テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
れもん
2,187
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1話から見ることをおすすめします
数日後。
重い空気の中、陸と海は呼び出された。
机の上に置かれていたのは、小さな封筒だった。
「……これは、空が出撃前に預けていたものだ」
その一言で、すべてを察する。
陸はしばらく手を伸ばせなかった。
だが、震える指で封を切る。
中には、短い手紙が一枚。
乱れてはいない、あまりにも“いつも通り”の字だった。
⸻
『陸、海へ』
『たぶん、これを読んでるってことは、俺は帰ってないんだろうな』
『先に謝っとく。約束、守れなくて悪い』
⸻
海が思わず舌打ちする。
「……ほんと、最後まで勝手なやつだな」
だがその声は、明らかに掠れていた。
陸は続きを読む。
⸻
『でもさ、あの約束、嫌いじゃなかった』
『三人で、何にも縛られずに笑うってやつ』
『叶うなら、見てみたかった』
⸻
一瞬、沈黙が落ちる。
⸻
『陸へ』
『お前は背負いすぎるな。どうせ全部抱え込むだろうけどさ』
『少しは海に押し付けろ。あいつ、見た目より丈夫だから』
⸻
「余計なお世話だ……」
海がぼそっと言う。
⸻
『海へ』
『お前はちゃんと悲しめよ』
『笑って誤魔化すな。そういうとこ、昔から変わってない』
『……ちゃんと怒って、ちゃんと泣け』
⸻
海は何も言わなかった。
ただ、視線を逸らす。
⸻
『二人へ』
『俺はさ、最後まで“空”でいたかった』
『だから、この選択は後悔してない』
『でも――』
⸻
そこで、ほんの少しだけ文字が乱れていた。
⸻
『もし、少しだけわがままを言っていいなら』
『二人には、生きてほしい』
『どんな形でもいいから』
『あの約束の続きを、どこかでやってくれ』
⸻
陸の手が止まる。
最後の一文。
⸻
『またな』
⸻
短すぎる言葉だった。
けれど、それが別れだと分かるには、十分だった。
⸻
「……っ」
海が顔を覆う。
肩が小さく震えていた。
「ちゃんと……泣け、ってよ……」
絞り出すような声。
陸は手紙を静かに畳む。
「……ああ」
そして、空を見上げる。
どこまでも続く青。
もう届かない場所。
「……約束、か」
二人だけになってしまった約束。
それでも。
「守るしかねえだろ」
海が言う。
涙を拭いながら、それでも前を向いて。
陸は小さく頷いた。
⸻
空は、もういない。
けれど。
三人で交わした誓いは、まだここにある。