テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

Eliminator~エリミネ-タ-

一覧ページ

「Eliminator~エリミネ-タ-」のメインビジュアル

Eliminator~エリミネ-タ-

89 - 第89話 七の罪状 ~前編⑥ 危機

♥

23

2025年06月10日

シェアするシェアする
報告する




――再度琉月は詳細に話した。



この件の裏の存在を。だが狂座の情報網を以てしても、存在が掴めない事を。



誰もが俄には信じ難かったが、少し考えれば納得がいった。



“その者は狂座の創始者で在るがゆえ、狂座を裏の裏まで知り尽くしている事に――”



なら掴めないのも、ある意味当然だ。狂座の裏をかいて行動しているのだから。



狂座への影響は、何も今回だけではない。以前から世界各国でエリミネーター達が、同様に行方不明となっていた事が琉月より明らかにされた。それも目立たぬよう緩やかに、自然を装いながら。



嘲笑うかのように、確実に進行していく魔の手。



そして今回、狂座の中核が所在する日本。其処の主要にまで手が伸びたという事は――



「現在、恐らく彼等は日本を中心に潜伏しているでしょう。そして次の狙いは――」



琉月は二人に指差す。幸人と時雨だ。



第一位が排除された現在、次の標的が最上位――特等のSS級二人に向くのは自明の理。



そしてそれだけには留まるまい。



これまでの事から総合すると、狙いは狂座の完全崩壊。それは即ち裏の頂点に立つという意味。



つまり事態は何時の間にか、深刻な状況に立たされていたのだ狂座は。



「……上等じゃねぇか」



ようやく全てを聞いて納得したのか、時雨が己を奮い立たせるよう指を鳴らす。



「一両日中にも現れると思われます。相手はサーモにも反応される事の無い未曾有の敵……。これに対抗するには、御互いの協力関係が必須になります」



そう琉月は全員に視線を送った。



それの意味する事は――



「冗談、俺一人で殲滅出来るよ。コイツと協力なんて冗談じゃねぇ」



時雨にもすぐに分かった。幸人の方へチラリと視線を向けて吐き捨てる。



「――って言いたい所だけど、今回ばっかりは事の重大さが分かってるつもりだよ。特に“あの人”が相手ならな……」



だがすぐに訂正した。それ程に彼にとっても危機的な相手なのだ。口は悪くとも、共同戦線も吝かではないという事。



「そうです。これは裏だけの問題では留まりません。貴方達の敗北は即ち――全ての敗北と同義と思ってください」



琉月の危惧している事。それは裏の秩序の崩壊は、そのまま表に直結する。



「ああ……。闇に潰えたエリミネーター達。そして熾震への弔い合戦として、奴等は潰す」



「弔いとかお前らしくねぇな~。まっ、仲間意識なんて俺にはねぇけど、狂座に牙を向けた事は後悔させてやるぜ」



それぞれ思惑は違うが、狂座としては同じ。



個別活動が信条だったエリミネーター。此処に共同戦線関係が成立した。



――闇の仲介室内。とりあえずは、御互い些細な事でも連絡報告し合う事だ。



「私も何か判ったらすぐに連絡します。貴方達も周りに気を配っててください。彼等は一般人に紛れている可能性もあります」



琉月の再度の忠告で、一先ずこの場は流れ解散。



「ルヅキも気をつけてね。狙われてるのはボク達だけじゃないと思うし……」



室内から出る間際、悠莉が気になったのか心配そうに琉月へ詰め寄った。



「ええ、分かってます。ありがとう悠莉、私なら大丈夫よ」



「でも……何か不安なの」



状況が状況だ。彼女の心配する気持ちも分かる。琉月は事実上、狂座のトップの一人。エリミネーターではなくとも、狙われるであろう事は当然。



琉月はなるべく安心させるよう、悠莉の頭を優しく撫でていた。



「心配無いって。何たって琉月ちゃんは俺が守るんだからさ」



扉の向こうから放たれる、時雨からの爆弾発言。



「期待してますね」



ここまで恥ずかし気もなく言える時雨は、場の雰囲気としてはそぐわないが、琉月は素直に受け取った。



「任せといてよ。琉月ちゃんには指一本触れさせねぇよ俺が」



更に調子に乗る時雨。仮面で伺えないが、心なしか琉月は照れているようにも見えた。



――三人が室内から去った後、琉月は手元のパソコンへと向かう。



「さて……」



今回の件の情報収集。彼等の為にも、少しでも情報が欲しい。



“せめて組織名でも判れば良いのですが……”



かつて雫から得た報告。それらは大規模な組織で在ろう事。



だがまるで雲を掴むかのように、霞んで見えない。



もどかしかった。中心が誰であるかは判っているのに、全貌の一角すらも掴めないというのは。



“ガチャリ”



焦る思考の中、不意に室内の扉が開かれる。



三人が此処を出て、まだ数分も経っていない。



「――はい?」



だからこそ琉月は、てっきり彼等が戻ってきたのだと思った。



顔を扉に向けると、室内に入り込んでくる人物。それも複数。



「…………」



全員が純白のフードを身に纏い、表情も伺えない。



ざっと目視で室内には、十三名もの純白の人物が集結していた。



「此所は関係者以外、立ち入り禁止となっております。お引き取りを」



「…………」



琉月は椅子に腰掛けたまま、そう投げ掛けたが反応は無い。



勿論彼等に琉月は見覚えが無い。



ただ少なくとも、全員が“只者”でない事は確か。サーモは生体反応を示していないのだから。



なら考えられる事はただ一つ。



「狂座仲介部門統括、コードネーム『琉月』とお見受けする」



沈黙を破り、集団の一人から声が上がった。



「…………」



琉月は応えない――が、何も状況の多勢に無勢で萎縮している訳でもない。



“なるほど……狙いは私一人という訳ですか”



寧ろ逆。状況に揺らぐ事無く、冷静に全員を見回して判断した。明らかに自分一人が付け狙われた事を。



「いきなり押し掛けて来て失礼ですね。先ずはそちらから先に名乗るのが礼儀ではありませんか?」



そしてこの状況は、貴重な情報収集の場。十中八九、狂座を敵視しているのはこの集団で間違いないだろう。琉月としては今後の為にも、出来るだけ此処で情報を引き出しておきたい。



――それにしてもこの純白の集団。琉月は危機的本能に直感していた。



サーモでは解らなくとも、恐らく全員がエリミネーターのA級クラス――またはそれ以上の実力を持つ可能性が有るだろう事に。



しかもかなり統率が取れている。組織としても間違いなく、狂座と同等かそれ以上。



「私はこの通り、逃げも隠れもしません。御用件を。ただし先ずはそちらの素性をお願いします」



わざわざ一人になる瞬間を狙ってきた彼等の用件等、一つしかないだろうが、敢えて琉月は挑発に近いものを投げ掛けた。



「ククク……」



それに釣られたのか、集団の中から一人が一歩前へ出る。



「この状況を前にして、随分と気が強い」



余裕の含みを持たせながら、その者はフードを剥ぎ取り素顔を露にした。


Eliminator~エリミネ-タ-

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

23

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