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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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オイル 近道 保志


「徹くんーー!! 大丈夫か!!」

徹くんの声がする円筒形の鉄の下にあるガラス窓を覗く。かろうじて徹くんの顔が見えた。

「おじさん!! 良かった!! でも、ぼくは閉じ込められたんだ! 早く出して!」

「わかった! ちょっと待ってろよー!」

この鉄の円筒形の中に徹くんが閉じ込められているんだ。靴が煙を上げているけど、今はそれどころじゃない!

さて、どうやって助け出そう? このガラス窓を開けるには? いや、ガラス窓は小さすぎるか……?

うーん……?

よし!

多分、ここからじゃ見えないけれど、天井へ向いているこの円筒形の鉄は、きっと空気を入れるために上は穴が空いているに違いない。だから何とかして倒してみよう。

「よーし、 待ってろよ徹くん! すぐに助けるから少しの辛抱だ。この鉄の筒を倒してしまうから、身体を固定させていてくれ!」

俺は助走を掛けて思いっきり鉄の筒に体当たりした。肩が痛いが、鉄の筒は少しグラついた。やった!

後は、両手で押して……。


鉄の筒が倒れた。

「ワッ! 痛いよ! おじさん! それに熱い!」

「え?! なんでだ?!」

鉄の筒の上は穴が空いていなかった……。

「マズイぞ!!」

「熱い! 熱い!! おじさーん!!」

「早く! 早く助け出さないと!!」

俺は半狂乱になって、鉄の筒の至る所を工具箱から取り出したドライバーで叩いた。

「おじさん! 耳が痛いよ!」

「待っててくれ! 今は少し我慢だ! よーっし! ここだけだな!」

鉄の筒の底に取りつけられたガラス窓の四方に、幸いネジが付いていた。やはり、ここが空気穴だ。けれど、空気穴というよりも、穴はここしか付いていない。ドライバーで、ネジを慎重に取り外さなければいけなかった。俺の靴からの煙はモウモウと上がり、床の熱は耐えがたいが、俺も我慢の時だ。

やってやるぞ!

幸運なことに、プラスドライバーしか持っていなかったが、プラスはネジにぴったりと合った。少しゆっくり回してネジを取り外す。また、誰かが、電力を上げやがった!後ろから電力の急激に上がる音が伝わる。熱の性質は伝導。放射。対流だ。だから、すぐには床が熱くはならない。

大丈夫だ!

よし、三本のネジを取り外したぞ!

「……」

「徹くん?」

やばい! 急がないと!!

「やったぜーーー! 取れたぞ! よし! 徹くん。足元から出るんだ! 君の身体が柔らかいことを祈るぞ!」

開いたガラス窓から徹くんが、抜け出して来た。額にびっしょりの汗を掻いているけど、健康そうな赤い顔だった。

「徹くん! 大丈夫か?!」

「……うっ……」

徹くんは目をゆっくりと開ける。

「よし、徹くんはおんぶだな」

「おじさん?」

「よっこらしょ」

ちと、きついが。工具箱もしっかり持って、さあ、変電所だ。電気床の上を走る。靴の煙がモウモウと立ち上り方が強くなってきた。俺ももうすぐ……。噴出する汗をそのままに、走る。変圧器。遮断器。断路器。計器用変成器。避雷器。と複雑なミニ変電所へ辿り着いた。電気工事士の仕事仲間から聞いたことがあった。あの時は、たんなる興味でよく聞いていたけど、こんな時に命が助かる事になんてな……。でも、この場合はミニ変電所のサーキットブレーカーだな。

ええと、ブレーカーを上げればいいのかな?

あ、ブレーカーを入りにすればいいんだったな!

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