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コメント
2件
tgちゃん優しいなぁ🙌🏻 prくん心配してんの優しい この尊い空間を目の前で見てみたい
『あなたが優しすぎるから』
Tg視点
その日の放課後は、少し空気がざわついていた。
校舎裏で声が聞こえる。
「やめろよ!」「痛っ……!」
ちぐさはその声に、すぐ反応する。
(だれか困ってる……!)
迷う時間は一秒もなかった。
ぷりっつなら止めただろうけれど、
今ちょうどここにはいない。
「やめてよ!!」
校舎裏に飛び出すと、
中一の男子が二人、
ひとりの子の鞄を奪っていた。
「なんだよ急に」「関係ねーだろ!」
「返してあげてよ!!」
ちぐさが前に出る。
身体は小さいけど、目はまっすぐだ。
だが――
ちぐさが鞄をつかんだ瞬間。
「邪魔すんな!!」
押し返された勢いで、
ちぐさは地面に転んだ。
掌がアスファルトに擦れて、
ぱっと赤い血が滲む。
「っ……い、たい……」
それでも立ち上がって、
泥だらけの膝でまた前に出る。
「その子……泣かせないでよ……」
震える声。
それでも曲がらない。
男子たちが一瞬たじろいだその時――
「――ちぐ様!!」
鋭い声が割り込んだ。
校舎の影から走ってきたのは、
息を切らしたぷりっつだった。
スーツの上着が風を切る。
目はいつもよりずっと鋭い。
「ちぐ様……!お怪我を……っ」
転んだちぐさに駆け寄り、
両手をそっと取る。
血。
擦り傷。
泥。
ぷりっつの顔が青ざめる。
「……申し訳ありません。私が……もっと早く迎えに来ていれば……」
声が震えていた。
怒りじゃなくて、
怖さが混じった震え。
その震えを見た男子2人は、
ぷりっつの雰囲気に圧されて逃げていった。
「ちぐ様……なぜ……なぜ危ない場所に一人で入られたのですか……!」
「……誰か困ってたから……」
ちぐさは痛む手を胸に抱えながら、
でもしっかり答える。
「ほっとけなかった、から……」
その言葉に、
ぷりっつの眉が震えた。
「……ちぐ様は優しすぎます」
「そんなの、ぷりちゃんだって同じでしょ……」
「いいえ。私は……あなたが傷つくぐらいなら、
優しくないほうがええと思ってます」
その声音には、
いつも隠している感情が混じっていた。
ちぐさは瞳を揺らす。
「……ぷりちゃん……?」
ぷりっつはゆっくりとちぐさを抱き寄せ、
傷ついた手を両手で包み込んだ。
「お願いですから……」
かすれた声。
「これ以上、俺を……怖がらせないでください」
その一言に、
ちぐさの心臓が跳ねる。
(……ぷりちゃん、そんな顔……したこと……)
怖がらせたくない。
でも、助けたかった。
気持ちが揺れる。
そして――
ぷりっつの口が
「ちぐ様……」
と言いかけて、
その続きは――
言われないまま、風に消えた。
夕日が沈む。
影が伸びる。
2人の距離が、
この日を境に大きく変わっていく。
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