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一通の手紙が届いた。差出人は不明。皺だらけの茶封筒に押し込まれるように紙が詰められていて、それを取り出し皺を伸ばしてようやく手紙だと認識できる代物だった。
__隣人の嫌がらせか。
親や友人と縁を切ってからというもの、18で東京に出てきた自分に、手紙を寄越す相手なんて居ない。何よりも、富士見台の壁の薄いボロアパートに住んでいるものだから、物音がうるさいと隣人からクレームがきたばかりで、この茶封筒は隣人の嫌がらせ以外考えられない。
いっそ、この茶封筒と手紙を読まずに捨ててしまおうかと思ったが、7割の得体の知れない手紙への恐怖心は、3割の純粋な好奇心に負け、結局手紙を開くことにした。
【 拝啓 様 】
__自分の名前だ。読むのに苦労するほど崩れた字は、小さな子供が書いたのかと疑うほどだ。
かさり、と紙がかさなる音がした。そこでようやくこの手紙が何枚も重なっている事に気づく。
六畳一間の部屋に窮屈に置かれたベットに寝転がる。開けっ放しの窓から、ホオジロの鳴き声が響いていて、今はそれが煩わしく感じる。
手紙を開いた。
それは、心の奥底にしまっていた遠い記憶を思い出させる、懐かしい思い出だった。
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