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四月二十八日……朝……。


「……あー、よく寝たー」


「……あっ、起きた」


「え? あー、なんだキミコか。どうしたんだ?」


「血、吸わせて」


どうして俺ばっかり血を吸われるんだろう。というか、このキミコ(狐の巫女)はいったい誰の人格なんだ?


「お前、もしかしてコウモリか?」


「……多分、そう」


多分って……。うーん、モンスターチルドレン同士が融合すると自分が何なのかよく分からなくなるみたいだなー。


「別に吸ってもいいけど、加減はしてくれよ?」


「……それは……多分、無理」


ええ……。なんで無理なんだよ。


「吸血衝動を制御できそうにないからか」


「……うん」


まいったなー。そんな状態で噛みつかれたら絶対死ぬぞ。


「えっと、今すぐ逃げてもいいか?」


「…‥ダメ。吸わせて」


いやいや、おかしいだろ。自分の血を吸い尽くしそうなやつが目の前にいるのにどうして逃げちゃダメなんだ?

ん? 待てよ。


「お前、キミコの一部になってからどれくらい血を吸ってないんだ?」


「……分からない」


なるほど。長期間血を吸ってないから吸血衝動を制御できなくなってるのか。


「事情は分かった。でも、俺は失血死なんてしたくないんだ。分かるな?」


「……うん」


「えっと、本当に分かったのか? 俺、ミイラになんてなりたくないぞ?」


「……うるさい、とっとと吸わせろ」


あっ、かなりイラついてるな、これは。


「はぁ……分かった。ほら、好きなだけ吸え」


俺が彼女に自分の首筋を見せると、彼女の目が紅《あか》く光った。


「……それじゃあ……いただき、ます!」


俺は不可避な死を悟ったため、ゆっくり目を閉じた。


「ナオトー、ごはんできたわよー……って、朝から何してんのよ! このエロ狐《ぎつね》ええええええええええ!!」


「あーれー」


ミノリ(吸血鬼)が彼女を蹴り飛ばしてくれたおかげで俺は九死に一生を得た。


「あー、助かった。ありがとう、ミノリ」


「どういたしまして。それより、どうしてキミコが吸血衝動を制御できなくなってるの?」


「えっと、多分キミコが取り込んでいる力の中にコウモリのものがあったから、それのせいでこんなことになってるんだと思う」


「あー、なるほどね。それならまずあたしに言いなさいよ」


「……私、お前嫌い」


「はぁ!? なんで嫌いなのよ!」


「……お前、いつもナオトのこと独占してる。強欲すぎ」


「そ、それはその、なんというか……あたし、強欲の姫君かつ吸血鬼だから、しょうがないのよ」


「……しょうがない? なら、私がナオトの血を吸い尽くしちゃってもしょうがないで済ませていいの?」


「そ、それはダメ!」


「どうして?」


「どうしてって、それは……。な、ナオトが死んじゃったらあたしすっごく悲しくなるし、きっと心に空洞ができちゃうからナオトは早死にしちゃダメなの」


「それがお前の本音?」


「え、ええ! そうよ! あたしはナオトなしじゃ生きられないダメな娘《こ》なのよ!」


「そう。けど、それは別にダメじゃないと思う。純粋で一途な恋心だから」


「こ、ここここ、恋心!? あ、あたしは別にナオトに恋なんかしてないわよ! あたしはこいつを利用してるだけ! 目的を果たしたらきっぱり別れるわ!」


「多分、無理だと思う。お前、今ものすごく顔真っ赤だから」


「ま、真っ赤になんかなってないわよ! バーカ! バーカ!」


ミノリ(吸血鬼)は顔を真っ赤にしながら退室した。


「ふふふふ、邪魔者はもういない。さぁ、ナオト。おとなしく私に血を吸わせなさい」


「うーんと……逃げるが勝ち!」


「……ふふふふふ、逃がさないよー」


逃避行は始まらなかったが、俺はしばらく逃走することになった。はぁ……なんで朝からこんなことになったんだろうなー。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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