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「――愛美ちゃん、すごくキレイだ」
都内のホテルにあるブライダルサロンの控え室で、無事にヘアメイクが終わった真っ白なウェディングドレス姿の愛美に、グレーのタキシード姿の純也さんが感想を漏らした。
「ありがとう、純也さん。わたし小柄だからドレスが似合うかどうか心配だったんだけど、よかった。純也さんも、タキシード姿カッコいいよ。やっぱりスタイルがいいから、何着ても似合っちゃうね」
「そう言われると照れるなぁ。でも嬉しいよ、ありがとう」
愛美の身長は結局、高校入学時からほとんど伸びずに百五十二センチで止まってしまった。でも、百九十センチの純也さんとの身長差はほんの二センチだけ縮まった。
「純也さん、やっとこの日が来たね……」
「ああ、長かったなぁ」
愛美の実感のこもった言葉に、純也さんも頷いて目を細めた。
二人が将来を誓い合ったのが、愛美が大学一年生の六月だった。
あの後、愛美は純也さんに〝あしながおじさん〟として援助してもらっていた学費などを全額返し終わった。初めて出版された長編小説がベストセラーになり、印税がたっぷり振り込まれたのだ。
純也さんは「これまでのお金を絡めた関係にけじめをつけたい」という愛美の気持ちを理解してくれて、それを快く受け取ってくれた。
それからの愛美は純也さんからのお小遣いも受け取らなくなり、自身が執筆することによって振り込まれる原稿料と印税の残りをやりくりしつつ、大学を首席で卒業した。卒業式では高校の卒業式同様、答辞も読んだ。
作家としても順調に売り上げを伸ばし、あれから長編小説を三冊、短編集を二冊世に送り出してきた。愛美は今や人気作家の一人にカウントされている。
そんな愛美は現在二十三歳、純也さんも三十六歳になっている。
「……愛美ちゃん、まだ心配かい? 辺唐院家の一員になるのが」
純也さんが今一度、優しく問いかけてきた。彼としても、大切な彼女をあんな家の一員に迎え入れることにはまだ抵抗があったのだ。
「まだほんのちょっとだけ……。でも、純也さんが守ってくれるんだよね?」
「もちろんだよ。俺たちはあの家に同居することにはならないし、親族の集まりにも、どうしてもイヤだって言うなら顔を出す必要はない。二人だけでゆったりと新婚生活を送っていけばいいんだから」
「うん、それ聞いて安心した。じゃあ、わたしにはもう心配することはないよ。結婚してからも、作家業は続けてていいんでしょ?」
「ああ、もちろんいいよ。むしろ続けてほしいっていちばん思ってるのは俺だから。俺も作家・相川愛美の大ファンなんだからね」
「そうだったね」
愛美は彼のために作家になったようなものだった。
「どんな本を読んでも楽しめない」、六年前にそう言った彼に楽しんで読んでもらえるような本を書く。愛美はそう約束したのだ。
コメント
1件
わあ、ついにこの日が来たんですね……! ヘアメイクが終わった白いウェディングドレス姿の愛美ちゃん、純也さんの「すごくキレイだ」という一言にじーんと来ました。愛美ちゃんが学費を全額返済して、作家として自分の足で立ってから迎えた結婚式、という流れが本当に美しいなと。純也さんが「作家・相川愛美の大ファン」って言うところ、最高です。お互いリスペクトし合ってるカップル、とても素敵だと思います。
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