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「恋愛相談…?」
晴明に呼び出された道満、朱雀、暗。部屋には凛太郎と晴明もいた
「うん。若人の将来のためさ。…暗くん、だっけ?君は『恋愛』って言ったら心当たりあるんじゃない?」
「…あれ?」
「あれや」
図らずとも凛太郎との以心伝心に成功した暗だった
「どういうことだ?」
「えっと…勝手にいろいろ言って良いんですか?」
「確かにそうなんだけどさ…ね?」
「…そうですね」
「ちょっと〜?放置〜???」
「…えっと」
「わかった待て、それ以上言うな。…そういうことか」
「え、あっちゃん?」
「黙ってろ」
「わーいつも通りの氷点下塩対応」
「…待て、暗。お前…」
「…申し訳ありません」
「前出かけた時に妙に親しげだったのはこういうことか」
道満は、以前仲直りの記念兼飯綱の回復祝いとして遊びに同行していた。朱雀は当然パチンコに消えた。その時、妙に晴明は暗と目配せをしていた。…無意識で?完璧超人と気の使える人間だ。なんとなく通ずるものはあったのだろう
「で、また遊び行くのか」
「え!マジで?!」
「お前は留守番だ…!」
朱雀のパチンコに使われたのは、もちろん道満の金であった。翌日、冷蔵庫に隠していたへそくり(飯綱把握済)が消えていたのだ。額は十万。この調子では、道満のへそくりが消える事になる
「道満、どう映った?」
「…諦めた方がいい」
「…」
「わかってんだろ?…飯綱は、絶対に幸せになろうとしない」
裏社会に幸せなんて。普通そんな考えに至るはずだ。しかし、多かれ少なかれ個人個人で自分なりに幸せを見つけて生きている。明なんかはとても良い例だ。
飯綱が幸せになろうとしないのは、ただどこまで求めれば良いのか分からないのだ。守りたいもののために力を発揮することもあるが、逆にそれが足枷になったりもする。幼少期の経験からだろう。求めすぎれば、いざという時不幸になる。その現れが敬語だろう。一定の距離を保とうとする。幸せになりすぎないように。暗さえも、一線をひいて接している。そして、今回のような相手は、飯綱が苦手とするタイプだ
「ひとつきく。この答えによっては俺は降りる」
「え、」
「あっちゃん?!」
「…じゃあ、可能性あんのかよ」
「それは…」
「…晴明。その、荊棘か。人殺したことあんの?」
「…ない」
「決まりだ。俺は降りる」
「…ワケを聞いても良いかな」
「飯綱が、何人殺してきたと思ってる」
「…ああ、そういうことか」
「え?どういうこと⁇」
「…生きてきた世界が、違うんだよ」
「なに、それ…」
「荊棘姉ちゃんの生きてきた世界が太陽の当たる世界なら、僕らが生きてきたんは陽の光なんて当たらん世界なんや。…飯綱くんは、もっと深く、暗いとこで生きとったっちゅうことや」
「絶対、飯綱が手を取ることはない。諦めろ」
「随分だね…君が、彼を戻ることのできない闇」まで引き摺り込んだのに」
「…そうだな」
引き摺り込んだからこそ、責任を取るべきなのも分かってる。だからこそ、そんな長々苦しめる必要はない。きっと、カタがつくまで飯綱は悩み続ける。自分の想いに蓋をしようと傷つき続ける。だったら、いっそのこと終わらせてやった方がいいのでは、というのが道満の考えだった
「俺は無闇に苦しめたくないんでね」
「それは、君の考えだ」
「ああ。でも、お前よりは分かってる」
「あ、じゃあ、お見合いします?」
「「は」」
険悪なムードの中、声を上げたのは晴明だった
「見合い…?」
「結局、ここでの論争なんて本人いないんだし。本人の意思は正確に汲み取れないと思うんです」
「で?」
「急かさないで〜…。えっと、それで、双方親睦を〜的な感じで道満さんからいって貰えれば、飯綱くん断らないと思うんです。そんな感じで、良い感じの雰囲気を作ろうというわけです!!」
「…」
人の使い方が上手い。これも血筋か…
「というか、なんでそんなにくっつけてえんだよ」
「え、いや、人生楽しんで欲しいでしょ」
「…」
まるで君もでしょ?と断言し切っているような晴明の態度には押し黙るしかなかった。
「子煩悩が…」
「君に言われてもな…」
「んだよ、なんか文句あんのか?」
「開き直った…」
「あ?」
「…で、どう?」
「やるのか?」
「僕は全然」
「…わーった。一回だけだからな」
