泣いてもどうなる訳でもないのにどうして涙って出るんだろう。悲しい時と痛い時の涙の出所って一緒なのかな?あぁそうか心が痛いもんね…
明け方まで玄関ホールで毛布に包まって開かない玄関扉を見続けた。蓮のお膝を借りて涙を流し続け、優しく頭に添えられた大きな手は温かくて居心地がいい…その手に思わず甘えてしまいたい自分がいる。きっとこういう俺を嫌いになったのだろう。
わざとらしく伸びて来た亮平の手は、今思えば震えていたように思う。その時は気付かずに愛しき人の撫でる親指の感触に惚の字になっていた自分はどんなに滑稽だったろうか。
翔太💙『帰るね』
蓮 🖤『何処に?』
翔太💙『あぁ…涼太の家?いやホテル?まぁどこでもいいだろ』
蓮 🖤『阿部ちゃん家行こう?きっと今頃後悔してるよ?』
誰も選ばない選択肢があっても良いじゃない?誰かに甘えた結果がこれなんだから…一人にはできないと言う蓮に〝ごめんね約束はちゃんと守るから…でも一緒に住む約束はしていないもんね?〟強い力で腕を引かれると蓮の胸の中にすっぽりと収まった。抵抗する俺を半ば羽交い締めするように抱き付いた蓮は〝せめて今日はここに留まって心配だから〟と言って離してくれなかった。
心配させちゃう俺ってなんだろう?一人で生きていけない程に弱ってなんか無い。大人だもんみんな一人で生きてるじゃないか。俺だって一人で生きていけるし、蓮と別れてからずっと一人でやってこれてたでしょ?
結局一人になる事は叶わずにまた誰かの…蓮の温もりに甘えてベットに二人横たわって時折イヤらしく撫でる蓮の手に嫌悪感を抱きながら、足でコツンと弱々しく〝やめて〟 の合図を送った。〝俺のものになるんでしょ?〟今それは言わないでよと必死に腕を伸ばして抵抗した。
蓮 🖤『観念しなよ?翔太捨てられたんだよ?それに阿部ちゃんに頼まれたしね翔太を幸せにって』
翔太💙『勝手に俺の幸せ決めるなよ…俺のいないとこで』
蓮 🖤『阿部ちゃんの居ないとこで了解も無しに、俺との約束勝手にした人が言えんのソレ?』
翔太💙『お前見た目によらず酷い事言うね…お願いやめてったら…んんんっ!』
身体を重ねたら忘れられるよ…唇に触れればドキドキするでしょ?伝わる指の感触は?翔太気持ちイイ事好きでしょ?すぐに忘れるよ、君から離れて行った人の事なんて…
だって俺だけだよ君から離れていかないのはたったひとり俺だけがずっと君の側にいる。
足りなかったそれだけの事だよ?俺より翔太を愛す覚悟が足りなかった…タダソレダケノコト
言葉の暴力って知ってる蓮?
