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鋼谷が鷹津を追って廃墟の中を駆け抜けると、突然背後から重々しい気配が漂ってきた。振り返ると、そこには高村の姿が見えた。彼の立ち姿は不動のままで、その周囲に漂う空気が一瞬で変わるのを感じた。
「鋼谷、鷹津はどこだ?」
高村の声は冷静でありながらも、どこか重みを感じさせた。鋼谷は一瞬怯んだが、すぐに口を開く。
「先輩、鷹津はあっちの方へ逃げました。あの野郎、逃げ足だけは早いです!」
「そうか。君は追っていればいい。」高村は静かに言ったが、目は鋼谷の動きを見逃さなかった。「俺が先に行く。鷹津のことは俺に任せろ。」
その言葉に鋼谷は驚いた。「でも…!」
「心配はいらない。見せてやる。」
高村がゆっくりと手を伸ばすと、周囲の重力が変化し始めた。まるで空気が引き寄せられ、彼の周りに圧力が集まってくる。まさに引力を操る彼の力は、まるで見えない糸で結ばれているかのようだった。
「行くぞ。」高村が言うと、その場の重力が一瞬強まった。その瞬間、鋼谷は体が軽くなり、地面から浮き上がるような感覚を覚えた。高村の引力が鋼谷を引っ張る。
「先輩、どこに…!?」
高村は静かに微笑みながら、空中に浮かび上がった。まるで空を飛ぶかのように、彼は一瞬で鷹津のいた方へと移動した。空中から鋼谷を見下ろしながら、次の瞬間には鷹津の姿を捉えた。
「鷹津!」高村が声を上げる。その声は鋼谷の耳に届き、鋼谷はすぐに高村が何をしようとしているのかを理解した。
引力操作によって、周囲の物体が高村の意思で動き出す。彼は鷹津の動きを封じ込めるため、周囲の障害物を次々と引き寄せ、圧力を高めていく。
「動くな、鷹津!お前の逃げ場はない!」高村の声が響き渡る。鷹津は焦り、後ろに下がりながら必死に逃げようとするが、重力の圧力に逆らうことはできなかった。
鋼谷は高村の力に感嘆しながらも、心の中で思った。「やっぱり先輩はすごい…!俺も頑張らなきゃ!」
その瞬間、鷹津が反撃に出る。彼は持っていた刀を構え、一閃の刃で前方の障害物を切り裂いた。その隙間から彼は逃げ出そうとするが、高村の引力が強まる。
「逃がさない!」高村の叫び声が響く中、鋼谷はその場に踏みとどまり、鷹津の動きを見極める。彼らの運命が交差する時が、再び迫っていた。