\== zm ==
ここにきて1週間が経った。
剣、ナイフ、拳銃、ライフル、爆弾。
武器庫には初めて見るような量の武器が並べられていた。
zm「おぉ〜……」
わくわくとした目で見ていれば、がちゃ…とドアノブが動く音がする。
rbr「…何をしてるん?」
鋭い声。
zm「見てるだけやで〜、、」
rbr「ベタベタ触らんようにな」
ほんと、仲間になったって言うのに冷たいなぁ……チビのくせに。
睨むようにおれの動きを見ているロボロは、大きな木箱を持っていた。中には爆弾が入っている。
流し目で剣を見ていると、ふと、一つの剣が目についた。
他のとは明らかに違う。様々な装飾があり、刃こぼれが見える。観賞用としてだろうか。
その剣を見つめていると、ロボロが口を開いた。
rbr「お前……なんでこの国来とるん?ショッピくんの国にも行ったんやろ?」
剣を触ろうと伸ばした手が止まる。
zm「いつか」
rbr「………そうか」
さっきの箱が床に置かれる音が響く。
集合をかけられた会議室には、すでに幹部全員が揃っていた。
最後に来た俺はショッピの隣に座る。
その直後、グルッペンも入ってきた。
gr「……ショッピくんについてはわかったが……ゾム」
名前を呼ばれた俺は頬杖をつく。
やっぱりか…どうしよっかな〜…
gr「君についても聞きたいと思うんだが」
チラッとショッピの方を見ると、彼は小さく頷いた。
いいんだろうか。言っても。
何かを察したのか、グルッペンが口を開く。
gr「見捨てることはない。君のような才能を手放すなんてもったいないからな」
zm「………総統さん」
ゆっくりと深呼吸をする。
zm「武器庫にある装飾された剣、あれ綺麗ですね」
gr「………そうだな………あれは観賞用だ。俺の前の総統が飾ったらしい」
zm「廊下にある絵画や宝石もか」
gr「……そうだ。片付けるのがめんどくさいからそのままにしている」
ポーカーフェイスを崩さずに、相変わらず薄笑みを浮かべる。
おそらく、こいつは知っているんだろう。全て。
前の総統。俺はそいつのことを知っている。顔も、声も、性格も。
俺が生まれたのは、ある南部の国だった。グルッペンの国と近いらしい。
俺に両親はいなかった。生まれた時から俺が能力者だということを知り、捨てられたのだと思う。今俺が生きているのは、誰かが拾ったからだろう。
俺は孤児院で育った。普通にご飯を食べて、普通に遊ぶ、普通の生活を送っていた。
普通の生活を送っていたはずだった。
その普通が続いたのは、12歳までだった。
なんか、能力者って好かれる存在じゃないらしいから、俺は能力のことを隠していた。誰にも言っていない、俺だけの秘密。
俺はいつも、無意識に人を傷つけてしまっていた。
言葉に気をつけなさいって死ぬほど言われても、直すことはできなかった。
別に、好きで傷つけてるわけじゃないし、俺自身も悪気はない。
でも、友達を傷つけて嫌われて、また俺自身も傷ついて……
正直苦しかった。
どんなに気をつけようとしても、気づけばまた、誰かが目の前で泣いていた。
mb「ゾムくんなんて嫌い!こっち来んなよ!」
zm「ッ…!?ごめっ」
mb「もういいよ…」
zm「……ごめんなさい…」
難しいよ…俺には…友達作りとか、言葉遣いとか。
小さい時からずっと、「嫌い」と言われていた。慣れたよ、もう。
でも、本能って怖いな。
ある日、俺はいつものように友達と遊んでいたら、また心にもないことを言ってしまった。冗談とか、ノリとか、そういうもんやってんけどな。
zm「お前おもんないやつやな」
普通に考えれば、12歳のガキにこんなこと言ったら泣くよな。
すると、鼻をすすりながら、友達が俺にこう言った。
mb「ッ……ゾムなんか大嫌い!!」
『大嫌い』
こいつだけは、信じていたんやけどな。嫌いなんて言われたことなかってんけどな。
mb「ずっ…ずっと前から嫌いだったんだ…」
俺が1番嫌いな言葉。
慣れている、慣れているはずだけれど、この言葉を聞くと、ナイフで胸を刺されたかのような苦しさになる。
mb「ほ、ほんとは、今日…だって遊びたくなかった…っ」
ただ、俺を襲う脅威が、その苦しみをないものにしてしまう。
zm「……うっせぇな……」
気づいたら、俺の右手には爆弾があった。
とっさにしまったが、遅かったらしい。友達の目からは涙。俺に怯えていた。
俺は1人になった。
