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第50話、読み終えました!明洞の屋台の空気感、トイレの苦労から美味しいものにたどり着くまでの流れがすごくリアルで、一緒に旅してる気分になりました。藤子さんの「お坊ちゃま」呼びが可愛くて、文也くんが軟弱扱いされつつもチーズハットクやカンジャンケジャンに夢中になる姿が微笑ましかったです。そして施術前の「二人の愛の為だ!」という覚悟…彼が彼女のために頑張ろうとする気持ち、じんわりきました。次が気になります!
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【ソウル・明洞市場】
文也は自分の好奇心の旺盛さをこれほど呪ったことはなかった、なぜなら見なかった方が、知らなかった方が、人生はずっと楽なことが多いからだ、男性トイレに入ろうとする文也に、若い男性が消毒液を売ろうとしたのも、今なら納得が出来る
男性用の小便器から離れて、手を洗うまではなんとか息を止められていたが、手洗い場で我慢できずに息を吸ってしまった、そしてその横のトイレットペーパーを流せない大便器の個室を思わず見てしまって吐き気を覚えた
今は7月の初夏明洞の屋台村に隣接する、観光客用のトイレは鼻に刺す強烈な匂いで倒れそうだった
文也はハンカチで口と鼻を押さえ、そそくさとそこを後にした、出来れば二度とここで用を足したくない、しばらく歩くと赤い屋根の食堂のカウンターに座っている藤子を見てホッとした
彼女はこんな下町の屋台村でも、まさに上品さと落ち着いた洗練そのものだった、カウンターの彼女の前には色とりどりの(主に赤)おかずが大皿に積み上げられ、ここでも香辛料のいろんな匂いがした、なぜだろう、初めて空港に降り立った時からずっとかすかにどこへ行ってもキムチの匂いがする
文也はまだ鼻についてる嫌なトイレの匂いを取り去ろうと鼻をかんだ
「おかえりなさい文也君、ここのおトイレどうだった?」
内心のうんざりとは控えめに、文也は微笑んだ
「う~ん・・・出来れば他に行った方がいいんじゃないかな?ここはトイレットペーパーが流せないよ」
途端に藤子が笑った
「ということはあなたも韓国の洗礼を受けたわけね、大型の駅やホテルは日本と同じだけど、まだ観光地が進んでない所は下水道が発達してないから、ペーパーは流せないのよ、なので便器の横に使用済みのトイレットペーパーを積み上げてたでしょ?」
カバンから携帯の消毒液を取り出し、藤子が文也の手の平に片方ずつ、シュッと吹きかけてあげた
「まったく酷いもんだよ」
屋台の背もたれの無い椅子に座り直し、文也は手をふって給仕の一人を呼んで、チャミスルの追加を注文した
明洞の巨大市場にはすでに何度も来ていて、藤子はここの様子に詳しくなってた、市場は大きなスクエアがあって、ダンジョンのように屋根つきの回廊が伸びている
その両端に所狭しと屋台がひしめきあって、屋台内には新鮮な肉や魚介類や野菜が溢れ、あらゆる韓国食品がここで食べれる
「うわっ、僕、これ苦手だ」
文也は鉄製の丼に入ってる真っ赤な色のスープから正体不明の野菜を柄の細いスプーンで救い、うさんくさそうに眺めてから肩をすくめた
「藤子ちゃん、これ辛すぎるよ、食べない方がいいよ、こんな屋台より僕がもっと良いレストランを探して―」
ズズズ・・・「あ~ここのスープはいつ食べても美味しい!」
満足そうにドンッと空になった丼をテーブルに置く、口をハンカチで可愛く、拭き拭きしながら文也に微笑む
「ふ・・・藤子ちゃんって、意外と発展途上国向けだね」
クスクス・・・「ハイ、お坊ちゃま、これ食べてみて」
面白くないと言う顔で、藤子の差し出したチーズハットクをかじった
もぐもぐ・・・「うん、これは旨い、中のチーズがいいね、それと僕は軟弱というより人の手が加わっている洗練された場所が好きなだけだよ、後、おかしなものを食べて体調を壊すのも好きじゃないし、あまり冒険しないタイプなんだ」
びにょーんとチーズを伸ばしながら、もちゅもちゅ口を動かす
―それを軟弱というんだけど・・・―
クスクス笑いながら、藤子は次から次へと韓国の旨いものを文也に進めていく
めあ
43
2,001
#ネタバレ注意
るあ
2,673
#イケメン
蒼乃 月
828
さらに藤子は韓国製のかき氷「ピンス」と、渡り蟹の醤油漬け「カンジャンケジャン」も注文して文也に食べさせた、彼はとても気に入ったみたいでビニールの手袋をして蟹にむしゃぶりついていた
「冒険しないのもいいけれど、大切な旅の思い出に文也君の好きな場所と食べ物沢山みつけようよ、チャミスルもう一杯いかが?」
「うん」
彼女に微笑まれるとそれが世界の真理の様に思えた、二人はもう一度チャミスルで乾杯をした、そして藤子が言った
「あと一時間ほどしたらクリニックに行かなきゃね、予約7時だよ」
「う・・・うん・・ねぇ・・・藤子ちゃん・・・どうしても僕、施術受けなきゃダメ?」
「まぁ、駄目よ、そのために韓国へ来たんでしょ?文也君の施術の予約を取るの苦労したのよ」
当然よ、と言いたげに藤子が答えた
「大丈夫よ、少し痛いかもしれないし、ダウンタイムで誰かわからないほど腫れあがるかもしれないけど、ケアの方法は私が知っているし、痛くてもうダメだと思ったら、私が横で手を握ってあげる。もっとも手を握っても痛いものは痛いけど、その一か月後の劇的な変化は感動ものだから」
文也がじっと黙って藤子を見た
「大丈夫!!絶対後悔させないわ!!あなたのお肌のお悩みはこれで解決よ!!」
自信満々の藤子にもう文也は何も言えなくなった・・・そもそもお悩みも何も、敏感肌なんて嘘をつくのではなかった、あの時は彼女がこれほど真剣になってくれるなんて思っていなかったからだ
文也は学生時代からラガーマンで鍛えられており、連日日の光にさらされても、試合の時にスパイクで顎を蹴られ3針縫った時も、驚きの回復力で医者を驚かせたものだ
完全体育会系の自分は肌が弱いだ、内臓が弱いだと、今まで悩んだことなど一切なかった
文也は気が進まなかったが、せっかくここまで彼女と良い感じになれたのだ、午前中の海ではとても幸せだったし、少なくとも彼女は自分に好意を持ってくれているのを今は素直に表現してくれている
―しかたがない!二人の愛の為だ!―
文也は施術を受ける決心をした