テラーノベル
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こんにちは!
書くことないんで本編どうぞ(^ω^)_凵
戦況は、誰の目にも明らかだった。
後戻りなど、もうできないところまで来ている。
夕暮れの基地。赤く染まる空の下で、三人は珍しく揃っていた。
「……静かだな」
陸がぽつりと呟く。いつもなら愚痴の一つでも飛び出すはずの場面なのに、その声にはどこか力がなかった。
「嵐の前の静けさ、ってやつだろ」
海は肩をすくめて笑う。けれど、その笑みもどこか作り物じみていた。
その二人の間で、空はただ空を見上げていた。
どこまでも広がる、逃げ場のない青を。
「なあ、空」
陸が呼ぶ。
「もし全部終わったらさ、何する?」
唐突な問いだった。
空は少しだけ考えてから、ふっと笑う。
「そうだな……もう一度、自由に飛びたい」
「今も飛んでるだろうが」
海が茶化す。
「違うさ。命令も、戦いも関係なく。ただ、風に乗って飛ぶんだ」
その言葉に、二人は一瞬黙り込んだ。
「……じゃあさ」
海が口を開く。
「その時は三人で集まろうぜ。海でも陸でも空でもなくてさ、ただの俺たちとして」
「いいな、それ」
陸が頷く。
「約束だ」
空が静かに言った。
三人は軽く拳を合わせる。
それは、子どもじみた約束だった。
――けれど、その約束が守られることはなかった。
⸻
翌朝。
空は一人、格納庫にいた。
整備された機体。静まり返る空間。
すべてが、これから起きることを知っているようだった。
「……時間か」
小さく呟く。
誰にも告げていない。告げるつもりもなかった。
これは、自分で選んだ道だから。
最後に一度だけ、昨日の光景が脳裏をよぎる。
――三人での約束。
「……悪いな」
そう言って、空は機体に乗り込んだ。
エンジンが唸りを上げる。
空へ向かって、一直線に。
その飛行に、帰還の予定はなかった。
⸻
数日後。
「……は?」
陸の声は、信じられないものを聞いた時のそれだった。
「だから……空が、出撃して、そのまま……」
報告の言葉は、最後まで言い切られなかった。
「嘘だろ……」
海が呟く。
「なんでだよ……!あいつ、何も言ってなかったじゃねえか!」
机を強く叩く音が響く。
陸は何も言えなかった。
いや、言葉が出てこなかった。
あの夕暮れを思い出す。
――「約束だ」
確かに、そう言ったはずなのに。
「ふざけんなよ……」
海の声は震えていた。
「勝手に約束破ってんじゃねえよ……!」
怒りなのか、悲しみなのか、自分でも分からない感情が溢れ出す。
陸は、ゆっくりと拳を握りしめた。
「……あいつは」
低く、絞り出すように言う。
「最後まで、“空”だったんだろうな」
どこまでも自由で、どこまでも遠くへ行ってしまう。
「……でもよ」
海が顔を上げる。
「それでも、俺たちは……」
言葉が途切れる。
続きは、もう言わなくても分かっていた。
三人で交わした約束。
それは、もう二人で背負うしかない。
外では、今日も空が広がっている。
あまりにも、何も変わらない顔で。
れもん
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