「行ってほしくない」
遠くでピアノの音がする。
優しくて落ち着いた、耳に残る儚い音色は、以前聞いたことがあった。
たしか―――。
強い喉の渇きを覚え、続いてこめかみに鈍い痛みを感じた私は、ゆっくり瞼を開けた。
体は重く、頭も働かない。
見慣れない部屋にいることだけはわかり、記憶をたぐり寄せたけど、昨日バーで飲んでいた先のことは思い出せなかった。
(えっ!?)
青ざめつつバッと布団をめくると、昨日着ていた服を着ている。
記憶のないうちに、なにかやらかしたわけではなさそうなのにはほっとしたけど……でもここは―――。
額を押さえながらあたりを見れば、広さ20畳ほどの部屋にいた。
天井までの高さの本棚が壁一面にあり、パソコンデスクが部屋の隅に置かれている。
ほかにある家具は今私がいるベッドくらいしかなく、どう考えてもここはホテルじゃない。
(だれかの……家?) ***************
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