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体育館はざわついていた。檀上の話を聴いているものは、見渡した限り一人もいない。

先生達は口元に人差し指を立てて通路を渡り歩いている。生徒は居眠りしたり、小声で話したり、とりあえず聞いているフリだけはしている。

「大学生活について」と題された高校二年・三年生向けの講演に、なにも初めから期待がなかったわけではなかった。新市街の大学から来る教授が今年は学界で有名な人だということで、先生方は一週間も前からそわそわしている様子だった。そんな雰囲気につられて、生徒の関心も比較的高かったのである。右隣のメガネなどは、講演が始まる前からノート片手にそわそわしていた。今はそこにケマルのドラマに出てきた役者の似顔絵が書き込まれている。

体育館に入ってからのどさくさの中で、左隣はよりによってプナールになってしまった。本当は、もっと可愛い子の隣に座りたかったのだが。まあ、なってしまったことを今更どうこう言ってもしょうがない。昨日の話を特別にしてやると、プナールは「そんな話、私が信じるとでも思ってんの」と、俺の太ももをケマル下敷きを立てた面で叩きやがった。昨日の城壁の登り降りでただでさえ痛いという太ももを。

「そんなにいうなら、証拠見せなさいよ。一緒に撮った写真とか、サインとか」それなら信じてあげてもいいと彼女は言う。信じてもらわなくたって結構だ。

壇上に目を向けることにした。頭の剥げたオッサンがコップの水を一口し、しかめっ面に胸を反り返らせたまま、原稿を片手に棒読みしている。「ハイデカーでは」とか「ヘーゲルによると」というところだけ声が大きくなる。教授は軸足を、片側から片側へとせわしく動かしている。原稿を持っていない方の手が意味もなさげに、小さく左右に動いている。話よりもそっちの方で気が散ってしょうがない。

「ニーチェでは、」

俺はニーチェとかハイデカーという人のことを知らない。今回の講演の主題「大学生活について」とは、一体何のつながりがあるのだろう。じんわりと痛むふくらはぎを、手でさする。後ろから小さないびきが聴こえて来た。

プナールが立ち上がったのを契機に、俺も立ち上がった。彼女はトイレに曲がり、俺は真っすぐ進んで体育館を後にした。

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