あれ、ここ、は?
俺、家にいなかったっけ、
カナと、一緒に---
『ひば〜帰ろうぜい』
っ、かな、と、?
あぁ、これは、夢だ
なら、夢でぐらい、正直に、
「っあの、さ、奏斗っ!」
『んー?』
「お、れ、おれ、奏斗の、こと---」
そこまで言って、プツッと、途切れたような音がして
次の瞬間には
『えっ、と、何?僕のこと、好き、って、』
ぁ、だめ、だ、これ、は
・・・都合のいい夢すら見せてくれないのか、
『いや、ぁの、ごめん。・・・僕、雲雀のこと相棒だって、思ってて、さ。』
、まって
『雲雀のこと、そういう風に見れない』
、まってよ
『それに、さ、僕』
・・・まって、くれ、
そう思っても言葉はどんどん紡がれていく。
『椿さんが、好きなんだ』
・・・ぁぁ、
『だから、雲雀とは、相棒でいたい』
・・・おれ、
『僕とずっと、相棒でいてくれる?』
・・・お、れは、ッ、
『---ぃ!雲雀!』
うすく、めをひらく
まだ、ねむい
「ん、ぁ、?かな、ぁ?」
ぼやけてる、けど、かなの、かおがみえる
かなが、おこしてくれたみたいだ
『・・・は?』
「ん、ぅ、ごめ、な、りっぷ、おれ、かいなおすから、な、」
もうおれ、なにいってるのかも、あんまわかんなくて
あ、そぅだ、
「か、なぁ?」
『・・・なぁに、雲雀』
「んふ、めずらし、ぃ、ね、ひばりってぃうの、」
「ぁの、な、おれも、ね、」
「かなの、こと、だいじやから、ね、」
「だいすき、」
奏斗 side
カナに文句を言いにきたのに、既にカナはいなかったから、ひばの顔見ようかな〜って、上がったのに
『、は?』
魘されている様だったから、近くに行って声をかけて起こしたのに、そう聞こえてきて思わず漏れた声。
『ね、ぇ、何、それ』
そう問いかけても、既に雲雀は再び夢の中だ
何な訳、は?
”「だいすき、」”
なに、その顔
へにゃへにゃな顔
なんでそんなかわいい顔しながら”大好き”だなんてカナに言ってる訳?
、ねぇ、お前、カナが、好きなの?
グッ・・・と手に力が入る。
そのことから目を逸らすように首を振り、力を抜いて雲雀の顔を見つめる。
”「だいすき、」”
、あんなかわいー顔しちゃってさ
こんなに、かわいい顔してすやすや寝ちゃって
さっきお前が見たの、カナじゃないんだけど?
似てるからしょうがないにしてもさ、それにも限度はある
お前、本当に危機感ないし
そのくせ人あたりはいいし
周りを照らすような、太陽みたい笑顔しやがってさ
「、す、ぅ、、」
ふと、僕とカナを間違えたんだからちょっとぐらい悪戯したっていいだろうと思ってしまった
『はぁ、あーあ、もう、この野郎、』
そう言ってひばの頬を軽く突く
「、す、ぅ、、ん、、ふへ、、」
・・・あぁ、もう
お前から離れてやるために、無理矢理でも他に目向けてんのにさぁ
、夢中にさせんの、やめてくれない?
「、っふは、、かな、と、、ん」
、な、んで、僕の、名前
「、ぅ、かな、と」
、呼ぶなってば
「、かなと、」
あぁもう、
『っお前、本当に、っ』
・・・もうちょっとだけ、悪戯させて
バレないようにするから
まだ起きないで
ちゅ、
軽いリップ音が鳴る
雲雀の呼吸音しか聞こえないような静かな空間のせいで、響いたような気がした
「ん、ぅ」
・・・あぁ、もう、
甘い、甘いよ雲雀、
駄目だって分かってる
でも、もうちょっとだけ、この甘さを味わっていたい
ごめん、ごめんね、雲雀
僕は息を吸った
ちゅ、
ちゅ、っ、ぅ
雲雀の唇を食むように味わい、息が漏れる
『、ッは、ぁ』
・・・僕はこんなに必死になってるのに、雲雀はすやすやと寝息をたてているままだ
すき、すきだよ、だいすき
好きだよ雲雀、愛してる
こんな感情”相棒”として許される訳がない
言ってしまえばどうなる?
雲雀はどう思う?
、きっと、相棒じゃいられなくなる。
そんなことになってしまうぐらいなら、いっそのこと雲雀じゃない誰かと---
そう思ってここまでやってきたのに
どれだけ雲雀と話したくても、どれだけ雲雀の顔が見たくても、我慢してきたのに
雲雀が他の誰かと話す度に、狂わせてしまいたくなるのに
他の誰かにその笑顔を向けているのを見る度に、ぐちゃぐちゃにして僕以外見えなくさせてやりたくなるのに
・・・僕は何も変わってない
雲雀の相棒でいたいと思っているのに
思っているくせに
雲雀の恋人になりたいと、そう思ってしまう
雲雀の、本当の意味での一番になりたい
---許されることならば、雲雀が許してくれるのならば、このまま攫ってしまいたい
雲雀の全てを奪い去ってしまいたい
”他なんて見ないで”
”僕だけを見て”
そんなことばかりが頭を埋めつくしていく。
いや、駄目なんだ
駄目なんだよ、それじゃ
雲雀は太陽みたいな人だから
皆を平等に照らすような。
、僕だけじゃないんだから
それに、その太陽は、カナを、
『、っ帰ろ』
薄く残っている、雲雀の唇の感触
今あの唇に触れることができるのは、僕だけだ
その事実が、僕の独占欲を満たすように拡がっていく
、でも、いつかカナだけの特権になってしまうのだろうか
そう思うと、満たされていったものはすぐに消え失せ、悔しくて涙が滲む
ハッとして、頭を振って無理矢理にでも抑える
こんなこと、考えるな
カナも、雲雀も、幸せになれる道だろ
・・・でも、
『ひば、ごめん…本当にすき…愛してるよ…』
僕は、お前の相棒でいたい
だから、ずっと、こんな僕に気づかないままでいて