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MOMO🩲
ひな
104
けだま15号🍓🐾໊
6,356
夕鳴
128
『遺された者なり』
札の文字は消えない。
風の中で。
血のように。
いや。
花びらのように。
静かに揺れていた。
旅僧は札を見る。
花守を見る。
そして。
墓守を見る。
「どういうことです」
掠れた声だった。
「封印者ではないのですか」
墓守は答えない。
代わりに。
花守を見ていた。
懐かしそうに。
悲しそうに。
そして。
申し訳なさそうに。
やがて。
小さく口を開く。
「違う」
静寂。
「この子は」
風が吹く。
「俺達が守ろうとした側だ」
旅僧の顔色が変わる。
守ろうとした。
二十四人が。
命を懸けて。
封印を施してまで。
その時。
花守が首を振った。
「違う」
涙を拭う。
「そんな立派な話じゃない」
風が吹く。
「私は」
桜を見る。
満開だった花は。
もう半分以上が黒く染まっている。
「ただ」
一拍。
「置いていかれた」
静寂。
旅僧は言葉を失う。
花守は笑った。
寂しそうに。
酷く寂しそうに。
「皆、行っちゃった」
「お父さんも」
「お母さんも」
「村の人も」
風が吹く。
「お姉ちゃんも」
その言葉に。
佐衛門の胸が軋む。
まただ。
知らないはずの痛み。
知らないはずの記憶。
それなのに。
消えない。
花守は続ける。
「だから待った」
「帰ってくるって言ったから」
桜の幹へ触れる。
優しく。
まるで家族に触れるように。
「ずっと」
静寂。
「ずっと」
風が吹く。
「ずっと」
その時だった。
佐衛門が歩いた。
一歩。
また一歩。
花守の前へ。
旅僧が息を呑む。
佐衛門はしばらく黙っていた。
長い沈黙。
そして。
ぽつりと聞いた。
「腹は減ったか」
静寂。
旅僧が固まる。
お師さんが顔を覆う。
鐘撞きが吹き出す。
墓守まで肩を震わせた。
花守だけが。
きょとんとしている。
「え?」
「聞いてる」
佐衛門は真面目だった。
「腹は減ったか」
花守が瞬きを繰り返す。
そして。
初めて。
本当に初めて。
笑った。
悲しみではない。
作り笑いでもない。
子供らしい笑顔。
「減った」
小さな声。
「凄く」
佐衛門は頷く。
「そうか」
一拍。
「なら飯だな」
当たり前のように言う。
花守の目から涙が零れた。
ぽろぽろと。
止まらない。
「変なの」
泣きながら笑う。
「お姉ちゃんも」
旅僧が固まる。
花守自身も固まった。
口に出してから気付いたのだ。
今。
自然に言った。
お姉ちゃん。
その瞬間。
佐衛門の頭に。
一つの記憶が流れ込む。
夕暮れ。
囲炉裏。
幼い少女。
泣いている。
『お腹空いた』
その言葉に。
若い少女が笑う。
『そうか』
懐かしい声。
優しい声。
『じゃあ飯だな』
静寂。
佐衛門の呼吸が止まる。
それは。
今。
自分が言った言葉だった。
風が吹く。
花守が泣いている。
佐衛門も動けない。
だが。
記憶は。
もう一つだけ。
戻ってきた。
その時。
空の瞳が大きく開いた。
ゴォォォォォ――。
世界が震える。
桜の花が一斉に黒く染まる。
花守の顔色が変わった。
「駄目」
静寂。
「思い出しちゃ駄目」
旅僧が振り返る。
花守は震えていた。
「だって」
風が吹く。
「お姉ちゃん」
涙が零れる。
「また行っちゃうから」
その言葉と共に。
桜の幹が大きく裂けた。
バキィッ――。
中から。
何かが出てこようとしていた。
コメント
1件
うわあああ第十七話読み終わったよ…!!😭💕💕 佐衛門さんの「腹は減ったか」、あのタイミングであの一言が出てくるのズルすぎない!?花守ちゃんが「お姉ちゃん」って口にした瞬間の記憶フラッシュバック、胸がぎゅってなったよ…「また行っちゃうから」って涙の意味がもう切なすぎて無理だよ😢💔 それで最後あれ!?桜の幹から何か出てきそうになって終わり!?やばいやばい次が気になりすぎて夜しか眠れないんだけど!!Loneさんエグすぎる、もっと読ませてください!!🌸✨