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#ファンタジー
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「ねぇ、あの子と何してたの?」
帰り道、いきなり腕を掴まれた。
「は?別に、ただ話してただけだって」
振りほどこうとするけど、彼女の力は意外と強い。
「嘘」
即答だった。
「笑ってたじゃん。あんな顔、私の前でしないくせに」
胸の奥がざわつく。
「……めんどくせぇな」
つい、口に出た。
その瞬間――
彼女の表情が、すっと消えた。
「めんどくさいんだ」
小さく、静かな声。
「私のこと」
「そういう意味じゃねぇよ」
「じゃあどういう意味?」
詰められる。
逃げ場がない。
「……」
黙るしかなかった。
それが答えみたいになってしまう。
「ねぇ、知ってる?」
彼女は急に笑った。
「私さ、あんたのスマホ見たことあるよ」
「は?」
一瞬、頭が真っ白になる。
「ロック?意味ないよ」
くすっと笑う。
「誕生日、全部試したから」
背筋が冷える。
「誰と何話してるか、全部知ってる」
「……お前」
「大丈夫だよ」
遮るように言う。
「怒ってないから」
その“優しさ”が、いちばん怖かった。
それから、何もかもが変わった。
誰と話しても、後で聞かれる。
どこに行っても、把握されてる。
少しでも返事が遅れると――
「なんで無視したの?」
夜中でも、何十件も通知が来る。
最初は、愛されてるって思ってた。
でも――
「ねぇ、私のこと好きだよね?」
毎日、何回も聞かれる。
そのたびに「好き」って答えないと、不機嫌になる。
少しでも迷うと――
「誰と比べてるの?」
責められる。
ある日、ついに限界が来た。
「もう、無理だ」
はっきり言った。
「別れよう」
沈黙。
彼女は、何も言わなかった。
ただ――
ゆっくり、笑った。
「そっか」
その笑顔に、嫌な予感しかしない。
「でもね」
一歩、近づく。
「もう遅いよ?」
「……は?」
スマホが震えた。
見ると――
自分のアカウントから、勝手にメッセージが送られている。
クラスのグループ、友達、知らない人まで。
「なにこれ…」
「バックアップ、取っといたから」
彼女は楽しそうに言う。
「全部、バラされたら困るでしょ?」
心臓がドクンと鳴る。
「ふざけんなよ…!」
「ふざけてないよ」
一気に距離を詰められる。
逃げられない。
「私のこと、捨てようとした罰」
耳元で、囁かれる。
「一人じゃ生きられなくしてあげる」
その日から――
本当に、何もかも壊れた。
友達は離れていく。
噂が広がる。
どこにいても視線を感じる。
そして――
彼女だけが、隣にいる。
「ね?私しかいないでしょ?」
嬉しそうに笑う。
逃げ場はない。
「……なんでここまで」
絞り出すように聞く。
彼女は少し考えてから、こう言った。
「愛してるからだよ?」
迷いのない答え。
「愛してるって、言ったじゃん」
あの日、軽く言った言葉。
冗談みたいに使った言葉。
「だから、責任取ってよ」
その瞳は、もう普通じゃなかった。
夜。
一人になれない部屋の中で、思う。
“好き”と“愛してる”の違いなんて、
ちゃんと考えたことなかった。
でも今はわかる。
これは――
愛なんかじゃない。
それでも。
「逃げたら、全部終わるよ?」
背後から、声がする。
振り向くと、彼女がいる。
いつの間にか、合鍵まで作られていた。
もう遅い。
あの日、「好き」なんて言わなきゃよかった。
「愛してる」なんて、
絶対に言うべきじゃなかった。
コメント
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いつもは付き合う前の物語を書いているのに対して、今回は付き合ってからの束縛について書かれていました。また、他と違っていいなと思いました! 最後は、結局どうなったんだろうと、続きが気になります! 面白かったです!又々、神作でした!