「もー、いったいなぁ………ちゃんと前見て歩かんと危ないで?」
しばらくは声が出せなかった。
おそらく、とんでもなく間抜けな顔で停止していたんじゃないだろうか。
ゴミ捨て場のゴミの中に、男の子がいたのだ。完全に捨てられているような体制で。
「ん、おにーさん、だいじょーぶ?」
そう少年に声をかけられて、やっと頭がついてくるようになった。
まあ、こんな街なんだから、ゴミ捨て場に人が捨てられているなんて、よくみるシチュエーションだよな…と、変に納得してしまった。
が、
あまりにも若い。
おそらくまだ高校生………ショタじゃん。
「き、君、こんなとこで何してんの…?」
この言葉には心配も含まれている。子供のいていいところじゃない。しかもゴミ捨て場に…。
「あ、俺ここで働いてんの。」
と、少年はニコッと笑って目の前の建物を指差した。
(ここって…。)
見るからにホストクラブ。
こんなところで高校生が働いているだって?
この国はどうなっているんだ………。
「とりあえず、立ちなよ。ゴミん中にいるのいやでしょ…。」
そういって少年に手を差し伸べた。
少年は少し戸惑った様子だったが、恐る恐る俺の手を取って、ゆっくりと立ち上がった。
驚いた。
俺より背がデカい…。
しかも近くで見ると、とても美しかった。
月明かりに照らされた、光る銀髪。
そこに映える紫とネオンピンクのメッシュ。
なにより、とてつもなく顔が整っている。少し怪我をしているようだが…。
「君、何歳?」
「ん〜?」
「まあ四捨五入すれば20歳かなぁ〜。」
あっけらかんとした答えが返ってくる。俺は男の子の目を見て、真剣に聞いた。
「茶化さないで、教えて。」
「………じゅうなな。」
ショタやん。
いや、そうじゃなくてさ。普通17歳なんてこんなところにいるものじゃない。
「ダメでしょ………高校生はこういうところで働いちゃいけないんだよ。」
「俺、高校は行ってない。」
「…え?」
「ずっとここに住んでんだ。生まれた時から、ずーーーっとね。」
頭が追いつかない…。
ひどい酔いも、突然の出来事によってすっかり冷めてしまった。
「俺は明那っていうんだ。三枝明那。」
「君の名前は?」
「不破湊。」
「そっか、じゃあ湊くんかな。」
「なんか落ち着かない、それ。」
ニコニコと笑いながら返される。俺との会話、そしてこの状況を面白がっている様子だった。
とりあえず、知りたいことは山ほどある。
だけどその前に、彼の傷が気になって仕方がなかった。
「その怪我、どうしたの?」
「あぁこれ?」
「これはさっき、姫の彼氏さんが店に殴り込んできてさぁ…。」
「めちゃめちゃ殴られてここにポイッ!」
ヘラヘラと笑いながら話す。そんな軽い内容なのか?
こういう業界は闇が深い。
「その怪我を放置はさすがに良くないよ。」
「店の人は手当してくれないの?」
「店はお客様がいちばんだから。」
「そんな…。」
「でも顔やられたのはやばいかな〜。」
「商売道具だからね。」
「そういう問題じゃないでしょ。」
「んは、おにーさん優しいね。」
「………。」
「………しゃーない。」
「んぇ?」
「俺ん家来な、手当くらいなら出来るから。」
ボロボロのショタを放っておく事は出来ない。
と、俺の心が言っている。
「いや、おにーさん酔ってる?」
「素面だよ。さ、おいで。」
「え、ちょマジ!?」
俺は少年の腕を掴む。
その腕は、細く、今にも崩れてしまいそうだった。
to be continue…
コメント
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ぁ っ … 😭😭😭💞💞💞💞🫶🏻🫶🏻🫶🏻🫶🏻