「ゾムって能力者だったんだってさ。しかも爆弾使い」「こわ……怒らせたら殺されるぞ」「なんで能力者が俺らに混ざってんだよ」「好きなやついるのかな、あいつのこと」
「あぁゾムくん…ごめんね、また今度にしてくれるかな」「ゾム、あまりここから出ないようにしてね」「ゾム、私たちを巻き込まないでちょうだい」
誰かを殺したわけでもないのに、ちょっと間違っただけなのに…あれだけで人生が崩れるなんて。
14歳の時、この国を出た。こっそりと。もうあの時の友達の名前は覚えていない。
俺はたまたま近くにあった、ある大きな国に行った。
店に行けば、笑顔で受け入れてくれる。
ちょっと街の人に話しかければ、楽しそうに答えてくれる。
一言でまとめてしまえば、幸せだったのかもしれない。
3ヶ月ほどたったある日、俺は路地裏でいつものサンドウィッチを食べていた。俺の嫌いなトマトが入っていないめっちゃ美味しいやつ。結構気に入っている。
「いやぁ…あの絵画、結構気に入っているよ」
zm「………?」
聞き慣れた声が、どこからかしてきた。
総統だ。周りの人たちは幹部だろうか。正直、ここの総統が俺は嫌い。その他が良いからここにずっとおるけど。
「次は剣でしたっけ?」
「あぁ…あまり武器には興味がないのだが…あの剣は美しいからな」
「珍しい剣ですよね。装飾に凝っていて」
「っはは。あれもそろそろ手に入るだろう。思ったより騙せるもんだな」
複雑な空気の沈黙。
そんな中、グルッペンがなるほどね…という言葉をこぼす。
gr「………前の幹部たちと私以外に、知っているものがいるとは思わなかった」
少し目を細める。冷や汗が流れた気がした。
その、余裕たっぷりの視線に微かな苛立ちを覚える。
zm「実はお前もやってたりして」
少し煽れば、はははっ、と笑う。
gr「そういうのに興味がない。喧嘩売って国ごと奪った方が面白いしな」
zm「…戦争好きなんですね」
gr「ゾムも好きだろう?」
zm「……………別に」
にや、と口角を上げたグルッペンに、緊張を感じる。
gr「爆弾ね…。威力の調整はできるのか?」
zm「まあ、一応…」
何を言いたいのかわからない。
gr「…ふーん…ショッピくんは?」
shp「っえ…」
唐突に振られて動揺するショッピは、言葉を詰まらせながらも恐る恐る口を開く。
shp「ぁー…機械操作っていう、まあ、なんでも自由に操作できるってやつです」
gr「それは、壊すこともできるのか?」
shp「だいぶ疲れると思いますけど」
gr「……そうか…」
ショッピは冷静な顔でグルッペンのことを見ていた。というよりも観察していた、の方が合っていると思うが。
gr「機械しかできないんだな」
なんとも意味深な言葉に、ショッピは一瞬驚いたような顔を見せる。
shp「……そうですね」
gr「…ゾム。ショッピくんは強いのか?」
zm「子供の頃から訓練されてきたから」
gr「…そうだな。ありがとう」
そう言うと、グルッペンはポケットから一つの鍵を出す。
それを、俺の目の前に置く。
zm「え……これ……」
gr「欲しかったんだろう?」
zm「ぁあ…うん。ありがと」
tn「グルさん。流石に」
gr「好きにさせてやれ」
手にとってポケットに入れる。
グルッペンは立ち上がり、ドアに向かった。
gr「…じゃあ、終わりにしよう。解散」
みんなに続いて部屋を出ると、ショッピに呼ばれる。
shp「ゾムさん」
zm「なにー?」
shp「あの…後で訓練…おねがいします」
zm「……うん。わかった」
俺は優しく微笑んだ。
zm「………」
俺はショッピの部屋に行きながら鍵をポケットから取り出した。
偽物ちゃうよな…
ドアをノックし、開ける。
zm「入っていい?」
shp「どうぞ」
彼はパソコンと向かっていた。
机に鍵を置く。
zm「これ、調べてくれる?」
shp「ゾムさん」
zm「…なに」
shp「俺、ゾムさんのこと信じてるんで」
こっちを見もせずに言い放てば、鍵を箱の鍵穴に刺した。普段こんなこと言わないのに。
蓋を開けると、中には小さな紙が一枚。
shp「…これですか」
zm「そうやね。これでまた世界が平和に近づくよ」
俺とショッピはナイフを持って訓練場へ向かった。
ふつーに魔主役好きなんで家系能力使わせてもらってます
次回もよろしくお願いします
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