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泣いた……?
妻のそんな呼吸を感じて、俺は面倒になり背を向けた。
これまで特に、風子へ不満があるわけではなかった。
特別気が利く女ではないが、夫である自分の言ったことに従順で、きちんとこなす。
自分が言ってやらないと何も出来そうにないが、良く言えばその通りにする風子は家庭に向いた女。
悪く言えば、自主性がないのはどこか頼りなげに見える。
それでも家事全般が得意な風子には、大きな魅力もないが大きな不満もない……子育て夫婦の関係はこんなものだろうと思っていた。
そして、何より可愛い千愛の存在が家庭の中心だ。
そんな日常生活の中で、先日風子から聞いた
【既婚者合コン】
というワードには、ちょっとした興味を持った。
ただのゴシップニュースなら興味も持たなかっただろう。
隣人、直美が参加していると聞いて実在するワードとして興味を持ったのだと思う。
浮気などするつもりもなく、ましてや愛人などもいらない。
千愛以外に無駄金を落とすつもりもない。
だが……興味本位で参加した既婚者合コンの場で、この場で終わらない関係を目的とした男女が複数いることを知る。
まさかそこまでは、自分には無関係だと思っていたが……風子と違って整えられた指先で触れられ、頬を寄せて話をされれば甘く香る女……それは月に一度の夫婦の営みで十分だと思っていた自分自身を大きく覆す甘美な刺激となり、女と関係をもってしまった。
そして…一度きりのはずが、他の男女も自分と同じだ、という安心感を得たいと思い、再び既婚者合コンへ足を運ぶ。
男女二人きりになりたい人ばかりでもなく、俺は男女二人ずつの4人になるテーブルを選ぶと、それまでその席では女性が、旦那の浮気相談をしていたようだ。
「それにしても、今日は綺麗な方とご一緒出来て良かった。結婚何年か聞いても?答えたくなければ答えなくて大丈夫」
「9年ですね。スギさんは?」
浮気相談をしていた女性に、慣れたように綺麗と言う、スギと名乗る男。
「7年半。ここの珈琲、美味しいよ?好き?」
運ばれた珈琲にミルクだけ入れたスギは、テーブルの全員が話せるように質問する。
「ここは初めてですが珈琲は好きです。家で何使って淹れます?」
俺も無難な質問で皆を見た。
「僕、かなりマシンを買い換えているんだけど、今はサイフォン」
「わ、お手入れ大変そう」
「そこが一番かぁ。ココさん、キレイ好きなタイプの理想的な奥さんなんじゃない?」
「…初めて言われたので……ちょっと分からない…けど…」
お世辞も、お世辞に聞こえないような空間で心から照れた様子のココさん。
こういう瞬間を求めて集まる既婚者たち……