「あの、できれば全力で辞退したいです」
「…頼むって」
「なんか賭けとかしてます?」
なんとも言えない。賭けと言えば賭けだが賭けじゃない。ほんの少しでもボロを出せば、確実に勘付かれる
「いや…ま、体裁だ」
「体裁…」
「俺らと晴明達は、かなり大きな組織になる。建前上、なんの条件もなしに示談…ま、同盟だな。それが成立したとなれば、次は我先にと擦り寄ってくる奴らも少なからず出てくる。だから」
「確固たるものであると示したい…と」
「…形式だけ、みてぇな感じだから」
「…」
「断りたきゃ断りゃいいし、受けんなら受けろ」
「断ってきます」
「…かわるかもしれねぇぞ?」
「断ります」
「断る宣言でたが」
『うそ…。…荊棘は、嬉しそうだったけどな…』
「どーすんだ。このままじゃ…」
飯綱が出て行った後、道満は晴明と連絡をとっていた。どうやらあとは飯綱らしい
「ったくこうも面倒なもんか、え?想い告げりゃあ終わんのに…」
『飯綱くんに当たってどうするの』
「…」
想いを告げて終わり。できないようにしたのは自分だろう。しかし、終わらせてやりたい気持ちさえ、自分の都合でしかない。実際、見合いの相手を告げた時に視線を逸らした。。飯綱の癖として照れると視線を逸らす。本人も気づいていたのか、最近では視線を逸らさなくなった。しかし、逸らした。つまり、かなり意識してはいるのだろう。なればこそ、応援してやりたい気持ちが勝ってしまう
『とにかく、当日飯綱くんの本音を出すのが最優先だ』
「…そうだな」
『道満、分かってると思うけど、』
「なら言うんじゃねえ。…分かってるから」
「ったく…聞いてたんだろ、朱雀」
「まぁね〜。ただ大分拗らせてんね、あれ 」
「…だな」
「別に…あっちゃんのせいじゃないでしょ」
「違う…俺のせいだ」
飯綱が幸せを手放しはめたのは、いつからだったろうか。いつから、自分の感情を押し殺しながら生きてきたのだろう。なんで、もっと早く気づけなかったんだろう
「…明日になればわかるんじゃない?」
「…」
「飯綱はちゃんと、物事はっきり言う子じゃん」
「…」
「だいーいじょぶだって〜ってことで金貸して」
「あ”?」
感動していた自分がバカらしく思えた道満は、ジャーマンスープレックスをきめ、朱雀の頭をかち割った
「…」
「普段スーツ着てんじゃねえか」
「勝手が違います」
「そう変わるか?」
「もうすぐつきますよ」
「…何分後?」
「この信号変わって左に曲がったら」
「嘘だろ…」
よほど嫌なのか、いつになく弱気だ
「あー…変わった…」
信号がかわると、飯綱は全力で全体重を背もたれに預けた
「つきましたよ」
「はー…。まじか…。うん。行ってくる」
「…はい。頑張って…?ん“ん”!!いつもの飯綱くんで大丈夫ですよ」
「…うん」
「俺も同じ建物にはいる。大丈夫だ」
「はい…」
先ほどまでとは打って変わって背筋を伸ばし建物に入っていく飯綱。を見送る2人
「不安しかねえ…」
「飯綱くんの選択に委ねましょう」
「…だな」
「では、僕はこれで。…何時間後がいいでしょうか」
「…1時間くらいじゃねぇか?」
「…料理を食べて出てくると?」
「飯綱だぞ」
「…」
「…素直に告ってくれりゃぁいいけどな…」
「じゃ、あとは2人で楽しんで」
一通り(形式上)紹介をすませ、晴明と道満は退出し、部屋には飯綱と荊棘のみとなった
「えと…」
「追加で頼んでいいですよ。俺たちで払うので」
「いや…コースだけでいいかな…」
「…なら好きに過ごしててください」
「あ、うん…」
「(気まずい…!なにを話せばええんや…!)」
料理も、もうデザートである。ずっと、互いに無言で食べ続けていただけだったのだ。 全くもって会話が弾まない。ここに晴明でもいればポンポン会話が弾むだろう
「えっと、」
「無理しなくていいですよ。…建前、ですし」
「無理なんかは…!…建前でも、こうやって飯綱くんと話せるの嬉しいんよ」
「…そうですか」
「えっと…」
「断っていただいて結構ですので」
「…飯綱くんは、嫌?」
「そうですね。…そもそも、俺は貴方と関わっていい人間じゃないんです」
「え…?」
「俺がナニしてたかなんて、知ってるでしょう?…そういうことです」
殺しのことを言っているのだろう。飯綱の顔から表情が削ぎ落とされた
「それでも、うちは、…っっっうちは、君のことが…大、好きや…///」
