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MOMO🩲
ひな
104
けだま15号🍓🐾໊
6,356
夕鳴
128
花びらが黒く染まる。
一枚。
また一枚。
風に舞う桜の花が。
まるで焼け焦げるように。
色を失っていく。
少女の顔から笑みが消えた。
「来ちゃった」
小さな声。
怯えている。
本当に。
心の底から。
旅僧が護符を握る。
「何がです」
少女は答えない。
代わりに。
空を見る。
月は雲に隠れている。
だが。
何かがいる。
誰も見ていないのに。
確かにいる。
そんな気配。
その時だった。
村の花が一斉に萎れた。
白い花。
赤い花。
紫の花。
全て。
一瞬で。
命を吸われるように。
枯れていく。
旅僧の顔色が変わる。
「何ですか、これは!」
墓守が低く呟いた。
「奪われている」
静寂。
「花じゃない」
風が吹く。
「想いだ」
鐘撞きが顔をしかめる。
お師さんも同じだった。
知っている。
この現象を。
昔。
何度も見たことがある。
そして。
少女は桜へしがみ付いた。
必死に。
失いたくないものを守るように。
「駄目」
掠れた声。
「これは駄目」
花びらが舞う。
黒く。
冷たく。
死んだ花びらが。
空を埋める。
その時。
佐衛門が歩き出した。
少女の前へ。
桜の前へ。
旅僧が慌てる。
「葛城殿!」
「下がっていろ」
静かな声。
佐衛門は桜を見る。
黒い花を見る。
そして。
空を見る。
長い沈黙。
やがて。
「怒ってるな」
静寂。
「誰がです?」
佐衛門は答える。
「知らん」
風が吹く。
「だが」
一拍。
「泣いてる」
その言葉に。
少女が顔を上げた。
佐衛門には。
笑顔の奥にあるものが見えていた。
その時。
桜の幹に亀裂が入る。
バキ。
小さな音。
だが。
少女の顔から血の気が引いた。
「やめて」
静寂。
「お願い」
初めてだった。
花守が懇願したのは。
今までずっと。
笑っていた。
悲しみを隠して。
だが今は違う。
本当に必死だった。
そして。
桜の中から声が聞こえた。
『どうして』
静寂。
旅僧が凍り付く。
少女の声ではない。
もっと大勢。
何十。
何百。
何千。
重なった声。
『どうして』
『どうして』
『どうして』
桜の根元。
墓。
その下から聞こえている。
花守が震える。
涙を堪えるように。
「やめて」
「聞かないで」
その時。
佐衛門の頭に。
また景色が流れ込んだ。
春の日。
花畑。
泣いている子供。
抱き締める少女。
『大丈夫』
知らない声。
だが。
懐かしい。
『私が守るから』
静寂。
佐衛門の呼吸が止まる。
その声。
その言葉。
何故か。
胸が痛む。
そして。
花守が呟いた。
「約束したのに」
風が吹く。
涙が零れる。
「帰ってくるって」
静寂。
「約束したのに」
旅僧は何も言えなかった。
目の前にいる少女を。
ただ見ていた。
その時。
空が裂けた。
ゴォォォォォン――。
鐘ではない。
世界そのものの悲鳴。
全員が顔を上げる。
雲の向こう。
巨大な瞳が。
ほんの僅かに開いていた。
そして。
旅僧の札が燃えるように輝く。
新しい文字が浮かぶ。
『花守は欠片に非ず』
静寂。
全員が固まる。
墓守ですら。
息を呑む。
そして。
続く文字。
『遺された者なり』
風が止んだ。
誰も。
言葉を発しなかった。
花守だけが。
桜の幹を抱いたまま。
静かに泣いていた。
コメント
1件
わあああ読んだ読んだ!!第十六話の「黒花」、もう心臓ギュッてなったよ😭💔 花守の少女が桜にしがみついて「お願い」って懇願するところ、ずっと笑顔で隠してた本音が一瞬で溢れ出した感じがしてエモすぎる…。しかも「泣いてる」って佐衛門に見抜かれるシーン、胸にくるものがあるよ…🌸✨ そしてラストの「遺された者なり」の一文、重すぎて何も言えなくなった。旅僧の札に浮かんだ文字、伏線回収っぽくて興奮した〜!毎回詩的な文体と静寂の間が美しくて、もうLoneさんの世界観にどっぷり浸かってるよ🌸💕次話も全力待機してるからね〜!!