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#どうか楽しんでください
春の風が吹きつけるとき 、
私は絶望に満ちていた 。
出会いの季節と言うはずなのに
私には別れしかやってこない
鈴宮 結生
16歳
1ヶ月前
東北の3月はまだまだ寒く 、
今にも雪が降りそうだった 。
そんな中で1人 、家出少女の私が空を仰ぐ 。
息を吐けば白い二酸化炭素が出ていき
生きていることを主張している様で嫌気がさす 。
三日三晩宛もなくただ歩き続けて辿り着いたのは海だった 。
『 ここで死のう 』
そんな考えがふと頭を過ぎる 。
思い付きを否定するよりも先に
体は海へ向かっていた 。
気がつくと浜辺に立って水平線を眺めていた
やること全てが無意識だった 。
今度は自分の意思で足を動かし海に近付く 。
東北の海の波は荒く
あと数歩でのみ込まれてしまう 。
「 海へ行くのですか 」
いきなり現れた声に驚き動きが止まる 。
声の元へ振り返ると
そこには真っ白な少年が居た 。
色白で白い髪色に白い衣服
全てが白で染っているのに対し
瞳だけが赤色だった 。
あまりにも姿が美しいので数秒見とれてしまう
するとその子が不思議そうに頭を傾けたのを見て
質問されていたことを思い出す 。
「 あ 、えっと 、うん … 」
『 死のうとしている 』
なんて素直に言えず
曖昧な返事しか出来なかった 。
もっと上手い返しをしたら良かった
と少し後悔する 。
しかし男の子はそんなこと気にしてないと言うように
目を見開いた後 、嬉しそうな顔をして
「 では海が好きなのですね!
良ければ海に行く前に 、僕の話を聞いてくれませんか? 」
と 、楽しそうに言った 。
なんだか勘違いされた様な気がしたがそれはいい 。
そこまではしゃがれると拒否もしにくく
渋々OKを出してしまった 。
ここからの計画が少し遅れを摂ることとなった 。
近くに落ちていたどこからか流れ着いた木の上に座り
話を聞くことにした 。
「 52Hzで鳴く鯨って知ってますか? 」
そう言っていきなり語り始めたのは
悲しい鯨のお話だった 。
「僕 、鯨が好きなんです 」
中々珍しいことを言うな 、と思った 。
男の子だとサメや 、釣りが好きならマグロや鯛などと言うと思っていた 。
正に私の弟もそうだったから 。
「 物珍しい者を見たという顔をしてますね 」
と言って彼は笑っていた 。
心を読めれたのかと思い
少し恥ずかしく 、顔が熱くなるのを自覚する 。
「 自分でも分かっています 。
でも 、鯨には悲しい話があるんです 。」
彼が言うには
52Hzで鳴く鯨がいると言う 。
だがその鯨の声はあまりにも高く 、
仲間には届かない 。
世界一孤独な鯨と呼ばれているらしい 。
「 なんだかその鯨に親近感を覚えたんです 。 」
思わず
「 え? 」
と声が出た 。
“ 親近感 ”という言葉が妙に頭に残る 。
彼の方を見ると
微笑むだけで何も言わなかった 。
その雰囲気に気圧され
思わず黙りこくってしまった 。
静かな空気が私たちの間に流れる 。
彼はずっと孤独だったのかもしれない
なんて勝手な憶測で
自分勝手に寂しくなる 。
そんな私とは裏腹に
彼はいきなり明るい声で言った 。
「 だから僕 、鯨に会ってみたいんです! 」
あまりにも非現実的にな言葉に私は戸惑った 。
ただの夢物語だろうか
私の2回り程小さい男の子が
広すぎる海のどこかに“ いるかもしれない ”鯨1匹を探すのは笑えない冗談だった 。
しかしそれは彼も自覚していた様で
「 でも 、無理です 。
まともに泳ぐことも出来ない僕だから 。」
なんとも寂しい理由だった 。
いくら励ましてあげたくたって
「 君ならできるよ 」
なんて身勝手なことは言えなかった 。
「 だから貴方に声をかけた!