散々酷い言葉を浴びせられた。人が弱ってる時に本当の事って言っちゃダメなんだよ…堪えるんだよ?嘘偽りのない本当の事を一言一句浴びせ聞かせるように愛撫しながら囁かれた。顔の横で縛り付けられた手のひらの傷跡をわざとらしく甚振って痛みに顔を歪ませると、傷口からまた血が滲んだ。
蓮 🖤『いつだって愛されたい人には愛されないんだね翔太は…良いんだよ身体の感じるままに生きなよ?目一杯愛してくれる人の元で愛に溺れな』
諦めていた俺への執着心は、亮平からのお墨付きによって復活し勢い付いたのか、水を得た魚のように生き生きと心も身体も蓮に甚振られ崩壊していく。
〝いつか俺に溺れる日がまた来る〟都合の良い愛を押し付けて俺を拘束する。一度手放した俺への愛が再び蓮の手中に戻ってくる。〝俺を幸せにする〟という大義名分を得た蓮はもう迷う事はなかった。
俺の幸せを願う男が二人、選んだ選択肢が同じなのだから…蓮なら幸せにできると
蓮 side
この手を掴んで離さずにいることの方が茨の道だろう。阿部ちゃんを愛す翔太をここに捕らえて置く事は俺にとっても翔太にとっても残酷な事だ。
千載一遇のチャンス?まさか…崩壊への一歩でしかないだろう。分かっているのにこの手を離せないでいるのは…悪戯に酷い言葉で翔太を囲うのは?僅かな期待を捨てきれずにまた翔太を傷付ける俺は拗らせてるという言葉では片付かないほどに狂っている。
本能のままに従おうと決めた。神様がもう少しだけ翔太を愛す時間をくれたのだから…いつか終わりが来るのならばその時まで全身で愛そうと。阿部ちゃんから捨てられた翔太の、隣にいるのは俺で、託された幸せを二人で叶えたい。
蓮 🖤『ごめんね今日だけは俺の愛したいように愛させて』
静かに涙を流す翔太は不謹慎にも美しく、与えられる快楽に下唇を噛んで耐えている。時折、我に返ったように抵抗した翔太を後ろから抱き竦めると肩を震わせ声を荒げた。誰かの温もりに甘えたい救われたい気持ちと、一人で生きていきたいと強がる気持ちが交錯する翔太は、ベットの上でシーツを握り締めて俺の熱塊と繋がると小さな声で〝許して…〟と囁いた。誰に宛てられた言葉なのか分からずに抽挿を繰り返すと、ポタポタと堰を切ったように溢れ出た涙はシーツを濡らし快楽から逃れようと手を彷徨わせ俺から離れようとした。腰を掴んで最奥を目指すと〝助けて〟〝亮平許して〟と大きな声で泣いた。
胸を掴んで身体を起こすと下から突き上げ、下に垂れ下がった花茎を扱き刺激を与えると彼の意に反して敏感に反応した翔太の男根は剛直で、ある意味翔太らしい。
蓮 🖤『ふふっ何だかんだで感じちゃうね?翔太可愛いよ』
〝違う…〟なんて言ったって説得力ないんだよ。先端から溢れ出る艶やかな愛液に塗れたソコを掌で擦ればギュッと後孔が締まり右手で俺の右頬を撫でると胸を前へ突き出し快楽に身を任せた翔太は、お尻を突き出しもっと奥を目指してイヤらしく俺の腰に押し込んだ。応じるように律動を繰り返し中に放った白濁が太腿を伝って流れるとそのまま二人ベットに果てた。
翔太💙『震えてたんだよ…亮平の手が。俺の頰を躊躇いがちに…愛おしそうに親指で撫でた。強い意志を感じた』
蓮 🖤『うん』
翔太💙『捨てられたの?嫌われた?何があっても亮平だけはって…俺ってバカだねどうしようもない』
蓮 🖤『どうしようもない者同士愛し合えばイイ…きっと笑い話になるから…おいで』
翔太が俺に涙を見せたのはそれが最後だった。俺の胸にしがみ付いてスヤスヤと眠った翔太のおでこにキスをすると〝許して……りょうへいさん〟と寝言を言った。それを最後に俺の前で二度とその名前を呼ぶ事は無かった。
翔太💙『蓮早く!ペンギンのお散歩始まっちゃうよ!』
蓮 🖤『はしゃぎ過ぎなのよ//ほら危ない!若くないんだから転んだら怪我するよ?』
