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今日はバレンタインっ!待ちに待ったバレンタイン。小学生の私は今日も隣のお兄さんのところに通う。

「お兄さん、こんにちはっ!」

「こんにちは。今日も元気だね。」

お兄さんは優しく私の頭を撫でてくれる。それが嬉しくて幸せで、でも、この気持ちが何なのか分からなかった。

バレンタインの日、毎年必ず置いてあるキャンディー型のチョコレート。今日ももちろんおいてある。

だって、今日はバレンタインだから!この日は必ず探してしまう。だって、見つけたら嬉しいから。

私のためだけのチョコレートって言ってたから。

「おにーさんっ?このチョコ食べてもいいっ?」

答えは分かってるのに、声が聞きたくて、話したくて、聞いてしまう。聞くと決まってお兄さんは、笑って、

「ふふ、聞かなくてもいいって言ってるだろ?好きなだけお食べ?」

と言う。楽しいそうに笑うお兄さんは太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。

本当に今日もかっこいい!!

チョコレートをかじると、甘くて、でも酸っぱいような不思議な味。今思えば、それは私にレモン味の恋をしていると知らせていたのかもしれない。





次の年バレンタイン。今年もお兄さんの家にチョコレートを食べに行った。お兄さんの家の前につくと、お兄さんの楽し気な声が聞こえてくる。そっと覗いてみると、電話をしていた。かすかに聞こえたのは女の人の声。明るくて、可愛くて、大人の魅力がある、そんな声。

見たくない、けど見てしまった。お兄さんの笑顔ですごく幸せそうな。私には見せたことない顔。恋している人の顔。そう、私の勘が伝えてきた。

私はここでやっと自分の気持ちに気づいた。私は恋をしていたのだと。

そして、同時に幼心に嫉妬を覚えた瞬間だった。

「ふっは、それは明日で大丈夫だよ?」

そんな、お兄さんの楽しそうな声をこれ以上聞きたくなくて、私に気づいて欲しくて、どうしたら私を意識してくれるのかずっとぐるぐる考えた。

ふっと、テーブルの上に置いてあるチョコレートが目に入った。私だけのチョコレート。私のためにお兄さんが用意してくれるチョコレート。

まだ、準備途中だったのか、乱雑に放置されている。そして電話しているお兄さんの手にもチョコレートがあるのを見つけた。

座っているお兄さんの横に行き、お兄さんの手にあるチョコレートを一口食べた。

「えっ?!」

「どうかしたの?」

「いや、隣の子が来てて、」

「そっか!じゃあ、また今度はなそ?」

お兄さんは気づいていなかったのか、驚いた声と表情で私を見ている。

でも、私には関係ない。だって、こっちに気づいてくれたんだから、

それに、口に含まれたチョコは前食べた時とは違う、大人の味がした。少し苦くて、でも甘い。







15年後の現在、私はそのお兄さんとバレンタインデーを過ごしている。

あの日のチョコの味を思い出しながら。

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