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第57話
あれからアニカは寝落ちして四人で話している。
アニカは僕が膝枕してる。
……うん。普通に恥ずかしいよね……
でも、それどころじゃないし……
「四人とも……夢じゃないんだよね……」
『そうだな。でも、見えるんだろ? それは、力のお陰か?』
「多分……他の人の前にいたらどうなるの?」
『誰一人、目を向けなかったよ。何だか、生きてる人と話せるの久しぶり』
あの時、気づければ……
『ロルフは頑張ってるからな。そこは勘違いしないでくれ……フリオも気づいてくれないんだよな……』
そうシルビオさんが言うと皆の顔が暗くなった。
『ニコラだって……目の前に行っても全く……』
『ビタリもレーナも俺の顔なんて、覚えてないだろうが、反応して欲しかったな……』
「僕も、無視しちゃってた……?」
『ロルフは気づいてくれたよ。話しかけたら直ぐに聞こえたし』
『あぁ、そうだ』
「ありがとう。皆かそう言ってくれると嬉しい」
僕は微笑んだ。
それから少し話していると途中で記憶がボヤケてきて、多分、寝落ちした。
僕が眠い目を開けると朝日が昇っていて、隣にはアニカがいた。
ん? 添い……いや、違う。違う事にしておこう。
体は重くて起き上がりたくなかった。
熱っぽくて、頭も痛む。
周りを見ると、皆はもういなくて、少し寂しかった。
「んんっ……ん? だ、れ……?」
アニカは寝ぼけているのか、僕の頬を一撫でしてからまた目を瞑った。
え? いやいや……夢だと信じよう。
「んっ……って! えぇ!」
そう言ってアニカが飛び起きた。
……うん……何も、見てない。見てないよ。
「姫、様……おはようございます……」
「顔色が悪いよ。それに……熱いよ。休んでて」
いや、そういうわけには……
「そんな、甘えた事をしては示しがつきません……城まで歩きます」
僕はとりあえず起き上がって方角を確認した。
このくらいなら、大丈夫。
「嫌。ロルフの傷ついた姿なんて……もう見たくない」
いや、やっぱりここにいるべきじゃない。
「……どこからどこまで、思い出したのですか?」
「昨日は、ロルフの十四歳の誕生日の事。洞窟に預けて、封印した時……」
「もう一回聞くけど、嫌にならないのですか? 僕見たいな護衛なんて……こんな、守るべき人も守れないような人なんて……」
「そんな、責めないで。私は、そのままのロルフと一緒にまた……笑い合いたい」
そう言ってアニカは微笑んだ。
僕は反射的に微笑んだ。
「とりあえず、城に戻らないと、姫様も風邪をひいてしまいます。姫様。帰りましょう」
僕はアニカに向けて手を伸ばした。
「うん!」
明るく頷いてアニカは僕の手を取った。
帰ってから僕はいつも通り、部屋で勉強をしていた。
プレゼントは万年筆だったようで大切にしまっている。
でも、何だか、少しぼんやりする。
「ロルフ。入るよ」
そう言ってアニカが入ってきた。
「ほら、休んでて。顔色が良くないし、ロルフってあまり、顔に出なくなっちゃったからもっと気を付けないと……」
そう言われながら、ベットに押し込まれた。
アニカ……
「倒れたら、そもそもだよ。ロルフは、自分の立場を分かって……お願い」
「姫様……昔のように倒れたりしません。僕だって、三十歳にもなって自己管理が出来ない程、ダメ人間ではありません」
「でも……どうしても心配なの。ロルフは気付いたら、もう断崖絶壁に立っているんだもん……」
そんなじゃなかったし……
「安静にしてて。ご飯は侍女に持ってこさせるから。私も会議が入っちゃったからここまでかな。お大事にね」
そう言ってアニカは部屋から出ていった。
✡
お兄ちゃんが体調不良と聞いた日の夜。
「ソフィー。愛してる」
そう言う彼の声が私の鼓膜を優しく震わせた。
「私も、ティモの事愛してる」
ベッドの上で私の体はティモが包み込まれている。
一ヶ月後。
私は妊娠してる事が分かった。
ティモに話すと嬉しそうに私を抱きしめた。
お兄ちゃんにはまだ言っていない。というか、結婚してるのも言っていない。
とりあえず、プレゼントを贈ってから全く顔を合わせていない。
「……って事なんだけど……」
「おめでとう!」
アニカが私の両手を掴みながら笑顔で祝福してくれた。
「ありがとう。でも、お兄ちゃんには、まだ言えなさそうかな……」
「ロルフに? じゃあ、私は口止めされる?」
「うん。ごめんね」
「大丈夫だけど……つわりとかも大丈夫なの?」
「そんなに酷くは無いんだよね……少し食欲は減った気がするけど……」
「そっか。でも、応援してる」
アニカが蔓延の笑みで私の事を撫でた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。第58話、読み終えました。 膝枕で寝ちゃうアニカと、それを恥ずかしがりつつも受け入れるロルフの距離感がすごく好き。でも「無視しちゃってた…?」ってロルフが自分の罪悪感と向き合うところ、胸が締め付けられたよ。シルビオさんたちの「生きてる人と話せるの久しぶり」って台詞が切なくて…。 最後のソフィーの妊娠報告、アニカが祝福する流れが温かかった。でもお兄ちゃんにまだ言えないっていう複雑さも、ちゃんと刺さった。この作品、闇と優しさのバランスが絶妙だよね。次も静かに読みにくるね🌙