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黒い水の中で私は首だけになって沈んでいた。
どうやら死後のようだったのだけれど、何かがおかしかったのである。
今まで見たもの、聴いたものが水面にゆらゆらと映像として映っているのだ。
走馬灯なのだろうか?走馬灯だとしても、死にとても近くなった時しか見れないって聞いた事あるけど…。
じゃあコレは一体何なのだろうか?
産まれて物心のついたの私を抱き抱える父。
離乳食を与える母。
不格好な平仮名を手紙にクレヨンで書く私。
父に連れられ母と別れる日。
小中高で虐めを受け続けた私。
「あ……。」
私は声を漏らした。
(懐かしい)
不意に込み上げてきた感情は、少し歪だった。
私は虐められていた頃の映像を今は無い手で触ろうとした。
すると目の前が真っ暗になり、私は困惑した。
だが直ぐに冷静を取り戻した。
私は瞼を閉じていただけだった。
目を開けると懐かしい教室の景色と懐かしい顔ぶれが目に飛び込んできた。
『さっきのリレーさぁ、芽依が転けたから3位になったよね?』
金髪の女性が見下しながら嘲笑う。
『お前ヒョロいんだから見学してろよ。うちらが負けるじゃん。』
金髪の女性の隣に居た茶髪で長髪の女性が、私の頭を教科書で打った。
私は激しい痛みで頭を抱える。
『はいはい、可愛い可愛い。』
椅子を蹴飛ばして私をこかすブレザーの女性。
『てかこいつ臭くね?ちゃんと風呂入ってんのかよ?ww』
『洗ったげる?w』
『いーじゃんいーじゃん!じゃトイレ行こ!汚れ落とせるいいとこだし!』
私の腕を無理やり引っ張るポニーテールの女性。
トイレに突き飛ばすと、茶髪の女性がデッキブラシを取り出し
『みーちゃんはいこれ。うちホース取ってくる』
するとみーちゃんと言われる金髪の女性は
『いーよいーよ、こいつには大腸菌だらけの便器の水がお似合いでしょ?』
みーちゃんと言われる女性はデッキブラシを便器の中の水に浸すと
『こんなんに清潔な水使うの勿体ないってww』
デッキブラシで私を叩き付けた。
『そりゃそっか〜www』
ゴシゴシ身体を洗う。
私が咄嗟の痛みに、痛い痛い!!と言うと
『きっしょ』
溝落に耐え難い打撃を食らい、過呼吸になりながら溝落を抑える。
涙ぐむ私に
『顔真っ赤じゃんw』
『まるで豚だねwww』
とゲラゲラとみんなで指を指して嗤いだした。
私は涙で滲む目を必死に擦り、トイレから逃げるように走り出した。
『うわウザ!!!』
遠くから響く金髪の女性の声に震えながら家まで逃げ帰った。
家に帰ると母がたまげた顔をして
と駆け寄ってきた。
私は高校生ながらも大声で泣きじゃくった。
その日の夜中だったな…。
私が学校に鞄を忘れた事を思い出し、私は夜中だと言うのに何を思ったのか、全速力で学校まで走った。
学校まで着いた所でゼーハーゼーハーと息を整えている最中だった。
遠くから夕暮れのように赤く染まる空。
街全体に響くようなサイレン。
嫌に気味の悪い感触と何気に感じる嫌な予感。
私は競歩で家まで戻った。
家の近くには野次馬の人だかりで前へ進めなかった。
いや、進みたくなかったのかもしれない。
だって自宅が燃えていたのだから。
警察の方々からは、巷での連続放火犯か模倣犯の反抗との両面から捜査中との事。
『大丈夫です。必ず犯人は私達警察が捕まえます。』
いっぺんに全てのものを失った次の日、学校の屋上に呼び出された。
ああ…この時だったなぁ。
この時、行かなければこんな事にはならなかったのにな。
『家が全焼しちゃって家族みんな死んだんだってねww』
金髪の女性達がクスクス笑いながら言う。
『もう何処にも居場所ないんでしょ?』
クスクス
『なら死ねばいいじゃん。』
私は1歩後退ると後ろから足で蹴っ飛ばさ、鉄柵に頭を打ち付けた。
胸倉を掴む金髪の女性。
そのままどんどん柵から外へ投げ出そうとする。
最後の抵抗だと思い、離そうとする手を掴み下へ引っ張る。
その時には既に吹っ切れていた私はキャキャキャキャキャと高笑いしながら引きずり落とす。
落とされる最中も金髪の女性はなにか叫んでいたが、他の3人は彼女を助けもせず慌てていた。
鈍い音と同時に激痛が走り抜け…死んだ。
目が覚めるとあの部屋に監禁されていた。
あの日が初めての参加だったよね。
私は月一で参加させられていたが何故今まで生き延びていたのかは定かでは無い。
私の推理力も、捜査意欲も、こんな事をしていたら自然に身についたのだろう。
1人勝ち、あの3択問題を選び、記憶喪失で毎回違う病院の病室に運ばれ目覚める。
私はやっと上がれたんだ。
やっと死ねた。これでもう…参加しなくていいんだって、殺さなくていいんだって開放感に包まれた。
加奈子ちゃんと出会ったあの1回だけが、私の心を正義に導いてくれた。
でも本当にごめんなさい。
まだ私…ダメみたい。