きっと 、貴方なら出来ると思ったから 」
それは自信に満ち溢れた声音だった 。
信じて疑わないと言いつけてくる目線に
何故か胸が締め付けられる 。
彼が憧れる海に飛び込み自殺しようとしていた私は
なんと言っていいのか分からなくなる 。
それでも 、嘘はつけないと思った 。
「 ごめんね 。私 、泳げないんだ 」
あからさまに驚き 、ショックを受けた様子を見て何だか申し訳ない気持ちになる 。
「 そうですか … 。
じゃあ 、もう少しだけ僕の話を聞いてくれませんか 」
この願いを蔑ろにしては行けない気がし 、
引き受けることにした 。
その後 、彼は海や鯨の話を切羽詰まった様に話し続けた 。
息をするのも忘れるくらい夢中になって続けるので
私がストップを出し中断させた 。
「 すみません 。こんな話誰も聞いてくれないからつい楽しくなっちゃって 、」
息を切らしながら言ったセリフに
また胸がチクリとする 。
サラッと流すように言った彼の言葉が
私にはとても重いことの様に聞こえた 。
この子にとっては流して言ってしまうくらい当たり前のことなのだろうか 。
「そういえば
お名前 、なんて言うんですか? 」
ここでお互いについてなにも知らなかったことを思い出す 。
それまで普通に会話できていたことがおかしいと思う 。
「 結生 。結ばれて生きるって書いて 、結生 。」
行った後に聞かれてもいない漢字まで答えてしまったことに気付き恥ずかしくなる 。
けれど彼はそんなこと気にしていないと言うように
「 結生 、結生さん … 」
と私の名前を何度も口にする 。
その後また
「 いい名前ですね! 」
と元気よく言われ小っ恥ずかしくなる 。
「 ありがとう 。君は? 」
話すことが苦手な私は
どうしても緊張して冷たく 、短く話してしまう 。
そんな自分が嫌になる 。
「 僕は 、ルカです 。」
ルカ君 、と私も口に出してみる 。
響きのいい名前に好感を持った 。
「 ルカ君は何歳なの? 」
ずっと気になっていた 。
私より明らかに小さいが 、タメ口が失礼だったらと心配だった 。
「 14歳ですよ 」
「 え 、中2? 」
「 まあ 、はい 」
安心する反面 、思ったよりも年下で驚いた 。
大人びた話し方のせいで
勝手にもう少し上だと思っていた 。
自分より下だと分かったからか
緊張がほぐれていくのを実感する 。
「 結生さんは? 」
「 16歳 」
それでもまだ言葉がスラスラと出てくる訳ではなく 、相変わらず端的だった 。
「 お姉さんだ 」と顔を輝かせはしゃぐ姿が
どことなく幼く見える 。
どれだけ大人っぽくても中身は子供だな 、
と当たり前のことに気付く 。
「 結生さんに聞きたいことが ––– 」
その後も私達は 、膨大な海の話を繰り広げ続けた 。
だがその時間にも終わりがあることを告げる様に 、5時の音楽が邪魔をした 。
「 … あ 、そろそろ帰らないと 、 」
そう言って立ち上がったルカに引かれる様に
私も腰をあげる 。
浜辺から道へ続く階段をのぼり
別れる時となった 。
「 そういえば結生さんは 、どうして海にいたんですか? 」
あ 、と思い出す 。
ルカに言われるまで忘れていた 。
今日 、自殺しようとしていたことを 。
でも 、もういいような気がした 。
ルカと話し 、久しぶりに私は笑った 。
いつぶりだろうと思う
ルカという光が 、
私の中の深い深い海底に届いた様な気がしたから 。
「 忘れちゃった笑 」
頭にはてなを浮かべるルカを見て
また笑う 。
ルカを 、手離したくないと思った 。
私の一筋の光を 、どこにも連れていきたくなかった 。
「 … ルカ 。明日もここで話そうか 。 」
藁にもすがる思いで言った 。
こんな私といて楽しくないことは重々承知の上で 。
そんな私の考えとは裏腹に 、ルカは一瞬顔を明るくした 。
でも 、次の瞬間には
どこか悲しそうな 、諦めた様な表情に見えた 。
「 そうですね 。是非 」
表情とは真逆の返答に戸惑う 。
ルカはそんな私にお構いなく
「 また明日 。」
次を約束した 。
ルカ
14歳
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コメント
20件
おーーーーん、、読切かと思ったら続くのね最高。こんなに透明感溢れるノベル他にないちゃむ‼️‼️‼️心情を言語化するの上手すぎ‼️‼️私の地元は5時の音楽なんてなかったんだけど、地元あるあるなの?
なんでさ全部こんなに綺麗な文字に出来るわけ❓❓❓❓ 52Hzって声高いよねめっちゃ知らんけど🥺 惚れたよ吐きそう
儚いの得意分野とか譲ってほしい ちょうど52Hzのクジラたちだっけそんな感じの映画気になってたのウチら通じあってるネ😽💖💖 ルカの声は他の人には聞こえなかったのに結生ちゃんには聞こえた説を推すと泣きそうになったので必死に目に力を入れてました