつも甘えてんじゃん」
「今日は特別。風邪の日のわがままは、100倍きいてほしいの」
「……よしよし、言ってみ?」
「ぎゅーってしてほしい。あと、寝るまで隣にいて」
「はいはい、熱上がるから軽くな」
そう言いながらも、ベッドに入ると石川はやさしく藍の身体を包み込む。
藍はその腕に顔を埋めて、ふにゃっと笑った。
「祐希さんに甘えてたら……治る気しかしない……」
「大丈夫。俺が治してやる」
その言葉に安心して、藍は目を閉じる。
大好きな人の腕の中、熱もつらさも忘れて、ただ静かに眠った。