テラーノベル
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レンコン 煮付け
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「文也っ!!」
反射的に竜馬は声を上げて文也を突き飛ばした
船の上にはガソリンの匂いが充満していた
―ドカーーーン―
爆音と共に真っ赤な炎が、飢えた獣さながらに竜馬を吞み込んだ
炎の勢いに押され、よろよろと竜馬はよろけ、腕で顔を覆った
すさまじい熱さだ、喉と肺が焼ける、地獄のような炎を煙を吸いながら、早く自分も湖に飛び込まなければと考えた
そして次の瞬間
―ドカーーーーン―
再び爆発音と熱気がエンジンから噴き出して、竜馬は吹き飛ばされ、体が宙に浮いた
後頭部が固い鉄の船底に叩きつけられた、頭蓋骨が割れたのではないかと思った、衝撃は大きなハンマーに強打された時の衝撃に匹敵した
それでも無意識に転がって、消火栓に手を伸ばそうとしたが、全てが熱くて体が言うことを聞かない
呼吸をコントロールしようと息を吸うほど、うまく吸えない、もう疲れすぎてどうでもよかった、とにかく熱いフライパンで焼かれているみたいだ
―熱い、熱い―
目の前が炎で真っ赤だ、耳が痛い良く聞こえない、聞こえるのはゴーッゴーッと響く炎の音だけ
視界が泳ぎ
寄せては返す波のように、いろんなものが押し寄せては、去って行く
そして何もわからなくなった
.:・.。. .。.:・
.。.:・
意識とは不思議なものだ
こちらが感じていようといまいと、こうしてなんとなくぼんやりして・・・
まったくの無の状態から、なんとなく明るく真っ白の無の状態へと移行しようとしている
それからまた沈んで・・・
浮かび上がっていく
水面に漂う水草のように・・・
今の自分はふにゃふにゃだ
やけにあたたかくていい気分だと漂っていると、誰かが呼ぶ声がする
ほっといれくれ・・・
来世はくらげもいいなと思っていた所なのに、それか糸こんにゃく・・・
「こっち見ろよ、竜馬」
今まで何度も夢の中にジャスティンが現れたことはあったが、こんなにリアルなのは初めてだった
「ジャスティン・・・ジャスティンか?」
目の前のジャスティンが竜馬に微笑みながら、真っ白のシャツに美しい金髪を揺らしている
彼の見た目は、ちょうどマフィアの頃の彼で、まさしく竜馬の愛した、美しくて勇ましいジャスティンだった
「ああっ!!ジャスティン!!ジャスティン!!会いたかった!!」
竜馬はワーッとジャスティンに泣きついた、触れられずにはいられなかった、矢も楯もたまらず飛びつくと、ジャスティンが腕を上げて、しっかり受け止めてくれた
竜馬も18歳の頃の竜馬に戻っていた、ジャスティンの助骨がきしむほど必死で抱きつき、熱い涙を流し、何度も気が済むまで彼の名前を呼んだ
しばらくしてようやく・・・しがみついていた腕を離し、心持ち体を引いて、二人の間に少し隙間を作った
そして・・・目に幸福を与えるために、ジャスティンの顔を隅から隅まで眺めた
弧を描いた弓状の眉・・・あいかわらず綺麗だ・・・ロイヤルブルーの瞳は健在で、生命力に輝いていた
縦長の鼻の穴でさえ懐かしく・・・やはりジャスティンはどこのパーツを切り取っても、見ると幸せになるぐらい、とても美しい、竜馬はジャスティンを見つめて言った
「こうして・・・話ができるなら、僕も君の所に行く」
竜馬は想像した、甘美で楽な想像だった・・・そこでは何もかもが幸福に思えた、ジャスティンはただ優しく竜馬を見て微笑んでいた
「おバカな竜馬・・・俺の体は無になったんだからもう無いよ、お前はまだ無ではないだろう?」
竜馬は驚いて尋ねた
「変じゃないか、こうして話し合えているのは、ジャスティンの世界に僕が来たからなんだろう?」
ジャスティンは優しく微笑んで、竜馬の心臓の横をツンッ・・・と指した
「いるじゃないか、お前の心の中に」
「・・・そうなの」
「記憶も意識も実在するんだよ、お前が俺を愛してくれているから、俺はお前の心の中に存在として、自由に行き来できる」
竜馬の頬を優しく触るジャスティンの手はとても暖かい・・・これが本当に無なんて信じられない
「だから・・・竜馬・・・お前が不幸だったら俺も不幸だ、お前が幸福だったら俺も幸福なんだ、幸福になるって約束してくれるかい?」
「わかった・・・」
ジャスティンの言葉が直接竜馬の脳からつま先まで響いて染みた
とても心地が良い・・・
.。.:・
「竜馬とは・・・いつでも会えるから・・・今は生きて出来ることをしなくっちゃ、つまらないだろう?」
.。.:・
光が雨のように降ってくる
その中で二人は回った、まるでメリーゴーランドだ、ジャスティンの髪もシャツも揺れている
「そうだね・・・」
二人はフフフフと笑った
「聞こえる?竜馬」
ジャスティンが言った
「・・・何も聞こえないよ?」
竜馬はあたりをキョロキョロ見ました
「耳を澄ませて・・・竜馬・・・よく聞いて」
ジャスティンが光の玉になって消えて行く・・・
.。.:・
途端に光の世界がぐわんっとゆがんだ、周囲がすべて真っ白だ
まるでマトリックスの世界だ、天使の羽の羽ばたきのような、やわらかい音がしたが、やがてそれも聞こえなくなった
―あの声を聴いて・・・お前を呼んでるよ・・・―
.。 .:・.。. .
.。 .:・
「・・・ま・・・さん・・・」
「竜馬さ・・・ん」
「竜馬さんっっ!!」
.。 .:・.。.
コメント
1件
わあ……もう本当に心臓が痛いです。爆発の生々しい描写から一転、竜馬さんがジャスティンと再会するシーンは涙なしでは読めませんでした。「幸福になるって約束してくれるかい?」って言葉が、全部を物語ってますね。これからどうなるんだろう……続きが気になります。素敵な話をありがとうございます。