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それから、金属で肉を切る音が続き。
階下の広大なサロンで、ザンッという一際鈍い音がしたと思ったら、盛大な悲鳴が放たれた。大階段全体の気温が急激に下がりはじめた。氷のような気温の中で、静かにサロンへと通じる扉が開くと。
「ヘレン。終わったよ」
そう言いながら、モートが何事もなかったかのように階下から上がってきたのだ。ヘレンは両目両耳で見え聞こえるものに、これ以上ない安堵感を覚えた。
「ああ、モート……」
「おお! モートくん。あれだけの悪霊を浴びても何も問題がないなんて、さすがですねえ」
オーゼムも関心しながら、手を叩いていたが。地面に散乱した大階段に飾られていた幾つもの古い絵画を見ては嘆いた。そして、その一枚だけをそっと壁に掛け元通りにすると、こちらに向かってニッコリと微笑んだ。
「おや? オーゼムもいたんだね」
「それにしても……貴重な絵画も無残な姿になってしまいましたね。そして、六人の少女が死亡してしまったのは、こちらの勝率が大きく下がったようなものです。本当に残念なことですね」
「まあ、どうしましょう?! オーゼムさん?」
「大丈夫ですよ。まだ今のところは……。ところで、モートくん。六人の少女が死亡したことで、これからここホワイトシティで大変なことが起きる何らかの前兆が現れるはずです。このままでは、住民も犠牲にしてしまうような。あなたの大掛かりな狩りの時間がやってきてしまうでしょう」
「……ああ」
「ヘレン。マリンシス・ラオデキアという少女が玄関にいるんだ。迎えにいってくれないかい? もう、ここには黒い魂は見えないないから危険なものはないと思うよ」
「ええ。そうして。あ、モート。違うわ。まだここは危険なのよ」
ヘレンはオーゼム。そしてモートに、変死体になったはずのサン・ジルドレが生きていてリッチーになったことと、今現在そのサン・ジルドレ自身がここノブレス・オブリージュ美術館を襲撃をしているはずだと震える声で話した。
ヘレンは一通り話し終えると、一際大きな落雷が落ちた。その大音響によって背筋が凍りつき。居ても立っても居られなくなって、窓から外館を見ると、ゾッとした。
外館は、猛威を振るう強風と激しい落雷が幾本も落ち、赤黒い雹が荒れ狂い始めていた。もはや、この現象であるゾンビアポカリプスもピーク時に到達したかのようだった。
ホワイトシティを埋め尽くすかのような、普段静かに生活をしていたはずだった住民たちの大勢の呻き声や、元は美しかった建造物や道路は、破壊の音や切ない悲鳴の音が鳴り響き。耳を覆いたくなるほどの惨状だった。
「ほうほう。そうですか。そうですか。これで、儀式によってリッチーになった者と、私とモート君が目撃したリッチーとで、合わせて二人になりますねえ。恐らく、邪魔が入る形なので、今回も私はまったく戦えませんので、これはモートくんの足止めと言ってもいいのでしょうがね」
「……ああ」
その時、ノブレス・オブリージュ美術館の館全体が激しく振動し、館内の美術品全てが床にぶちまかれそうな強い衝撃が走る。館内のどこかで大きな扉の壊れる音が盛大に聞こえ。遠くからマリンシス・ラオデキアと思われる声の悲鳴が響き渡った。
「正面玄関の方よ!!」
ヘレンはありったけの声を振り絞って叫ぶ。
「ヘレンさんの言った通りですね! さっそくきましたよ! 今度は相手が律儀にも玄関から訪問してきたといったところでしょう!」
オーゼムはオールバックを整えた。
「……」
モートは何も言わずに、正面玄関の方へと駆け出した。