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放課後、夕焼けと秘密の約束

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放課後、夕焼けと秘密の約束

18 - 第18話「『ただいま』と言える場所へ(後編)」

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2025年06月15日

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最初の朝、台所でコーヒーを淹れる音に目が覚める。

「あれ? 起こしちゃった?」

「……ううん。夢じゃなかったんだな、って思ってただけ」

葵のエプロン姿に、胸がぽかぽかした。

何気ない一瞬が、すでに“幸せ”だと分かる。

洗濯物をたたみながら話すドラマの感想。

お互いの職場であった小さな出来事の報告。

眠る前に読む、隣で広げる本の話。

それら全部が、“ふたりだけの生活”を作っていった。

***

でも、楽しいだけじゃない。

仕事が忙しい日は、紗季が帰るのは夜10時を過ぎることもある。

疲れて帰ったある晩、葵がふとこぼした。

「最近、すれ違ってばっかりだね。なんか……顔、ちゃんと見てない気がする」

その声に、紗季は胸がちくりと痛んだ。

「ごめんね。毎日、葵と暮らすのが夢だったのに……現実はこうだね」

「夢じゃないよ。でも、現実だからこそ、大事にしたいって思っちゃうの」

「……うん。ちゃんと、帰ってくるから。

“おかえり”って言ってくれる人がいる場所に」

紗季は葵の手を握った。

部屋の灯りはあたたかく、

重なった手のぬくもりが、言葉よりも多くを伝えてくれていた。

***

ある日曜日、ふたりはインテリア店で、小さな木の表札を買った。

玄関の横に並んで書かれたふたりの名前。

まるで家族みたいで、恥ずかしくて、少し泣きたくなる。

「これが私たちの家だね」

「うん。“ただいま”と“おかえり”のある場所」

どこにも派手なドラマはない。

だけど、ふたりの時間は確かに、愛おしさで満ちていた。

放課後、夕焼けと秘密の約束

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