テラーノベル
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「全自動英雄」として祭り上げられてから、数年の月日が流れました。離宮には、アヤ、ミナ、ナツメに加え、隣国の姫君や伝説の精霊術師、さらにはかつて求婚してきた100人の代表者たちまでが「侍女」として加わり、ルカ(健二)の周囲は常に、目が眩むほどの美女たちで埋め尽くされていました。
「ルカ様、本日の解析(おやつ)は最高級の魔力イチゴですにゃん(アヤ)」
「ルカ様、膝枕の準備はいつでもできておりますよ(ミナ)」
かつては絶望していた「勘違い」の日々でしたが、数年も経てばルカも気づきます。
(……ああ。俺、本当に幸せなんだな)
前世の42年間、誰からも必要とされなかった男が、今は世界中の女性に愛され、指一本動かさずとも平穏が守られている。毎日が騒がしく、毎日が温かい。
「……悪くない。いや、最高すぎるな」
ルカは、かつてスマホの中に求めていた「理想の楽園」が、今ここにあることを噛み締めていました。
決断の時
しかし、ルカは知っていました。この「みんなのもの」としての神様生活に、自分自身でケジメをつけなければならないことを。
ある満月の夜。ルカは自分を囲む大勢の女性たちを下がらせ、一人の女性だけをバルコニーに呼び出しました。
「……ナツメ。ちょっと、いいかな」
現れたのは、数年前よりもさらに凛々しく、そして「アシュフォード・スタイル(肩破り)」を独自の正装へと昇華させた、帝国最強の騎士・ナツメでした。
「ルカ様……。いかがなされましたか? 私に、新たな『愛の試練』をくださるのですか?」
ナツメは跪こうとしましたが、ルカはその手を優しく取り、引き止めました。今のルカには、かつてのパニックになった弱々しさはなく、愛に包まれて得た「本物の余裕」がありました。
「ナツメ。……あの日、俺がスライムに怯えて、君の服を破いてしまった時から……いや、もっと前からかな。君はいつも、俺の情けないところも、全部都合よく……いや、カッコよく解釈して守ってくれたよね」
「ルカ様……」
「俺は神様じゃない。本当は弱くて、サボりたくて、君の後ろに隠れていたいだけの、ただの男なんだ。……そんな俺の、本当の『盾』になってくれるのは、ナツメ。君しかいないんだよ」
ルカは前世の42年分と、今世の数年分、全ての勇気を振り絞って、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめました。
「……ナツメ。俺の、たった一人の奥さんになってくれないか」
「…………っ!!」
ナツメの目から、大粒の涙が溢れ出しました。
これまで「主従」や「崇拝」という言葉で誤魔化してきた彼女の心が、ついに「等身大の愛」として爆発しました。
「……はいッ! 私……私、ナツメ・ローゼンベルクは、生涯をかけて、ルカ様という名の『光』を、誰の手も届かぬ場所でお守りし続けます……っ!」
ナツメはルカの胸に飛び込み、二人は静かに抱き合いました。
エピローグ
翌朝、王都中に激震が走りました。
**『現人神ルカ様、ナツメ騎士を正妻に指名。他、数百名の美女は「永遠の二番手」として離宮に残留』**という、前代未聞の婚約発表が行われたのです。
アヤは「……計算通りです。一位がナツメなら、私は『ルカ様の脳内演算の伴侶』として君臨するだけですわ」と眼鏡を拭き、ミナは「あらあら、正妻の座は譲りますが、夜の『癒やし』のシフトは私が管理しますね」と聖母の微笑みを絶やしませんでした。
ルカは、ナツメの手に引かれながら、王都の青空を見上げました。
ポケットにある、とっくに電池が切れたスマホをそっと撫でます。もう、画面の中の美少女を探す必要はありません。
「さあ、ルカ様。私たちの新しい伝説を、作りに行きましょう!」
「……ああ。でも、とりあえず今日は……二人でゆっくり、昼寝から始めようか」
ルカが幸せそうに微笑むと、それを見た民衆は「……見ろ、英雄が『休息』という名の新時代の法を説いておられる!」と、またしても大いなる勘違いを始めるのでした。
完
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