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ピエロのメイク屋さん
クラスティーがメイク屋を始めることになったのは、思いもよらないきっかけだった。彼は最近、ショーの視聴率が低下していることに悩んでおり、新たな収入源を見つけなければならないと焦っていた。そんな時、街中でふと「メイクアップスタジオ開業」の看板を見かけた。妙にキラキラした看板に引き寄せられたクラスティーは、無意識のうちにそのスタジオの前に立っていた。
「これだ!俺もメイク屋さんをやれば、新しいファンが増えるに違いない!」
そうして、クラスティーは自分の番組のスタジオの隣に「クラスティーのメイクアップ・エクスプレス」を開業することに決めた。ピエロの経験がある彼にとって、メイクは慣れたものだと自信満々に思い込んでいたのだ。
しかし、彼の娘であるマナはその話を聞いて、頭を抱えた。
「お父さんがメイク屋なんて…嫌な予感しかしないんだけど」
マナは父親が昔から常識外れのアイディアを次々と実行することを知っていた。今度のメイク屋も一筋縄ではいかないだろうと不安を感じていたが、何を言っても聞かないクラスティーは開店の準備を始めた。
開店初日
クラスティーのメイク屋は、翌日から早速オープンした。彼は目立つようにピエロの衣装を身にまとい、カラフルな看板を掲げて呼び込みを始めた。町の人々は好奇心から店を覗きに来たが、メイクのセンスには誰もが驚かされるばかりだった。
クラスティーのメイク術は派手で独創的だが、日常使いには向かないピエロ風のメイクばかり。最初に来店した主婦は目元に奇妙なカラフルなアイシャドウを施され、鏡を見るなり絶句した。
「うわっ!なんでこんなに派手なの?私はただ少しだけ目元を引き立てたかっただけなのに!」
クラスティーは得意げに笑い、「芸術的なインスピレーションだ!」と胸を張って答えたが、主婦は怒りながら店を後にした。
その様子を見ていたマナは呆れてため息をついた。
「お父さん、もう少し人の話を聞いてあげてよ。お客さんは普段使いのメイクがしたいだけなんだから」
クラスティーはそれでもピエロらしい派手なメイクが自分の持ち味だと思い込み、アドバイスを聞く気はなかった。
次々と現れる難題
次に店にやってきたのは、クラスティーの古い友人であるランパス牧師だった。彼は日曜日の礼拝のために清潔感のあるメイクを希望していた。しかし、クラスティーが施したメイクは青と緑の派手なフェイスペイントで、牧師の顔はまるでサーカスの一員のようになってしまった。
「クラスティー、これはちょっと…私が求めていたのはもっと控えめなものだよ」と困惑するランパス牧師。
クラスティーは得意満面で、「信仰心を強調するにはこれぐらいがいいんだ!」と自信満々に応えたが、ランパス牧師もそそくさと店を出て行った。
ある日、特別な依頼
そんなクラスティーの店に、ある日特別な依頼が入る。地元の学校の演劇部が、来月の発表会に向けてメイクを頼みたいと言ってきたのだ。舞台メイクならば自分の得意分野だと考えたクラスティーは、即座に引き受けた。しかも、今回は娘のマナも手伝ってくれることになり、張り切って準備を始めた。
発表会当日、演劇部の子どもたちは次々とクラスティーとマナの手によって華やかなメイクを施された。しかし、クラスティーの独特なメイクセンスは舞台の雰囲気に不釣り合いで、演劇部の顧問は愕然とした。特にクラスティーが施した「燃えるような眉毛メイク」は演技にまったく関係ないもので、子どもたちは鏡を見て驚きの声を上げていた。
マナがすかさず対応し、子どもたちには自然な舞台メイクを施し直したことで、発表会は何とか成功したが、クラスティーはすっかり気落ちしていた。
父と娘の絆
その夜、マナは落ち込むクラスティーの隣に座り、そっと肩を叩いた。
「お父さん、確かに派手すぎるかもしれないけど、私はお父さんのことが好きだよ。誰よりもユニークで、いつも自分らしくいるから」
クラスティーは少し照れくさそうに笑い、「ありがとう、マナ。お前がいてくれて本当に助かったよ」と答えた。そして二人は、これからも一緒にメイク屋を続けることを誓い合った。もちろん、もう少しお客さんの意見を聞くことも忘れずに。