〝若いわ💢〟ふふっ…肌寒くなってきた12月初旬漸く元気になった翔太に、連れ出されて訪れたのは翔太の地元の小さな動物園だった。なんでも赤ちゃんペンギンのお散歩が見れるのだとか。まだ産毛が残る赤ちゃんペンギンはお母さんを見様見真似て頑張って生きようとする姿が愛おしく、空元気に振る舞う翔太と重なって見えた。
蓮 🖤『ふふっ翔太にそっくりだった』
翔太💙『どこがぁ?』
帰りに動物園の駐車場で開催されていたクリスマスマーケットに寄った。購入した甘々なホットチョコレートを飲みながら小首を傾げた翔太は唇の端にチョコを付けたまま間抜けな顔をして寒さに肩を窄めながら鼻を啜った。持ってきた阿部ちゃんとお揃いでプレゼントしたマフラーを翔太の首に巻こうとすると〝やめろ〟と低い声で言うとバツが悪そうに〝ごめん…そんなに寒くない〟なんて言って、手を握るとキンキンに冷えてるくせに…無理やり首に巻き付けた。
蓮 🖤『風除けだよ…似合ってる』
翔太💙『ごめん…あったかいね』
時々胸がチクリと痛む。翔太はチクリどころじゃないのも分かってる。あれ以来阿部ちゃんは佐久間くんとよりを戻したのか?…二人で手を繋いで歩いているのを先日見掛けた。もちろん翔太には言っていない。舘さんが心配してうちを訪ねてきた。週一で訪ねてきては翔太を連れ出す。毎回泣き腫らした顔をして帰ってくる……本人は隠し通せているつもりらしい。幼馴染の舘さんにだけは涙を見られても平気らしい。
蓮 🖤『ねぇチョコ付いてるよ?……翔太?』
翔太の視線の先を追うと、見覚えのあるピンク頭が明らかに異常なまでのテンションの高い阿部ちゃんに手を引っ張られながら動物園の方に歩いていく姿があった。あぁやっぱり…遅かれ早かれ分かった事だろ…
思わず腰を上げた翔太は一瞬俺の方を見やって、怯んでいる。ふと我に返り俺が居る事を認識すると阿部ちゃんを追いかけるのを躊躇っているようだった。翔太は繰り出そうと動いた右足を、右手の握り拳で殴った。ほらね君は優しすぎるんだよ?自由を失っていたんだね…
君らしく自由に生きてよ。そんな君が好きなんだ。
蓮 🖤『行け翔太!振り返らずに前を見な!撃沈したらまた抱いてあげるから』
翔太💙『抱きしめるだけでいいよ///変態…』
ふぅーと深く息を吐くとゆっくりと、でも確実に息を目一杯吸い込むと〝よしっ〟と声を発して翔太は二人に向かって足を繰り出すと全速力で走った。翔太の吐く白い息が見えなくなるまで見送ると、手に持っていた温かいコーヒーに口を付けた。
甘々なホットチョコレートを飲んでいた翔太は正気じゃ無かった。本能のままに従え…無理してこんな甘いものなんか飲んでるから頭がおかしくなるだよ。
蓮 🖤『頑張れ翔太』
〝運命に抗え〟自分自身の可能性を信じているからこその本能の行動だ。どんな結末だって、どんな選択肢だって翔太の思い通りなるんだよ?少しの勇気と人を愛す気持ちさえあればどんなに時間がかかってもきっと阿部ちゃんは分かってくれるよ。 こんな愛に狂った男に翻弄されて生きてちゃダメなんだ。
不思議と憑き物が取れたようにスッとこの状況を受け入れている自分がいて驚いている。やっぱり俺は阿部ちゃんを大好きな翔太が好きなんだとつくづく思い知らせる。
沢山着込んだ翔太はシャカシャカとダウンジャケットを鳴らしながらマフラーをひらひらさせて佐久間くんを引っ張る阿部ちゃんに真正面から激突すると、大の大人が3人同時に転ぶ姿を遠目に見て思わず笑いながら写真に収めた。
蓮 🖤『フハッ最高翔太////』
コメント
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許して、亮平さんが切ない。本当に健気で可愛い。本当に好き。

これは、空白の💚サイドも気になる…。もういっそ🖤🩷溢れてるし、一緒になっちゃえよ、風呂友!!!