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「……これを、お前に見せたかったんだ。俺の親みてえなもんだからな」
「そうですよね……! 私もお会いできて嬉しかったです。連れて来てくださってありがとうございます、蛇珀さ」
ま、と言おうとして蛇珀を振り返ったいろりは思わず言葉を失った。
隣に並んだ蛇珀が、驚くほど真剣な目で見つめていたからだ。
仙界には下界にない美しいものがたくさんある。綺麗に生え揃った緑の苔も、泉である水鏡も、この神樹も。
しかし、どれもこの蛇珀の前ではただ霞み、引き立て役に徹するのみだといろりは痛感した。
「ありがとな、いろり。俺を待っててくれて」
蛇珀は、愛おしさの限りを尽くしたような優しさ溢れる微笑みをいろりに向けた。
蛇珀はすべてを知っていた。
苦行を終えた際、天獄よりいろりの状況を伝えられたからだ。
自身が苦行に出てから、雨の日も風の日も毎日欠かさず無事を祈るため神社に参拝していたことも、百恋の誘惑を容易く拒絶したことも、人前では気丈に振る舞いながら夜な夜な涙に暮れていたことも——。
「い、いいえ! わ、私は本当に、な、何もできなくて、ただ、待っているしかできなくて……」
蛇珀の渾身の笑みが眩しすぎて直視していられなかったいろりは、顔を真っ赤にして視線を泳がせ、両手の指を弄《いじ》った。
上野文
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