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有限な命と生きた時間
第56話
起きてから半年。アニカを助けてから五ヶ月。ソフィーと再開してから一ヶ月半。
僕は、魔法をかけてもらって、かなり早く骨も直ってきている。
もうそろそろで、僕の三十歳の誕生日。
偶に、お見舞いに来てくれる二人だけど、暇では無い。ソフィーだって、侍女の仕事があるし、アニカだって、ここの領主として色々と頑張っている。
僕も、歩けるけど、鍛錬はドクターストップされている。
それと……
『勇者様〜!』『外では、春風が気持ちいです』『今度連れていきたい所があります』
と妖精が僕の周りでわちゃわちゃしている。
……昔から変な動物に好かれるんだよな。
「僕が復帰したら、遠くで見守ってるだけにしてね。他の人には見えないんだから」
『『『はーい』』』
……この、はーいは信じていいのだろうか?
僕は歩く足を止めて妖精に言い聞かせた。
「というか、何の妖精なの?」
『名前は無いんだけど、サンコウの木って言う木の主に遣えてる妖精』
「そっか」
そう言って僕は妖精の頭を撫でて足を進めた。
数日後の夜。
僕は久しぶりにサンコウの木に来た。花は満開で光の力に満ちている。
僕は泣いてしまった。この日、ここで、僕が覚悟を決めた時の事を思い出したから。
『大丈夫。いるからね』
そう言うロザンナの声が後ろから聞こえた。
嘘っ……
後ろを振り向くと透けたロザンナがいた。
触れようとしても触れられない。
ロザンナの他にもマルコさんやシルビオさんまでいる。
誰にも触れならない。
「ごめんっさい……僕が、僕がっ……ちゃんとしてればっ、皆は生きてたはずなのに……」
『そんな事は無い。ロルフは十分過ぎる程頑張った。俺なんて、小さな子供二人と妻を置いていったんだぞ。ちゃんと話して楽しく過ごしたかった……』
マルコさん……
『私だって……お姉様も、お父様もお母様も……皆、生きてるのに、私は置いてきぼりにしてしまったもの……』
ロザンナ……
『俺だって、フリオも街の皆だって、待ってるはずなのによ……こんなザマだったら笑われるよな』
シルビオさん……
三人とも、僕の心を癒す魔法のような言葉をかけてくれている。でも、それを自分で、攻撃の言葉になってしまっている。
それは、僕の所為だ。勿論、分かってる。
「ごめんっなさい……ごめんなさい……僕だって、力になれったはずなのに……皆にっ迷惑ばかり……」
いくら謝っても、許されない。それは分かってる。
だけど、溢れてくる。今まで殺してきた感情が。
僕は子供のように声をあげて皆に泣きついた。いつの間にか、体に触れるようになっていた。多分、光の力のお陰だろう。
「皆っ……また、あの頃のようっ、に戻って平和に暮らしたいっ……なのっ、僕が全てっを……崩したからっ……」
『平和に暮らしたい……それを思ってるのは、皆、同じ。でも、ロルフは辛かったもんね……』
「アニカもっ、ソフィーもっ……傷つけて、何もできなくてっ……それで皆を失って……もうやだ……」
『だから、俺たちの分まで生きろ。そして、頑張りを紡ぐんだ。それに、ロルフが崩したんじゃない。俺たちの責任でもある』
「やれたはずなのに……見えたはずなのに……何でっ……」
『無理が過ぎてたんだ。だから、強くなれた。だけど、大切な物も見落としてしまう』
「それに、ロルフは、ちゃんとやってくれた。私の事を命をかけてまで、守ってくれた。何でそんな事をいうの……?」
そう言うアニカの声が聞こえた。
「ひめっさま……なぜこっに……」
思い出したら、僕はきっと居れない……いや、僕の我儘なんだけど……
「ごめん。私も、思い出せた。これ、あの時の……遅くなってごめんね……うわぁーん。ごめん」
そう言って僕にアニカが抱きついてきた。
もう……嫌だ、あと、もう少しだけ一緒に居たかった……だけど、もう失望されて白い目で見られる……
「僕の事っ……呆れっません? 一緒にいっの嫌じゃ……」
「そんな事無い! ここにいる皆だって、私だって、ロルフは大切だもん……何で、そんっ、事思うの?」
『そうだ。ロルフは俺たちがどんな姿になろうと、大切な仲間だ』
皆……
「それと、お誕生日。おめでとう」
僕はさっき差し出されたプレゼントを受け取った。
そうだ。三十歳になったんだ……
「ありがとう。少し、落ち着けた……」
『おめでと~』『勇者様は今日だったの?』『メモしないと……』
妖精たちもわちゃわちゃしている。
三人には見えるみたいだけど、アニカには見えない。
多分、光の家の血が全く混ざっていないのだろう。
三人は一応、幽霊だし、僕は光の力があるし、妖精も勝手に入っていくんだよな。
「一緒にいてくれますか?」
「うん! 勿論!」
アニカは明るく頷いた。
コメント
1件
うわあ、このエピソード、胸に来ました…。ロザンナたちが幽霊になって現れて、ロルフの罪悪感を一言一句否定せずに「ちゃんとやった」「頑張った」と認めてくれるのが、読んでいてじんわり沁みました。アニカが遅れて記憶を取り戻して「ごめん」と抱きつくシーン、あれでようやくロルフが許しを受け入れられるんだろうなって思いました。妖精たちのわちゃわちゃも、重くなりすぎない絶妙なアクセントになってて良かったです。サンコウの木の花が満開の夜、という舞台設定も綺麗でした。