テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
羽海汐遠
14,668
凛
24
月城 蓮桜音
281
花月夜れん
2,321
私の疑問はいつも通り届く事無く、直情的が売りだとでも思っているレイブは出口に向かう足を止めて、勝手にヘルムを外してグフトマに対して叫ぶのであった。
「太師匠、これをっ!」
「え、あ? お、おお?」
先程渡したばかりだと言うのに、有無を言わさず投げ返されてきた黒いヘルム。
条件反射的に受け取ったそれを流れのままに頭に被せようと試みるグフトマ。
ゴッ! ゴリゴリゴリ!
当然の如く突き出した角に阻まれて嫌な音を響かせるヘルム、そして急速に狼狽を増すグフトマ。
阻止された事が冷静な判断を誤らせたのだろう、被れない、ならばどうすれば被れるのか? そんなパーシステンスに囚われた彼が選んだ愚行とは……
角の消去、つまり鋼体術の解除であった。
「良しっ! これで被る事が出来、うわあっ!」
鋼体術が解かれ金属感が失われた瞬間を逃さずに襲い掛かるゴブリンの群れ。
手にしたヘルムを被る間も得られずに慌てて再びの鋼体術を始めるグフトマ。
手足の一部に噛み付いたままの数頭は差し込んだ牙が抜けずにバタバタと暴れ続けている。
この隙に出口まで辿り着いたレイブはホブゴブリン達の背に守られながら、親愛なる太師匠にアドヴァイスを送ったのである。
「太師匠っ! 早く被らないとっ!」
「お? おおっ、そ、そうか?」
「急いでっ!」
「わ、判ったっ!」
レイブのアドヴァイスに従って、グフトマは再度、前回よりも数段力を込めてヘルムを自分の頭に被せようと試みたのだが……
ガキッ! パカッ カランカラン……
「あ、あう……」
勢い良く十二本の角に衝突した黒いヘルム、実は漆塗りのお椀は真っ二つに割れて地面を転がるのであった。
勘の良い、若しくは記憶力に長けたオーディエンスの方々ならばもう既にお気付きだろう。
この黒いヘルムの正体は『一寸法師の針』のお椀であり、一時は千里の天神さんで猫の餌椀として活躍した、れっきとしたアーティファクトなのである。
かつて魔神バアルとの対決に於いて、聖魔騎士善悪のおつむを守った逸品が、今召されてしまったのである。
恐らく、食欲に支配されたゴブリンの世話をする為に、敵意を持った相手に針で刺された痛みを与える事で牽制できるこのアイテムが使われていたのだろう。
コメント
1件
あおいです🌷 第1200話、拝読しました! もうね、太師匠の「被れない、ならば角を消そう」という発想に笑っちゃいました。パーシステンスってこのことか…って。レイブのアドバイスが完全に悪手で、お椀が割れるまでの流れが絶妙すぎます。最後に「一寸法師の針」のお椀と判明するところで、過去の話が生きてくるのが好きです。1200話の積み重ねを感じる回でした✨