テラーノベル
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夕焼けに染まる空の下、戦場には剣戟の音と荒い息だけが残っていた。無数のハートレスとの死闘は終わりを迎えたものの、機関の誰もが限界を迎えていた。傷だらけで、立っていることさえ奇跡のような状況の中、XIII機関の「月を舞う魔人」サイクスだけは、荒い息を殺して冷徹に前を向き続けていた。
その時だった。消滅しかけていた巨大ハートレスが最後の力を振り絞り、消耗しきったロクサスへ向けてあまりにも強大な一撃を放った。
避けられない。
間に合わない。
そう誰もが悟った瞬間、サイクスは迷わずロクサスの前へ飛び出した。
「サイクス、だめっ――!」
ロクサスの悲鳴が響く。鋭い衝撃がサイクスの体を貫いた。
「ゲフッ……!……くっ、あ……(吐血)」
鮮血が夕闇に散り、サイクスの胸元が赤く染まる。自身の弱みを決して人に見せず、常に完璧な「参謀」であり続けた男が、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。浅く苦しそうな呼吸に合わせて、胸元から血が溢れ続ける。
「サイクス! おい、目を開けろ!」
アクセルが悲鳴のような声を上げ、膝から崩れ落ちたサイクスを抱きかかえる。
「ヴィクセン! 早く治療班を呼べ! こいつ、呼吸が……!」
シグバールが焦りを露わにして叫ぶ。普段の軽薄さは微塵もない。ヴィクセンは慌てて闇の回廊を開き、回復魔法に長けた部下たちを呼び寄せた。ゼムナスは無言のまま、血に染まった配下の姿を静かに見つめていた。
数日後。
存在しなかった城の治療室。
白いベッドの上で、サイクスはゆっくりと目を覚ました。窓から差し込む光に眉をひそめながら、重い身体を起こそうとする。
その周りには、XIII機関の全メンバーが集まっていた。
ゼムナスをはじめ、沈痛な面持ちのアクセル、心配そうに身を乗り出すロクサスとシオン、どこか気まずそうに腕を組むラクシーヌやマールーシャまで、全員が彼の意識が戻るのを待っていたのだ。
「サイクス……気がついたのか」
ゼクシオンが安堵の息を漏らす。
アクセルが身を乗り出し、震える声で呼びかけた。
「おい、サイクス……わかるか? 無茶しやがって……」
しかし、サイクスは集まった13人の顔をゆっくりと見回すと、眉をひそめて首をかしげた。その瞳には、かつての冷徹さも、狂気を含んだ月の光もなく、ただ純粋な困惑だけが宿っていた。
「サイクス、覚えている?」
ロクサスが祈るような心地で問いかける。
サイクスは胸の痛みに小さく顔をしかめ、静かに口を開いた。
「……貴方達は……誰?」
続く?
コメント
17件
え、嘘、サイクスが…! あの「月を舞う魔人」がロクサスを庇うなんて、しかも記憶喪失って…序盤から心臓掴まれました。アクセルの「無茶しやがって」に声が震えてるところが泣ける……。冷徹な参謀だった男の「貴方達は……誰?」はエグいほど来ます。続き、めちゃくちゃ気になります! 早く読みたいです🔥