テラーノベル
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午後五時過ぎ。月呼はすっかり調子を取り戻す。ふたりは夕食の時間まで外に出て散歩することにした。
月呼は髪を整えようと、ドレッサーの鏡を見る。あることを思い出して「あっ」という言葉を出す。
「私、前髪を切ろうか切らないか迷っていたんだよね。ここだったらハサミがありそうだし、切るなら今切っておこう」
月呼は侑加に近づいた。
「侑加くんはどう思う? 切った方がいい?」
「うーん……どうだろう」
侑加は月呼の前髪を右に左にと触る。
「そんなに触られたら、前髪がボサボサになっちゃうよ」
「ああ、ごめん」
侑加は手櫛で月呼の前髪をきれいに直す。
「うっ……」
侑加の触れようはスキンシップのように感じ、どきどきとした。
「決めた。切る」
月呼は一階のロビーにいる局員からハサミを借りてきて、前髪の毛先を慎重に切った。切りすぎた前髪で侑加と残りの時間をずっと過ごしたくないという理由で、いつも以上に失敗したくないと思った。
「うん、バッチリ!」
さっそく侑加に見せる。
「前と変わったの、わかる?」
「うーん、なんとなく」
「くるるちゃんは言わなくても気がついてくれるかなあ」
月呼は部屋を出る前にコートを羽織った。なにげなくポケットに手をつっこむ。中はゲーム説明の時の赤い糸が入ったままだった。
取っておいても使い道のないものだろう。けれども、自分と侑加を繋いでいたものに、特別なものを感じる。月呼は赤い糸をドレッサーの引き出しにしまった。
コメント
1件
みぅです🖤読んだよ、18話。 前髪切るって急に言い出した月呼さん、可愛かったなあ。侑加くんに触られて「うっ…」ってなるのも、1話から積み重ねてきた距離感があるからこそ響くものだね。赤い糸を取っておく描写も、ちゃんとふたりのつながりを大事にしてる感じがしてじんわりきた。くるるちゃんに気づいてもらいたいっていう月呼さんの乙女心も好きだよ🌙
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