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『何があっても守りたい』
Tg視点
「――ちぐ様!!」
風を切って走る音。
地面を踏みしめる力強い足音。
そのすべてが、ちぐさの胸に飛び込んでくる。
「ぷり……ちゃん……?」
涙をこらえながら見上げた先で、
ぷりっつの顔は見たことないほど険しかった。
彼はちぐさの前に立つと、
落ち着いた声で少年たちに言う。
「――その子から離れてください」
その声は低く、静かで。
なのに背筋がぞくりとするほど強かった。
「な、なんだよお前……!」
「通りすがりの者です。ですが……」
ぷりっつの目が細くなる。
「ちぐ様に触れたことだけは、見過ごせません」
少年たちは怯んで後ずさりし、
ひとりが鞄を蹴るようにして投げ返した。
「も、もういいよな!?ほら!」
鞄の持ち主の子が駆けてきて、それを拾う。
ぷりっつが軽く会釈すると、少年たちは逃げるように走っていった。
その背中が見えなくなった瞬間――
ぷりっつは振り返って、
膝をつくようにちぐさの前へ。
「ちぐ様……手を……見せてください」
震えていた。
声も、手も。
「だ、大丈夫だから……!」
「大丈夫やあらへん!!」
久しぶりに強めの関西弁が漏れた。
驚いたように目を開くちぐさ。
ぷりっつは反射的に口をつぐんで目を伏せる。
「……失礼いたしました。ですが……」
ちぐさの手を、
まるで触れたら壊れる宝物みたいに
両手でそっと包み込む。
擦りむいた掌が赤く染まり、血がにじんでいた。
「こんな……こんな怪我……っ」
絞り出す声が震えている。
(ぷりちゃん……泣きそう……?)
「ちぐ様に……痛い思いをさせてしまった……
俺は、専属執事として……失格です」
「ち、違うよ……!ぷりちゃんのせいじゃないよ……っ」
ちぐさは慌てて顔を上げて、
傷のある手でぎゅっとぷりっつの袖を掴む。
「俺が勝手に助けようとしただけだもん……
ぷりちゃんは、悪くない……!」
その必死な声に、
ぷりっつは息を飲む。
ちぐさの瞳が揺れていて、
泣きそうなのを必死で堪えているのが分かって。
「……ちぐ様」
ぷりっつは耐えきれず、
そっとちぐさの膝の泥を払ってから
抱きしめるように肩を寄せた。
「ほんま……心臓止まるか思いました……」
低い声が耳元で震える。
(……そんなに、心配してくれて……)
胸がぎゅっと痛くなって、
ちぐさは小さくしがみついた。
「……ごめんね、ぷりちゃん」
「謝らんでください。
俺は……ちぐ様が無事で、それだけで……」
そこまで言って、
ぷりっつはふっと口を閉じる。
“それだけで”のあとに続く本音を
飲み込んでしまったから。
だけど――
その二人の姿を、
少し離れた校舎の角で見つめている人がいた。
あっと。
拳を握りしめて、でも無理やり笑って。
(……やっぱり、敵わないなぁ)
決して口にはしないけれど、胸の奥がきゅうっと痛む。
ちぐさが泣きそうに笑って、
ぷりっつだけを頼ってしがみついている。
それを見たとき、
あっとはようやく理解した。
(ちぐが向いてるのは……ずっと、ぷりっつ先輩なんだ)
そして。
ぷりっつはちぐさの耳元で、
震える声でそっと呟く。
「……俺が、守らせてもらいます。
どんなに、ちぐ様が無茶しても……」
「うん……」
その返事は、
大きな夕陽に照らされて、ゆっくりほどけていった。
主従の境界がふわりと溶けていく。
気づけば、もう元には戻れないほどに。
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コメント
2件
tgちゃんのことが大切すぎるprくんがなんか可愛い(?) やっぱ尊いなぁ💕