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校庭で魔法のテストが行われようとしているところだ。

最初に名乗りを上げたのは、人族の首席合格者であるシンカだ。

透き通りそうな青髪を持つ少年である。


「慈しむ水の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。水の槍を生み出し、我が眼前の敵を貫け。ウォータースピア!」


たぷん!

彼が呪文を唱えると同時に、いくつもの水の槍が生成される。

シュッ!

それらが的に向かって飛ばされていく。


速度は速い。

狙いも正確だ。

20メートル~50メートルあたりに位置する的に次々に当てていく。


「これで最後っ! はああっ!!!」


彼が多めの魔力を込めた槍を放つ。

それはここから80メートルほど離れた的に当たった。


「そこまで! シンカ=アクアマリン。160点を獲得じゃ!」


リーズがそう言う。

160点か。

シンカが当てた的に書いてあった得点を合算した数値だな。


採点は単純明快だ。

満点は、200点となる。

シンカのコントロールはなかなかであったが、最も遠くまで飛ばした水の槍でも80メートルが限界であった。

100メートル以上離れたところにもいくつか的はあり、それらは撃ち漏らしている。


「ふう。まあまあかな……」


シンカがそう言って、的あての規定位置から下がる。

あの年齢にしては、かなり優秀だと言っていいだろう。

彼が女性であれば、余の伴侶候補にしてやったのだが。

まあ、男でも余の右腕候補として育ててやるのもいいだろう。

もちろん現時点での戦闘能力としては四天王や六武衆には遠く及ばないが、鍛え方によってはまだ伸びる余地がある。


「ふん! 人族にしてはまあまあね! でも、出力は大したことないわ! 私が高火力というものを見せてあげる!」


フレアが強気にそう言う。


「へえ……。せいぜい、お手並みを拝見するよ」


シンカがそう返す。

さすがに、自信家のフレアを露骨に挑発するような言葉選びはしないようだ。

このタイミングでまたケンカが勃発するのも面倒だしな。

それよりも、的あてという明快な勝負事があるのだ。

そちらで決着を付けようといったところか。

フレアが的あての規定位置に立つ。


「……燃え上がれ! レーヴァテイン!」


ごうっ!

フレアの髪が逆立ち、炎の魔力が彼女を覆う。

入学式のシンカとの戦いでも使っていた技である。

これ自体は攻撃技ではなく、魔力を開放して攻撃態勢を整える技だ。

フレアが準備を終え、火魔法の詠唱を開始する。


「揺蕩う炎の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。火の弾丸を生み出し、我が眼前の敵を滅せよ。ファイアーバレット!」


多数の火の弾丸が生成され、的に向かって射出される。

1つ1つの弾が大きい。

コントロールはややおぼつかないようだが、攻撃範囲の広さでカバーする感じか。

40メートル~70メートルあたりに位置する的に次々に当てていく。


「次で仕上げよ! はああっ!!!」


彼女が一際大きな火の弾を放つ。

それは彼女から100メートルほど離れた的に当たった。

もっとも遠い的ではないが、十分な射程距離だ。


「そこまで! フレア=バーンクロス。160点を獲得じゃ!」


リーズがそう言う。

ふむ。

奇しくも、シンカと同じ点数だな。


フレアは名門貴族家の娘とはいえ、実戦経験はない。

それに対してシンカは、”流水の勇者”として実戦経験豊富だ。

そんな2人が互角とは、やはり魔族と人族間の現時点での戦力差は大きいな。

まあ、だからこそ被害を抑えて余が世界を統一できたのだが。


「ちっ! 思ったように力が出せなかったわ。この私が、あんな人族と同じ点数なんて……」


「それはこっちのセリフだね。あんな乱暴な術式で力任せに的をなぎ倒すだけなんて……。魔族の野蛮さが際立つ」


フレアとシンカがそう応酬する。

テスト結果で上下がはっきりすれば落ち着くかと思ったが、まさか同点とはな。

これでは、対抗意識が一層燃え立つばかりだ。


「静粛に! 続いてテストを行っていくぞ! 要領はわかったじゃろうから、他のフィールドも使って並行してやるのじゃ」


リーズがそう言う。

この人数で1つのフィールドしかなければ、全員のテストが終わるまでかなりの時間を要してしまう。

他人の魔法を見るのも勉強の内とはいえ、さすがに見てばっかりというのも効率が悪い。

首席合格者の2人を手本として見せた後は、複数のフィールドで並行してテストを行っていく感じか。


リーズの指示のもと、生徒たちが次々と的あてテストを行っていく。

平均点は80点といったところだ?

160点を取ったフレアとシンカは、破格の実力だと言っていいだろう。


「迸る雷の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。雷の一閃を生み出し、我が眼前の敵を滅せよ。サンダーボルト!」


ビリッ!

イリスの手のひらから雷が迸る。

それは順調に的を破壊していくが——


「そこまで! イリス=ノイシェル。130点を獲得じゃ」


余の側近であるイリスが130点。

彼女の実力はこんなものではないはずだが……。


「(イリスよ。加減したのか?)」


「(はっ! わたしが無闇に目立てば、陛下の学園生活に悪影響が及ぶリスクがありますので)」


イリスがそう答える。

確かに、彼女が本気を出せば余を除いてこの学園で間違いなくトップの成績を収めてしまうだろう。

学園生活が乱れ、余の学園生活にも影響が出る可能性がある。


「(そうなれば、そうなったときだ。気にすることはなかったのだがな)」


「(ははっ! 次からはそう致しましょう。陛下も、お好きに力をお出しになってくださいませ!)」


イリスがそう言う。

そして——


「次は、ディノス=レアルノート! 規定の位置に向かうように!」


「ああ、わかった」


リーズの言葉を受けて、余は前に出る。

さて、どの程度の力を出したものか。


余が全力を出せば、的どころかこの学園の敷地全てを灰燼に帰すことも可能だ。

しかし、もちろんそんなことをするわけにはいかない?

適度に加減する必要がある。


とはいえ、加減し過ぎるとフレアとシンカの対立を止められない。

彼女たちよりも少し上の成績を取るのがベストか。

彼女たちは、200点満点中160点。

余は180点ぐらいを目指してみることにしよう。

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