今回死ネタなんで注意!
昨日用事あって漫画買いに行けなかったんですよ。それで今日くまざわ書店まで行ったんですよ。
そしたら続科だけ売り切れ!!
かなしい!
作者運なさすぎですね。
追ってた漫画ほとんど連載終了&無期限の連載中止ってマ?
d!以外にも一つだけいま連載追ってる漫画あったんですけどそれも作画担当の方がやらかして執行猶予付きの有罪判決!
もはや呪いでは?
悲しいのであったけぇ話が書きたいなって事でciemで死ネタです。
今回ちょい長めです。
では、どうぞ……
ciem【金木犀が咲いたから】
ふわり、ふわり
もう日が傾き始め、夕方の雰囲気が漂う頃
換気のために開けた窓から、優しい甘やかな香りが、風と共に流れ込んできた。
それがなんの香りか、すぐに気づいて
ゆっくりと、あの復讐鬼が管理する庭へ脚を進める。
「…あぁ、やっぱり」
庭の隅の方にたった一本
小さなオレンジ色の花を沢山つけた特別大きくもない木が、風に揺られていた。
「…もう咲いたんか。ついこの間まで蕾も無かったのに」
何年か前、優しい彼が教えてくれた。
この木…いや花は『金木犀』と言うらしい。
金木犀の香りを嗅ぐと、朗らかで優しくて賢い彼の事を思い出す。
俺の2つ上の先輩で、幹部内で最年長。いつも穏やかな笑顔を浮かべる、暖かい人
そして
そして俺が密かに想いを抱いていた人。
「…逢いたいなぁ……エミさん…」
大好きだったエーミール
彼は今から丁度一年前、金木犀が咲く頃
大国との戦争にて、栄誉ある戦死を遂げた。
敵国の罠で戦闘員の幹部が全員負傷して、いつものように動けなくなり、絶体絶命の状態に陥った時
彼は全員の反対を無視して敵国の軍本部に乗り込み、その身と引き換えに軍上層部の殆どを討ち取ってみせた。
彼は大好きだった爆弾でド派手に最期を飾ったんだ。
……遺体なんて、残る筈もなかったけど。
皆泣いてた。
グルッペンさん、オスマンさん、トントン、コネシマetc……今まで泣いたところなんて見たことの無かった人達も、皆泣いてた。
戦場に出ていた人達は、自分達が力及ばなかったせいだと拳を握りしめ
基地でサポートに徹していた人達は、自分達が行くべきだったと嘆いでいた。
俺は、勿論凄く悲しかったけど、でも、彼の死を実感出来ないままで、泣く事さえ出来なかった。遺体も無かったから、余計に。
でもなんだか心の中に、ポッカリと大きな穴が空いてしまった様で、なんとも言えない虚無感や無力感に苛まれていた。
でも、進まなきゃ行けないから。皆はなんとか、お互い励まし合って、少しづつ、少しづつ…歩き出す準備をしてた。
…俺は、なんとなく……進む気力が…無くなってしまったんだ。
「エミさん、金木犀好き言うてたやん?今年もよお咲いとるで」
ここにいれば「咲いてますね〜」なんて言って、彼が金木犀を見に来る気がして。
そんな事を考えていれば、ふと、ある話を思い出した。
「……あぁ…そういえば……金木犀の匂いって……あの世にまで届くんだっけ」
金木犀の香りはとても強くて、近くに花が無くてもその匂いが漂ってくる……だから、遠いあの世にも、その香りが届くのだと。そうゆう言い伝えがあると
彼が、エーミールが教えてくれた。
「…エミさんも分かる?……今年のは、特に、甘いなぁ……」
「チーノ君」
後ろから、彼の声がした。
驚いて勢い良く振り向けば、あの時と何ら変わりない、エーミールが居た。
「…ぇ……えー、みぃ…る……?」
「確かに、今年の金木犀は特別甘い香りですねぇ……」
声が、震える
手が、身体が、震える
「…ぇ、みさん」
「チーノ君」
エーミールは…ふっと、いつもみたいに困った様に笑って
「…また来年も、一緒に金木犀を見ましょうね」
ザァッ…と、強い風が吹く。
伸び始めていた前髪が視界を覆う。
髪をはらった時、もうエーミールはそこに居なかった。
そこで初めて、彼は本当に死んだのだと理解して
突然、視界が歪んだ。
脚が震えて、立っていられなくなって、その場にしゃがみ込む。
ボロボロと溢れ落ちる水滴をどうにか止めようとしたけど、もうどうしようもなくて
虚しさと、哀しさと、絶望と、安堵が、一気に押し寄せる。
「…う、ん……もう…だ、大丈夫…大丈夫、やから…ッ……ちゃんと、進める…から」
「…また、一緒に見よ、な……金木犀」
もう、彼はこの世界には居ないけど
金木犀が咲けば、彼と同じ花をみて、同じ香りを感じれるから
たとえどれだけあの世が遠い場所でも、俺らは同じものを見ていられるから
だから…もう、大丈夫。
1人の青年を、黄昏時が包み込む。
世界の輪郭がぼやけ、あの世とこの世の境が、めちゃくちゃになってしまう時間。
きっと、どちらの世界にも
甘く優しい金木犀の香りが、漂っているのだろう。
お花の中なら金木犀が1番好きかもですねぇ。
最近実家の庭の金木犀が咲いたんですよ。
金木犀の花言葉は、『謙虚』『謙遜』『気高い人』『真実』『陶酔』『初恋』『幽世』
『幽世』と言うのはあの世とか、黄泉の国と言う意味ですね。
『謙虚』とか『謙遜』もemさんとci君にピッタリな感じがしますよね。
それでは、また次の作品で……
コメント
2件
新作お疲れ様です。 読んでいる最中に、何故か鼻腔と喉奥に金木犀の甘い匂いを感じるくらい、主様の優しい文体と相まって二人の切ない関係が目の前に浮かびました(ノД`) そして、くまざわ書店さんェ……。知人の話だと、昨日買いに行った時点でラスト3冊だったとか。 みんな4️⃣流好きなんですねぇ。私も大好きです✨