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あの日、約束なんてしていなければ失うことはなかったのかもしれない。
そんな救いのない〝もしも〟を頭の中で幾度も繰り返して
熱でどろどろに浮かされた甘い蜂蜜に縋るように苦いコーヒーを垂らしていく。
思考が麻痺して琥珀色が濁り、渦を巻いて溶かされる。
「それでも……まだ諦められない」
目には、目を。毒には、毒を。
押しつけられた面倒ごとには、ちょうどいい首輪をつける。
気味の悪い薄暗い廃墟の中、汚い地面で意識を失っている男どもを冷ややかな目で見下して深いため息を吐く。
「この……ックソガキ!」
ああ、まだ一人いたのね。
「そのクソガキにやられてんのは、てめぇだろ? クソ野郎」
声を低くして口調の荒い言葉を吐き出す。
「あんま吠えんなよ。みっともねぇな」
倒れている男達の間を縫って物凄い形相で迫ってくる赤髪のヤンキーを一瞥する。
……気分の悪い髪色ね。最悪だわ。
身を屈めてそいつの拳から逃れ、握りしめたバットを突き上げると、それは見事に男の腹に入った。
「ぐぇっ!」
汚らしい濁った声に顔を顰めて、バッドの先を地面にガツンと叩きつける。
「はー……うざったい」
『椿様! お怪我は? 大丈夫ですか?』
右耳に付けたイヤフォンから甲高い声が聴こえ、眉根を寄せた。
「声大きすぎ。大丈夫、終わったから」
心配性なんだから。私が負けるわけないじゃない。
「お前……」
あ、まだ意識あったのね。 力加減が甘かった。
「本当に小学生かよ……っ」
……小学生ねぇ。
勝手にそっちが言っているだけなのだけど。
「っなんの目的でヤンキー狩りなんてしてんだよ!」
あぁ、うざい。貴方なんかに言う必要ないわよ。
でもまぁ、気まぐれに一つ教えてあげようかしら。
「スマホを借りるため」
「はあ!?」
意味がわからないわよね。
それでいいのよ。スマホさえ借りたら貴方に用なんてなくなるから。
怪訝そうな男を見下し、黒いキャップ帽のツバを下げて口元を歪ませる。
見事な阿呆面ね。
「じゃ、ちょっと寝てろよ。クソ野郎」
男の腹に勢い良く蹴りを入れて、意識を失わせる。
さて、邪魔者もいなくなったし、サガシモノをしましょうか。
この街にはヤンキー狩りをしている小学生の少年がいる。
少年に会ったヤンキーは意識を失うまで痛めつけられる。
そんな都市伝説みたいな変な噂がある。
その少年の顔を見た者は誰もいないという。
<お嬢様の犬たち>