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地下室へと急ぐレンブラントの行先には、ゴーベル伯爵の配下と思われる者達が地べたに転がっていた。


『地下には偽花薬の製造場所があるそうです』


先程ユリウスの部下であるマインラートが話していた。そこにユリウスは一人で向かったそうだ。

もう一人のユリウスの部下であるカミルからは地下以外の屋敷内は隈無く調べ上げたと聞き、ティアナの事を簡潔に説明して彼女を見ていないかを尋ねたが、彼は否と答えた。ならば、彼女は地下室にいる筈だ。


地下へ続く薄暗い階段をランプの明かりを頼りに進んで行った。階段を降り切ると、少し気温が下がったのを感じた。

長い廊下をレンブラント達は、警戒しつつ駆けて行く。先程同様、ここでも地べたには伯爵の配下が幾人も転がっていた。

彼は一人でこの数を相手にしたのかと思うと、流石だと言わざるを得ない。


「レンブラント、気を付けろよ!」


やがて数メートル先に明かりが漏れているのが見えた。先陣を切っていたレンブラントの直ぐ後ろのヘンリックが、声を上げる。




「ティアナッ‼︎」


扉が破壊された部屋へと、飛び込む様にして入った。するとそこには細身で血色の悪い男が、ティアナを拘束し首元にナイフを突き付けていた。思わずレンブラントは叫ぶ。

その向かい側には、金を帯びた淡褐色の髪の青年が剣を構え鋭い翡翠色の瞳で男を睨んでいる。彼がユリウス・ソシュールだ。


「これはまた、参ったなぁ」


男はレンブラント達を一瞥すると、気の抜けそうな態度と声色、情けない表情を浮かべる。だがナイフを握る力を緩める様子はない。


「クヌート・メロー、観念しろ。貴様に逃げ道はない」


表情一つ変えないユリウスは振り返る事すらなく、レンブラント達に見向きもしない。その様子を見て、相変わらずだと思った。

学院生時代からそうだった。己の興味の対象以外は彼にとっては空気も同然であり、どんなに周囲がレンブラントとユリウスが好敵手だと囃し立てようが、レンブラントの存在すら無視をする様な人物だった。


「それはどうだろうね。君達が彼女を見殺しにすると言うなら、確かに逃げられないかな」


クヌートはそう言いながらティアナの首筋に向けているナイフをゆっくりと滑らせた。


「さて、どうする?」


身体を強張らせながらも声を洩らす事なく、静かに耐える彼女の首筋からは、赤い血が伝い流れる。その光景に血の気が引く感覚を覚えた。

そんな中、気丈さを崩さない彼女と目が合う。その瞳の奥が、不安気に揺れていた。


「ユリウスッ、剣を下ろせ!」


レンブラントは叫ぶが、彼は剣を構えたまま動く様子はない。視線はクヌートを見据えている。


(まさか、彼女を見殺しにするつもりなのか……⁉︎)


そう思った瞬間、今度は一気に頭に血が上った。そして気が付けば剣を抜き、ユリウスへ振り下ろしていた。


キーンッ‼︎ 部屋に剣と剣が擦れる音が響く。


「レンブラント、止めないか!」

「レンブラント! お前、何してるんだよ⁉︎」


クラウディウス達がごちゃごちゃと喚いている声が聞こえるが、興奮し過ぎて言葉として認識出来ない。

今は兎に角ユリウスをどうにかして抑え込む事しか考えられない。


「チッ……」


カッカッカンッ‼︎ 剣で打ち合う中、ユリウスはレンブラントを睨み付け舌打ちをした。










【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。

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