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ヒロシ宅(豪邸)の一室が面接会場。
走るパイプ椅子に腰をおろしたヒロシ。
その横にメイド長が佇む。
メイド二十号を採用すべく、面接を行なうことにしたヒロシ。
今日のメイド長は、自身の仕事をこなしている。
彼女の服は、仕事をしているようでしていない。
「メイド長、聞いていい? 仕事する気ある?」
黒い全身タイツの上に、V字サスペンダー型変態水着をつけている。
その見た目は、目立ちたがりの泥棒っぽい。
「俺の話きいてる?」
「次の方どうぞ」
ヘンタイ盗人メイド長が、ドアを開けた時だった。
『くの字』に体を曲げて高速回転した何かが、窓をぶち破って侵入してきた。
勢いあまって壁に突き刺さる。
高速ブーメラン王女(ベルティーナ)が、メイド採用面接に来たらしい。
「ピロすぃ~。お待たせっ!」
金髪のツインテールにピンクのメイド服。
短すぎるピンクのスカートから、ピンクのパンツがチラリと見える。
「って、王女やないかい!」
メイド長は、光の速さでハリセン(ベルティーナ・スレイヤー・マークⅢ ハミデール王国コラボモデル)を振り下ろす。
メイド長の身のこなしは、息をするかのように自然だった。
やっぱり壊れるベルティーナ・スレイヤー。素材はオリハルコン。
びくともしないベルティーナの頭。
壁に刺さったブーメラン(王女)が、ボトリと落ちる。
王女のホクロから、シュワっと噴き出る炭酸水。
「ベルティーナさまは、なぜ土だらけなのです?」
「地雷を踏んできました!」
「騒がしいと思ったら、やっぱりおまえかい!」
メイド長が、諦念した様子でベルティーナのホクロを押下する。
「あのね、こっそり裏から入ろうとしたのだけれど……なんかね、ズラ? 地雷? がフィーバーしたぞっ!」
ベルティーナは、ひとつ残らず踏んでしまったらしい。
「もはや、ベルティーナ・ホイホイですね……」
地雷を設置したメイド長は、うすら笑い。予定通りといった満足気な顔だ。
全部踏んだのかよ……。
外が騒がしいと思ったら、やっぱりドピン子だったか……。
対ベルティーナ用に、ヒロシが仕掛けておいた五十個の地雷。
ヒロシがおもむろに電卓をはじく。
「ドピン子。ハリセンと窓と地雷は弁償しろよ」
美顔ローラーで顔をコロコロしていたヒロシが、ひとこと告げた。
「ガッテンですっ!」
ベルティーナはガッツポーズを決め込んだ。
「ヒロシさまは、やけに落ち着いていますね」
メイド長が、予備のベルティーナ・スレイヤー(二本目)を準備する。
隙あらば、ベルティーナをぶん殴ろうとしている。
「変なのが来る予感がしてたからね……」
「変ティーナじゃないぞっ! わ、私は……バルセロナ・ローラーキャスター、以下省略……」
「王女さまがお帰りだ。メイド長、玄関まで見送ってあげて」
「帰らないぞっ! メイドの土産に面接をうけに来たんだぞっ!」
「王族がメイドの面接に来ちゃダメでしょうがぁ!」
メイド長は、ベルティーナ・スレイヤーを振り下ろす。
やっぱり壊れるベルティーナ・スレイヤー(本日二本目)。
ベルティーナの表情は変わらない。
ホクロから噴き出る炭酸水。今度はレモン風味。
柑橘系の爽やかな香りが、室内を満たす。
やはり、今日はカレー汁ではないようだ。
「炭酸水? 砂糖入ってんの?」
「ヒロシさま。そういう問題では……」
予備のベルティーナ・スレイヤー(本日三本目)を準備するメイド長。
「二十四時間ピロシにぴったり張り付けるって聞いてきたのだけれど……」
「ベルティーナさま。ここはストーカーの面接会場ではありません。サボテンで殴りますよ?」
「ピロシ。面接を始めてちょーだいなっ!」
「ヒロシさま、王女の顔に落書きして土にぶっ刺しても?」
メイド長は、「プリンセス……」とブツブツ言いながら、ベルティーナの顔面に落書きをしている。
物足りなかったのか、王女の鼻の下に、チョビひげも描きはじめた。
王女の額に書かれた文字『プリングルスvsチップスター』、チョビひげを見つめながら、ヒロシがぼやく。
なんで対決? いや、長くね? 何味のポテチ?
というか、一文字で良くね?
「ところで、ヒロシさま。この“チョビっとひげ王女”、どうします?」
「面接でもしてみようか。メイド長に任せる」
「そういうことでしたら……。では、ポテチーナ(ベルティーナ)さまに質問。ヒロシさまの苗字は?」
「氷川(ひかわ)?」
「ちげぇよ!」
メイド長のハリセンが、ベルティーナの後頭部に炸裂。
「はい。不合格。次のメイド候補者がくる。退席してもらおう」
「ということです。チップティーナさま。ちょっとはずしていただけますか?」
「アゴの関節をかしら?」
ベルティーナが、うれしそうに自身のアゴに指をあてる。
「ヒロシさま。殴っていいですか?」
「俺を?」
「オレオって、お菓子じゃねぇか! 殴りたいのは、なぜだかビンボーくさい王女です!」
「俺に考えがある……」
そう言って、ヒロシはベルティーナの顔をクイっと上げた。
美顔ローラーを王女の顔でコロコロしながら、ヒロシが囁いた。
「ドピン子。今日はツインテールか……うん、可愛いな……」
「ぎゃおす!」
赤らめた顔を手で覆い隠したベルティーナが、ヒザから崩れ落ちる。
悶絶しながら床にぶっ倒れた。
褒められるとベルティーナが気絶することに気付いたヒロシは、実行に移したのだ。
「内股でモジモジすんな!」
メイド長が、要らない解説を挟んでくる。
「ベルティーナさまに乙女な一面があったなんて驚きです……」
王女の額にあるホクロを連打するメイド長は、どこか楽しそう。
「チップスター王女を裏庭の木に掛けといて」
「ラジャーですっ!」
メイド長が、庭の大木めがけてダッシュしていった__。
窓を望めば、枝に干されたベルティーナ。
顔を下げれば、メイド候補者の書類。
「なんか面倒になってきた……この子でいいか……」
こうして、メイド二十号の採用が決まった。