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最近、調査兵団の若い兵士たちの間には一つの謎があった。
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それは巨人でも壁外調査でもない。
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もっと身近な問題だった。
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「なんでなんだ?」
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食堂の片隅。
数人の兵士が真剣な顔で議論していた。
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「何がだ」
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「分隊長だよ」
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全員が頷く。
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ああ、その話か。
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最近やたらと話題になっている。
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「告白されてるよな?」
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「されてる」
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「めちゃくちゃされてる」
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「断ってる」
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「全部断ってる」
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そこまでは共通認識だった。
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兵団内だけではない。
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商人。
工房職人。
補給担当者。
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時には駐屯兵団の兵士まで。
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〇〇への好意を隠さない者は多い。
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それなのに。
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誰とも付き合わない。
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「まだ前の恋人引きずってる説」
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「いや別れて一年近いぞ」
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「仕事優先説」
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「ありそう」
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「理想高い説」
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「それはなさそう」
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全員が納得した。
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〇〇は誰に対しても優しい。
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身分や立場で人を判断しない。
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理想が高いというより。
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そもそも恋愛への興味が薄そうだった。
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すると。
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一人の兵士がぽつりと言った。
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「実は好きな奴いるんじゃね?」
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沈黙。
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「……誰だよ」
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「分からん」
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「いたら気付くだろ」
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「そうか?」
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その時だった。
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少し年上の兵士が口を開いた。
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#夢主
そら
255
みゅう

68
「俺、一個気になることある」
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全員の視線が向く。
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「リヴァイ兵士長」
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空気が止まった。
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「は?」
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「兵士長?」
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「リヴァイ兵士長?」
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「そう」
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全員が困惑する。
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なぜそこでリヴァイが出てくる。
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するとその兵士は真面目な顔で言った。
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「兵士長さ」
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「分隊長の前だとちょっと違う」
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沈黙。
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そして。
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「ないないないない」
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全員が否定した。
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即座に。
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「兵士長だぞ?」
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「人類最強だぞ?」
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「恋愛するのか?」
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「というか分隊長相手に?」
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だが兵士は首を振る。
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「いや、本当に」
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「見たことないか?」
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「分隊長が怪我した時」
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「分隊長が笑った時」
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「分隊長が無茶した時」
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「反応違う」
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一同が少し黙る。
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言われてみれば。
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思い当たる節がないこともない。
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「いやでも……」
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「気のせいじゃね?」
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結局結論は出なかった。
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なにせ証拠がない。
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そして本人たちは完璧に隠している。
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少なくとも。
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そう思われていた。
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一方その頃。
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団長室。
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エルヴィンは机の上の書類を眺めていた。
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向かいには〇〇。
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分隊長としての業務報告中だった。
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話が終わると。
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エルヴィンは新しい書類を差し出した。
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「新しい任務だ」
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「壁外調査ですか?」
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「いや」
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エルヴィンは首を振る。
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「対人任務だ」
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〇〇が目を瞬く。
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珍しい。
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するとエルヴィンは腕を組んだ。
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「調査兵団の最大の問題は何だと思う?」
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「犠牲者の多さ?」
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「それもある」
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「予算不足?」
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「正解だ」
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エルヴィンは頷いた。
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調査兵団は常に金が足りない。
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馬。
装備。
補給。
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何もかも不足している。
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それでも壁外へ出続けなければならない。
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「世間の評価も良くない」
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「人が死ぬだけの組織」
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「税金の無駄遣い」
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「そう考える者もいる」
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〇〇は静かに聞いていた。
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それは事実だった。
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だからエルヴィンは続ける。
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「君に外部との調整役を任せたい」
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「私に?」
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「そうだ」
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意外だった。
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政治交渉などしたことがない。
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しかしエルヴィンは迷いなく言う。
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「君は人に好かれる」
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〇〇が困った顔になる。
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「そんなこと」
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「ある」
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即答だった。
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「兵士からも」
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「商人からも」
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「市民からも」
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「信頼を得られる人間だ」
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エルヴィンの声は真剣だった。
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「それは才能だ」
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「戦闘能力と同じくらい価値がある」
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〇〇は少し驚く。
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そう言われたことはなかった。
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するとエルヴィンは微かに笑った。
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「君が調査兵団の顔になれば」
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「支援者は増える」
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「予算も物資も増える可能性がある」
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「そして兵士たちが生き残る確率も上がる」
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それを聞いて。
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〇〇は背筋を伸ばした。
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「分かりました」
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迷いはなかった。
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仲間のためになるなら。
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何でもやる。
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エルヴィンは満足そうに頷く。
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その時。
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扉が開いた。
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リヴァイだった。
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「エルヴィン」
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報告書を持って入ってくる。
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そして。
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机の前にいる〇〇を見る。
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一瞬だけ。
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本当に一瞬だけ。
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表情が柔らかくなる。
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すぐ元に戻る。
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だが。
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エルヴィンは見逃さなかった。
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〇〇も気付いていない。
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本人も恐らく無意識だ。
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エルヴィンは内心で苦笑する。
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調査兵団の未来を考える団長としては。
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〇〇の対人能力は極めて有用だ。
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しかし。
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友人として見るなら。
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その任務は少々複雑だろう。
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なにせ。
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これから〇〇はさらに多くの人間と関わることになる。
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商人。
貴族。
支援者。
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そして当然。
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彼女に好意を抱く男も増える。
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エルヴィンは報告書を受け取りながら思った。
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兵士長殿の忍耐力が試されるな、と。
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そしてその日の夜。
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その話を聞いたハンジは机を叩いて大笑いした。
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「終わったねリヴァイ!」
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「何がだ」
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「〇〇の人気がさらに上がる!」
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「……」
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「商人!貴族!支援者!」
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「……」
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「告白も増える!」
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「……」
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「嫉妬する?」
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静寂。
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そして。
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「おいクソメガネ」
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低い声。
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「ん?」
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「仕事しろ」
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だが。
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耳が少し赤かったことを。
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ハンジは見逃さなかった。