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#ファンタジー
#ざまあ
設楽理沙
日下部家を出て、依子さんが車を停めている駐車場へと足を進めていく。その途中で、歩くんが立ち止り、依子さんに頭を下げた。
「依子さん、色々と迷惑かけてしまってすみませんでした」
「頭あげて。気にしなくていいのよ」
「でも……一時的とはいえ俺らのこと引き取るなんて、九條の人達に知られたらなんて言われるか」
「心配する必要はないわ」
「けど……」
「子どもを守るのは大人の役目なの。だから、あなた達はもっと甘えることを覚えなさい」
依子さんの言葉は包みこむように優しい。
「うちの子はちょっと騒がしいけど、仲良くしてあげてね」
……ちょっとどころではないと思うけれど、武蔵先輩だって歩くん達のこと心配していただろうし、きっと喜ぶんじゃないかな。
「それと、荷物は持っていくから彼女のこと送ってあげて?」
「か、彼女!?」
真っ赤な顔で歩くんが振り返って私と目が合うと、すぐに視線を逸らされた。
「あら? 違うの? ごめんなさい。泉くんの彼女なのかしら?」
「ち、」
「違います! けど、俺が送ります!……泉、これ頼む」
私の言葉を遮り、歩くんが荷物を泉くんに渡すと私の腕を掴んだ。
「ましろ、行こ!」
「え!あ、あのっ!」
ちらりと依子さんに視線を向けると、ばちっと目が合った。
「……あなたが、ましろさんだったのね」
そう呟くと依子さん笑顔で私に手を振ってくれた。
「水沢さん」
私の隣にいた泉くんが私にだけ聞こえる声で囁く。
「やっぱり君でよかった」
「え?」
驚いて泉くんの顔を見ると、意味深に微笑んでいた。その理由を聞く暇もなく、歩くんが私の腕を引いて歩き出す。
「ましろさん! 今日はありがとうございました!」
みちよちゃんが大きな声で言った。
「またね! みちよちゃん!」
私も大きな声で返す。また近いうちにみちよちゃんとも会えるといいな。
「お兄ちゃん! 頑張ってね!」
「う、うっさい……っ」
何のことだかわからないまま、私は歩くんに手を引かれて歩いた。
隣を歩いている彼の横顔をじっと見つめていた。日がだんだんと落ちてきて歩くんの薄茶色の髪が琥珀色に染まっている。
明日からは歩くんが学校にくるんだ。いつもみたいに歩くんと話ができるんだ。
「あんまし、見るなよ……なんか照れる」
「ごめんなさい! 歩くんがまた学校に来てくれるって思うと嬉しくて……つい」
「かっ、かわ……こと言うな」
「え?」
途切れてよく聞こえなかったので聞き返すと、歩くんは何も答えてくれなかった。黙ったまま、腕を掴んでいた手が下に降りてくる。
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