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kaede🍁
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目黒が目を開けると。
まだ夜は明けていなかった。
薄暗い寝室。
腕の中を見ると、阿部はもう目を覚ましていた。
「……あべちゃん」
目黒の腕に少し力が入る。
「体調どう?」
「……さっきよりいい」
「よかった」
目黒は安心して、阿部の背中を優しく撫でた。
「顔色悪いし、起こしても全然起きないし、心配した」
「連絡してくれればよかったのに」
阿部は申し訳なさそうに目を伏せる。
「しようと思ったんだけど、スマホ見るのもしんどくて」
「それならなおさら連絡して」
「……うん」
目黒は阿部の額に手を当てる。
まだ心配だった。
「朝になっても具合悪かったら病院ね」
今度は何も言い訳せず、阿部は素直に頷いた。
「うん」
___________
少しすると阿部がぽつりと言った。
「めめ、夢に出てきた」
目黒は笑いそうになるのを堪えた。
「何してた?」
「俺のこと倒した」
「……何その夢」
全部知っている。
けれど、何も知らないふりをして阿部の話を聞くのが、思った以上に楽しかった。
「俺、魔王だったから」
「あべちゃんが?」
「世界を平和にした魔王」
「魔王向いてないね」
「俺もそう思う」
二人で小さく笑う。
「モンスター倒して、人間と仲良く暮らせるようにして……結構頑張ったんだよ」
阿部の表情が少しずつ曇った。
「途中から夢が覚めなくなって」
「俺、死んじゃったのかなって怖くなった時に……」
阿部が目黒の服を掴む。
「めめが助けに来てくれた」
その姿が愛おしくて仕方なかった。
阿部は何も知らない。
それが少しだけ可笑しくて。
ものすごく幸せだった。
___________
「夢の中のめめに言われた」
「帰ったらお仕置きって」
目黒は阿部を抱き締めたまま、少しだけ笑った。
前の魔王との約束を思い出す。
――一週間、あべちゃんが恥ずかしくなるような甘い言葉をかけ続ける。
目黒の手が阿部の頬に触れた。
少し好奇心が湧く。
「どんなお仕置きがいい?」
阿部が固まった。
「本当にするの?」
「だって夢の俺が言ったんでしょ?」
「……優しいやつ」
「具合悪いから」
阿部は目黒へぎゅっと抱きついた。
そして小さな声で言う。
「今は離れないで」
「……。」
目黒は思った。
――天使。
――前の魔王。
ありがとう。
「じゃあ朝まで俺から離れちゃダメ」
阿部が目黒を見上げる。
「それ、お仕置きになってないじゃん」
「俺が決めたからいいの」
「……変なの」
そう言いながらも阿部は離れなかった。
むしろ目黒の胸元へ顔を埋める。
「ちゃんと守ってね」
「分かった」
「朝までだからね」
「うん」
阿部の声はもう眠そうだった。
目黒は背中をゆっくり撫で続ける。
しばらくすると。
阿部の呼吸が少しずつ穏やかになっていった。
眠りに落ちる直前。
目黒は耳元へ顔を寄せる。
「……あべちゃん」
「ん……?」
「体調治ったら、ちゃんとしたお仕置きしようね」
閉じかけていた阿部の目が開いた。
「……まだあるの?」
「あるよ」
「今日ので終わりじゃないの?」
「一週間くらい必要かな」
「なんで一週間……?」
目黒は答えなかった。
ただ。
楽しそうに笑った。
「めめ……?」
「おやすみ、あべちゃん」
「絶対なんか隠してる……」
「気のせいだよ」
「怪しい……」
眠気には勝てなかったらしい。
阿部は目黒に抱きついたまま、再び目を閉じた。
暗い寝室に。
目黒の小さな笑い声だけが響く。
夢から覚めても。
目黒のお仕置きは、まだ始まったばかりだった。
コメント
1件
お疲れ、みらさん!第6話読んだわ。 夢の中の話と現実のリンクがすごくいいなと思った。阿部ちゃんが「魔王だった」って話すシーン、こっちは「知ってるよ」ってなるのに本人は夢だと思ってる感じが切なくて可愛い。ラストの「一週間くらい必要かな」って目黒の笑顔、絶対企んでるやつだし続きが気になる!二人の距離感がじわじわ縮まってて、見ててほっこりしたわ。お仕置きって言いながら結局優しいの、ずるいよね(笑)