「…はっきりいって、俺はどうでもいいです」
「っ…!」
「俺は、興味ありません」
「なんで、きてくれたんです…?」
「建前です。でもなきゃこんなことしませんしきません」
飯綱の言葉は、ただただ荊棘の胸を抉っていくだけだった。会えて、話せて、嬉しかっただけなのに。荊棘の想いは、何一つ飯綱にはひびいていなかった
「そう、やわな…」
「…」
流石に言いすぎたと思ったのか、黙る飯綱
「…飯綱く」
「話は以上です。失礼します」
食べ終わったのか、足早に部屋を出て行った飯綱。1人残された荊棘は、1人泣いていた
「…飯綱、見なかったか?」
「いえ…部屋に入ったっきり見ていません」
「てか、ここにもいなかったよー?」
見合いから帰宅してすぐ、飯綱は部屋にこもった。マジで飯綱はご飯を食べて帰ってきた。飯綱が部屋にきた時はビビった。そして、晴明から荊棘の様子をきき、顔を顰めた。なので、飯綱に流石にやりすぎだ、と言うことで話そうと部屋に行ったが、飯綱はいなかった。探し回ってはいるが、全く見つからない。携帯も部屋にあったため、今回GPSは使えない
「マジでどこ行った…」
「あっちゃん、心あたりとかないの〜?」
「心当たりなんざ…あったらとっくにさがして…」
いや、1つだけ行っていない
「…出てくる」
「え、ちょ、あっちゃん?! 」
「どこにもいないんだろ?なら…大丈夫だ」
道満には、絶対の自信があった
「…お願いします」
「やっぱここにいたか」
「…道、満さん」
飯綱がいたのは、きたばかりの頃、(勉強から)脱走した飯綱がよくいた花畑だ。ここで隠れて泣いているのも知っている。どうやら、心配をかけないように家族の前では泣かないようにしていたそうだ。毎回、連れ帰るのに苦労した。全く泣き止まないのだ
「お前は、弱ってる時ほどここにいるからな」
初めて任務で重傷を負った時も、ここで見つけた
「…」
「聞いたぞ…やりすぎじゃゃねぇのか?」
「別に…」
「いいや、やりすぎだ。泣いてた…いや、泣いてるらしいぞ」
「…。そうですか」
「…お前の、考えって、聞いてもいいか?」
「別に…なんでも…」
「なんでもねぇのに、ここにいんの?」
「…」
飯綱が膝を抱えて座った。話してくれるようだ。ただ、質問してきて欲しいらしい
「…好きじゃ、ないのか?」
「…好き、だから俺と関わっちゃダメなんです」
「なんで」
「…俺は、汚れすぎてる」
「っ…それも承知で、来てくれたんだぞ?」
「…もしかしたら、俺のせいで不幸になるかもしれない。…いや、不幸に、してしまう」
「そんなこと、ねえだろ」
「あるんです」
「…なあ、後悔は、ないのか?」
「っっ…」
「あんじゃねーか…」
「…いいんです。これは、しまっとくものだから」
「飯綱… 」
思ったよりも、大分拗らせていた。どう、接してやればいいのだろう。道満は、恋人なんてものをつくったことはないので、何もアドバイスをしてやれない
「…ごめんなぁ」
「え?」
気づけば、謝っていた。何に対しての、謝罪だろうか。厚かましくも、父親の代わりのようなことをしている事にだろうか。ここまで、傷つけてしまった事にだろうか
「道満さん?大丈夫ですか?」
「(ああ…そうか)」
こいつは、誰かのために動ける人間なんだ。誰かの、守りたいもののためになら、命さえかけるだろう。誰よりも、荊棘に好意を抱いたからこそ、遠ざけたのだ。嫌われれば、それで終わると踏んで。自分の感情を押し殺して、自分から遠ざけた。好きな人間を自分で遠ざけるのは、どれほどのものを伴うのだろう。その痛みを抱えて、生きていくことがどれほど苦痛だろう。道満は、口が裂けても同情するような言葉なんてかけられなかった
「…飯綱、はさ、」
「?」
「もしこんな血に濡れた世界じゃなくて、もっと…陽のあたる場所で出会えてたら、…お前は、彼女と歩むか…?」
「…さぁ。どうでしょう」
どこまでも、お前は…
ピリリリッリ
「ん?」
「…どうぞ 」
「悪い…。朱雀…?どうした?…。凛太郎が、きてる…?、…ああ。は、飯綱?いるけど…ってそうか、姉か…。ああ…。いや…今の飯綱には、…いや、そうか…っておい、大丈夫か?…は?今いるところ…?」
教えていいのだろうか
「かまいません」
「あー花畑、わかるよな?…ああ。いつものだ…って切れた…」
「…」
「…おい、」
「はい」
「…いつでも、頼れ」
「…はい」